鳴き竜のことを知ってから、学校でも鳴き竜のような音がする場所がないか、いろんなところで試してみたんだ。日光の鳴き竜ほどではないけど、壁が平行しているところで手をたたくと同じようにビーンって鳴るところがいくつかあったよ。
壁や天井などの空間のこと以外に、よく聴こえる条件として一つあげるとすれば、静かな場所かどうかということだね。鳴き竜は反射音が一定の間隔で長く続く現象だけど、他の騒音が少なくて静かな場所なら、減衰する反射音を音が消えるまで聴くことができるからね。
そうだね。 朝早い時間とかだと、昼間では聴こえなかった鳴き竜の場所が発見できるかもしれない
ね。 これまで何箇所か見つかったんだけど、場所によってビーンという粗い感じが違って聴こえたんだよ。
「 前に、連続的な音が 1秒間で何回変化するか(変調周波数)で変動感が大きくなったり、粗さが顕著になったりしたサンプル音を聴いただろう。
そうか、反射音の時間周期が場所によって違うから、聴いた感じも違うということ?
その通り。聴いた感覚を数値化できるといいと思わないかい?
それは、前に教えてくれたデシベルとか、そういう意味じゃなくて?
デシベル?そうdBはある基準との比で表現したレベルだね。音の大きさのように量的な数値はレベルで表せるけど、聴いた感じを数値化するのは大変難しいことなんだ。 だけど、一つの感覚量、例えば、音が揺らいでるような変動感や、今まで聴いてきたような粗さの感覚を数値化する方法があるんだ。
実は、この間の鳴き竜の音を、ある解析にかけてみたんだ。

この図を見てごらん。詳しい説明は省くけど、この図は、横軸が音の高さ(周波数)で、縦軸が変調周波数。色で変動の大きさを表しているんだ。特に変調周波数に注目すると、30 Hz がもっとも変動感が高いという結果を示してるんだよ。焼失前の昭和 40年に鳴き竜の現象を解明した論文に、「 1 秒に 29 回の反射音」という記述があったけど、まさに、この解析がそれを証明していることになるんだ。
音はレベルや周波数だけではなくて、こういう解析の方法があるんだね。
そうだね。お父さんもこの解析に興味があって、他の音も試してみたんだ。面白いところでは、おとは知らないだろうけど三味線の「さわり」。
さわり? 三味線のことはよくわからないけど、その 「さわり」 って何なの?
三味線は、3本の弦があるんだけど、最低音弦の1の糸だけ、上駒と呼ばれるギターでいうナットを通さずに、弦をわずかに棹に接触させて「ビーン」というノイズのような音を出させるものなんだ。三味線の特徴でもあって、この音は、三味線には欠かせない音なんだよ。