第4 回のコラムで「なぜトルクを計るのか」という記事を掲載しました。今回は自動車などの動力性能を比較する際の項目のひとつである馬力について、そもそも馬力とは何か?また、トルクとの関係性はどのようになっているのか、についてお話しさせていただきます。
トルクとは
以前のコラム内容を簡単におさらいします。
トルクとは、回転軸まわりに生じる「物体を回転させる力」のことです。例えば、トルクレンチを使用してボルトを締める時の力や、自動車の前進、後退をさせる為に必要なエンジンの駆動力がこれにあたります。
トルクの単位については、1993 年の新計量法施行以来、N・m(ニュートンメートル)が使われています。この単位を見ても分かるように、トルクは力(回転方向に作用する力)と、長さ(回転軸から作用点までの長さ)の積となるので、回転方向に作用する力が同じであれば、回転軸から作用点までの長さが長いほど大きなトルクが得られる、ということにもなります。自転車を例にあげると、ペダルと回転軸を接続するクランクの長さが長いほど、同じトルクを生むための力は少なくて済む、ということになります。
トルクとは物体を回転させる力であり、単位はN・m
馬力とは
馬力とは、その名の通り馬がどのくらいの仕事をするのか(1 頭の馬の荷物をけん引する力)
を表す単位になります。過去に蒸気機関車を発明したジェームズ・ワット氏が行った実験で、
175 ポンド(約80kg)の荷物を馬に引かせて1 分間で188 フィート(約57m)移動したと
きの馬のした仕事量を、単位時間に換算した量を「1 馬力」と定義されました。つまり馬力と
は、単位時間で、ある重さの物体をどれくらいの距離を移動することができるか、つまり仕事
率の単位ということになります。
また馬力は、表1 に示すように、自動車のエンジンの諸元表に記載されるなど、昔から慣用的
に用いられてきました。最近では、新計量法公布により、馬力(ps)の表記からW(ワット)に統一して表示されることになりました。
表1.エンジン諸元表のサンプル
馬力とW(ワット)の関係は以下のようになります。
1 馬力(ps)=735.5(W)=0.7355(kW)
「馬力」とは、出力(仕事率)に慣用的に使われていた単位の名前。現在はW(ワット)表示。
トルクと出力(kW, ps)の関係性
前述したように、トルクが「力」であるのに対して、出力は「仕事率」になります。トルクに回転速度を掛けわせたものが出力となり、以下の式で表されます。
出力(kW)=トルク(N・m)×回転速度(r/min)×2π÷60÷1,000 (式1)
自動車で例えると、「タイヤなどを回転させる力」がクルマのトルクであり、その大きさは「走りだそうとする力」あるいは「坂を上ろうとする力」に相当します。トルクを大きくすれば、発進時の動き出しが俊敏になり、また急な上り坂でもスムースに上れるようになります。すなわち、トルクは「瞬発力・回転力」を表す指標とも言えます。自動車のエンジンが発生させるトルクを自転車のペダルを踏みこむ力に置き換えて考えると、踏み込む力(トルク)が大きいほど、自転車はより大きな加速を得ることができますが、このように考えるとイメージしやすいかもしれません。
一方、出力とは一定の時間内に決められた荷物(重さ等)をどこまで運べるかを表した指標で
す。トルクと似ているようですが両者は異なります。トルクには単位時間という概念がありませんが、出力は仕事率を表すので、単位時間という考え方が必要になります。
自動車で例えると、「タイヤなどを回転させる力」=トルク、とエンジンの回転速度を掛け合わせた仕事量がクルマの出力ということになります。
トルクの説明と同様に、自転車を漕ぐ力に置き換えて考えてみると、ペダルを踏み込む力が弱
くてもギヤをダウン(軽く)させてタイヤの回転数を増やせば、強く踏んだ時と同等の出力(パワー)を得ることができます。こう考えると、比較的容易にイメージできるのではないでしょうか。
今回は、自動車のエンジン諸元などでよく表記される、トルクや馬力、出力についてお話しました。この記事で馬力とは何か、またトルクと出力の関係について少しでもイメージ出来るようになっていただければ幸いです。
弊社で取り扱っているトルク関連の計測器は、以下の通りです。
ご興味がありましたらご覧ください。
(2022年6月15日発行メールマガジンより抜粋)