前回dB(デシベル)およびB(ベル)は対数(常用対数)で表記する電力の比較表現量であることを説明してきました。今回は引き続きSI接頭辞d(デシ)の必要性、dBの電力利得、電圧利得について説明を続けたいと思います。
SI接頭辞d(デシ)の必要性
前回のコラム「dBとは?その1」で説明したように、B(ベル)は基準となる物理量に対する計測物理量の比を常用対数で表したものです。例えば、計測された値が基準値の10倍であれば101なので1B(1ベル)、100倍であれば102なので2B(2ベル)、1/10倍であれば10-1なので-1B(-1ベル)という感じです。ところが、実際の計測値はこのような区切りの良い数字になるわけではなく、基準値の2倍だったり、5倍だったり、といった数になるので、表1に示すように、対数にした時に小数点以下の端数が生じます。
表1. 自然数と対数(常用対数)の関係
| 自然数 | 常用対数(B) | 常用対数(dB) |
| 1 | 0 | 0 |
| 2 | 0.301 | 3 |
| 3 | 0.4771 | 4.8 |
| 4 | 0.6021 | 6 |
| 5 | 0.699 | 7 |
| 6 | 0.7782 | 7.8 |
| 7 | 0.8451 | 8.5 |
| 8 | 0.9031 | 9 |
| 9 | 0.9542 | 9.5 |
| 10 | 1 | 10 |
基準値と同じ1倍(0B)、10倍(1B)は端数のない、きれいな数値になりますが、2~9倍は上記の通り小数点以下の端数がついた数値になります。B(ベル)表記すると上記表の代表値では、2倍が約0.3B、4倍が約0.6B、5倍が約0.7B、8倍が約0.9Bになります。
真数注1) 表記で1倍以上を表しているのですが、対応するB(ベル)の数値をみると真数イメージに引きずられて1倍未満かもしれないとの錯覚に陥りそうです。そこで比較的使用頻度の高い10倍までの値が1以上の値になるようにd(デシ)をつけてB(ベル)表記を10倍することが考えられました。先程の代表値をdB表記にすると、2倍が約3dB、4倍が約6dB、5倍が約7dB、8倍が約9dBと言った具合です。これなら感覚的にも1倍以上のイメージになります。但し厳密にはdB表記でも1 dB(0.1B)以下、つまり10の0.1乗(=約1.26)は1以下の小数表記になってしまいますが、1 dB以下を使用するケースは少ないでしょうから、実用上は2dB(0.2B、真数では約1.58)以上であれば分かりやすいと思います。
こうした経緯から、SI接頭辞d(デシ)がついたdB(デシベル)が用いられるようになりました。
注1) 真数とは対数logaxに対してそのxのことを指します。
表1では真数を自然数とした場合で示しています。
電力利得(電力比)、電圧利得(電圧比)
利得とは、電気回路における入力と出力の比のことをいいます。ある系に1の入力を加えると出力ではどう変化するかを表します。量として電力、電圧、電流のいずれかをとり、それぞれ電力利得、電圧利得、電流利得と称します。利得の表記として単に何倍ということもありますが、dB(デシベル)が用いられることが多いので、本項ではこの部分を説明していきます。
結論から申し上げますと、電力利得に関しては、B(ベル)が電力の比較表現量に因むことをこれまで説明してきましたが、電圧(電流)利得に関しては倍数表記が変わってくるのです。
下記表は電力利得(電力比)と電圧利得(電圧比)に関する換算値になります。
表2.dB(デシベル)値とそれに対する真数値(電力比と電圧比)の関係
| dB値 | -20 | -6.02 | 0 | 3.01 | 6.02 | 10 | 20 | 30 | 40 |
| 電力比 | 0.01 | 0.25 | 1 | 2 | 4 | 10 | 100 | 1,000 | 10,000 |
| 電圧比 | 0.1 | 0.5 | 1 | 1.41 | 2 | 3.16 | 10 | 31.6 | 100 |
0dB値では、電力比も電圧比も1倍となりますが、他の部分は値が異なっています。これは電力と電圧の違いになります。本コラムでは極力数式を用いないで説明してきましたが、ここからは少しばかり数式を使用します。数学が苦手だった読者も頑張ってついてきて下さい。
読者の皆様は中学理科の授業で、「オームの法則」を習ったことを覚えてますか?
電圧:E(V) = 電流:I(A) × 抵抗:R(Ω)
といった内容です。本式は電圧、電流、抵抗のうち2値が分れば、残りの1値が求められることを意味しています。書き換えると本式 「E(電圧) = I(電流) × R(抵抗)」 は 「R(抵抗) = E(電圧) ÷ I(電流)」 や 「I(電流) = E(電圧) ÷ R(抵抗)」 と表記することも出来ます。
電気のエネルギー量を表す電力を求める式は下記の通りです。
電力:ワット(W) = 電圧:E(V) × 電流:I(A)
上記電力を求める式に、「オームの法則」で書き換えた「I(電流) = E(電圧) ÷ R(抵抗)」を電流:I(A)に代入すると下記式になります。
電力:ワット(W) = 電圧:E(V) ×{電圧:E(V) ÷ 抵抗:R(Ω)}
={電圧:E(V)}2 ÷ 抵抗:R(Ω)
つまり抵抗(Ω)が一定であれば、電力(W)は電圧(V)の二乗に比例する関係になるのです。
検証してみましょう。ここにある回路があるとして、電圧は1V、電流が1A流れているとします。この回路の抵抗は「オームの法則」により1Ω(1V ÷ 1A)になります。また電力は1W(1V × 1A)です。同じ回路に電圧2Vをかけたとします。抵抗は先程1Ωと求めていますので、電流は「オームの法則」から2A(2V ÷ 1Ω)になります。そして電力は4W(2V× 2A)となり、電圧1V時の4倍になります。同様に3Vをかければ、電流は3A、電力は9Wと1V時の9倍になるのです。
説明が長くなりましたが、ここで言いたいことは、電力利得(電力比)は電圧利得(電圧比)の二乗に比例する、ということです。また、電力利得であっても、電圧利得であっても、それに対応するdB値は同じにならなくてはいけません。各々の利得の換算式を(式1)および(式2)に示します。電圧利得の二乗が電力利得ということですから、電力利得が常用対数を取った後に10倍しているのに対して、電圧利得は20倍するということになります。
電力利得の換算式は、Lを電力利得のdB値、 を電力利得(真数)とすると、
また、電圧利得は電力利得の二乗となることより、 を電圧利得(真数)とすると、
表2の電力比と電圧比の値は、おのおの式(1)と式(2)の2番目の式から計算しています。
一般的に通常解析器への信号は検出器を経由して電圧値で入力されることが多いので、電圧利得(電圧比)で使用されている例が多いですが、どちらのケースで使用されているのか吟味し判断する必要があります。
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今回、後半部が難しかった読者の方もいらっしゃったかもしれません。オームの法則、対数の計算については中学理科の授業や・高校数学で学んだ内容です。興味を持たれた読者の方はぜひ、ご自分で復習されてみて下さい。
次回はdB入門基礎編の最終回として、何故dBを使用するのか、何が便利なのかについて説明させていただきます。
下記は当社のdBについての技術レポートと過去の計測コラムの紹介です。本文章によりdBに興味を持っていただけたらご一読願います。
【参考】
小野測器技術レポート「dB(デシベル)とは」
小野測器計測コラム「dB(デシベル)について」
(2022年2月16日発行メールマガジンより抜粋)