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計測初心者のための入門コラム:わかりませんの人たち集まれ~ 第8回「dB(デシベルとは)? その3」

前回、前々回とdB(デシベル)について用語説明と、電力利得(電力比)と電圧利得(電圧比)で、真数への変換計算が異なることを説明してきました。今回は初心者のためのdB編の最終回として、dBを使う上でのメリットをいくつか紹介し、何故計測結果の報告としてdBが使用されているのかを説明いたします。なお今回の説明に関しては、比較的多用されている電圧比の計算方法を用いることにします。

dBを使う上でのメリット

計測値の読み間違いリスクを減らせる

dBを使用すると少ない桁数で大きな値を表すことが出来ます。通常人間が間違いなく扱える数値の桁数は3桁ないし4桁と言われています。例えば、キャシュカードやクレジットカードの暗証番号数字が4桁であることや、電話番号も市外局番、市内局番、個別番号間も-(ハイフン)で少ない桁数に分割されていることなどが挙げられます。
実際の計測では、1万倍や100万倍などといった、桁数の大きな結果になることも珍しくありません。このような大きな桁数の数字をdB表記にすることで、少ない桁数で結果を表記することができます。例えば、1~10,000,000,000(100億)倍dB表記を0~200dBにて表すことができます。
前回説明したように、を電圧利得(真数)、そのdB値をLとすると、以下の関係式となります。

  • img-measurement-column-20220316-01


L= 200dBの場合、
電圧利得の真数 は、10(200/20)=1010=10,000,000,000(100億)
L= -200dBの場合、
電圧利得の真数  は、10(-200/20)=10-10=1/10,000,000,000(1/100億)
となり、1/100億という非常に小さな数字から100億という非常に大きな数字を-200~200(dB)という3桁の数字で扱うことができるので、計測時の値の読み間違い等を防ぐことにもつながります。

スケールが大きく異なる数値でも同じグラフ上で比較しやすくなる

計測結果の値の差が数倍~数十倍程度であれば、棒グラフなどで同じグラフ上に表示することで、その大小関係を比較することができます。しかし、比較するデータがあるデータの100倍を超えるようなデータであった場合、真数グラフでは同じスケールでその大小関係を正確に比較することが難しくなります。このようなケースでも、dB値に変換してグラフ化することで、それらの大小関係について比較しやすくなる、というメリットがあります。
例として、太陽系の星の大きさでこれを説明します。


表1. 太陽系の星の大きさ(直径)と、地球を基準とした、各星の直径比率

  太陽 水星 金星 地球 火星 木星 土星 天王星 海王星
直径 (km) 1,392,700 4,880 12,100 12,760 3,570 6,790 142,980 120,540 51,120 49,530
直径比率 109.1 0.4 0.9 1 0.3 0.5 11.2 9.4 4 3.9
直径比率 dB 40.8 -8.3 -0.5 0 -11.1 -5.5 21 19.5 12.1 11.8
  • グラフ1.地球を基準とした各星の直径比率
    グラフ1.地球を基準とした各星の直径比率
    (左:直径比率のグラフ 右:直径比率のdB表示グラフ)

 


表1は各星の大きさ(直径)と、地球を基準とした場合の直径比率、およびそのdB値を表しています。グラフ1はそれらを棒グラフで表したものです。
太陽系では太陽が桁外れに大きいため、真数グラフ(左)では、太陽の大きさの1/100以下の地球などはほぼゼロ付近のグラフになってしまいます。一方、dBグラフ(右)では太陽の大きさの約1/300の大きさのである月も、同じスケールのグラフ上に表現することができます。
実際の計測でも、このような100倍を超えるようなデータを比較するケースは少なくありません。このような場合、真数をdB値に変換した上でデータを比較することで、その大小が比較しやすくなります。

音や振動などの周波数分析を行う際に使われるFFTアナライザにおいて、パワースペクトルのグラフがよく用いられますが、この時のリニア表示とログ表示の関係もこれと同じです。

積算・除算の概略計算が楽

dB計算では、掛け算が足し算で、割り算が引き算になります。一体何のことか、と思われる読者の方も多いかと思います。簡単に記載すると、以下の通りです。
真数の積を求める場合は、そのdB値の和を計算する
真数の商を求める場合は、そのdB値の差を計算する
前回のコラム(dBとは?その2)では電力利得、電圧利得の説明でdB値と電力比、電圧比の関係を説明しました(表2)。今回もこの表を用い、検証していきます。

表2. dB(デシベル)値とそれに対する真数値(電力比と電圧比)の関係

dB値 -20 -6.02 0 03.01 6.02 10 20 30 40
電力比 0.01 0.25 1 2 4 10 100 1,000 10,000
電圧比 0.1 0.5 1 1.41 2 3.16 10 31.6 100

まずは真数の掛け算です。
電圧比3.16倍と10倍の積を求めると3.16 × 10 = 31.6
同じ計算をdB値で行うと、和を計算することになるので10(dB)+20(dB)=30(dB)
表2を確認していただくと分かるように、31.6の電圧比は30dBに相当します。
続いて真数の割り算です。
電圧比100倍と10倍の商を求めると100 ÷ 10 = 10
同じ計算をdB値で行うと、差を計算することになるので40(dB)-20(dB)=20(dB)
表2を確認していただくと分かるように、10の電圧比は20dBに相当します。

更に、電圧比で20dBは10倍、10dBは約3倍、6dBは2倍、と個別に覚えておくと、dB値から真数に変換する時に、簡易的な計算が楽にできるようになります。
例えば26dBは、26(dB) = 20(dB) + 6(dB) なので、真数計算では10倍 × 2倍 で基準の20倍と換算出来ます。同様に58 dBの場合、58(dB) = 20(dB) + 20(dB) + 6(dB) + 6(dB) + 6(dB)と分解後、10倍 × 10倍 × 2倍 × 2倍 × 2倍と置き換えて、基準の800倍と、真数を簡単に計算することができます。
最近では、伝達系やサーボ制御系の分野において、この計算がよく用いられます。
例えば、伝達系1が20dB(10倍)のゲインを持ち、伝達系2が14dB(5倍)であるとすると、2つの伝達系をシリーズ(直列)接続する場合のゲインは、20(dB)+14(dB)=34(dB)と簡単に求めることができます。
残念ながら、dBの加算(足し算)、減算(引き算)に関しては、上述のような便利な簡易計算方法はなく、真数に換算してから計算するしかありません。しかしながら、dBが考案された今から100年前では、現在の関数電卓やPC使用など全く想像出来ない状況で、積算(掛け算)、除算(割り算)だけでも簡便に出来るdBは、当時の研究者の自尊心をくすぐるものだったはずです。
今回はdB入門基礎編の最終回として、dBの有効性について説明してきました。
本コラムで説明させていただいた内容は、ほんのとば口でしかありません。
読者の皆様には本コラムにより、これまで以上にdBに興味を持っていただき、知識を深めていただければ幸いです。下記は当社のdBについての技術レポートと以前の計測コラムの紹介です。資料としてご参照願います。
【参考】
小野測器技術レポート「dB(デシベル)とは」
小野測器計測コラム「dB(デシベル)について」

(2022年3月16日発行メールマガジンより抜粋)