今回は、前回の「回転変動計測」の続きとして、「ねじり振動計測」に関してお話します。
ガソリンエンジンやディーゼルエンジンのクランクシャフト、FR 車のプロペラシャフトなどにおいては、ねじり振動が原因となる軸の破損や騒音などいろいろな問題を引き起こします。そのため、ねじり振動計測や回転変動計測は、回転体にとって、重要な計測項目の 1つとなっています。
ねじり振動とは、回転体がある回転速度で、回転力(トルク)により大きく軸がねじれ、そのときのトルク周波数でねじり共振を起こす現象です。通常は、回転速度をスイープさせ回転体軸のねじれ角を計測して、角変位変動成分のトラッキング解析を行います。今回は、2 つの方法によるねじり振動計測を紹介します。
前回と同様に今回も、図 1 にあるような回転デモ装置を使います。この装置は、回転軸に円盤と歯車(60 P/R)を 3 か所取り付け、軸の先端部分に磁石による変動負荷を付けたものです。歯車にMP-992型電磁式回転検出器を取り付けて正弦波状の回転情報信号を取り出し、高速FVコンバータFV-1500を使ってアナログ信号に変換して、それをDS-3000シリーズFFTアナライザでトラッキング解析を行った結果(回転次数成分が 4 次の振幅と位相)が、図 2 です。この結果から、約 1650 r/minと約 3000 r/minにねじり共振があり、そのねじり振動モードは、図 3 のような形状であることが分かります。
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図 1 回転デモ装置と回転検出器
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図 2 3 つのセンサからの回転速度情報をトラッキング解析した結果
横軸:回転速度(1000~3500 r/min)
上段:回転変動振幅(単位:Hz)
下段:位相(単位:度(deg))
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図 3 回転 4 次成分のねじり振動の振動モード
上段:約 1650 r/min
下段:約 3000 r/min
次に、この回転デモ装置を使って、ねじり振動を計測してみたいと思います。具体的には、MP1 を基準として MP3 の角変位変動(図 3 において、回転速度が約 1650 r/min のときのねじり共振)を求めます。
図 1 にあるような電磁式回転検出器から回転速度(角速度)情報を取得して、ねじり角変位を算出する方法は、大きく以下の 2 つあります。
- MP1 と MP3 の回転速度情報を F/V 変換により角速度(周波数)情報に
変換してその差を時間積分して角変位変動成分を求める
··············(1)
式(1)の右辺の数値 360 は、このあとに 1 重積分して角周波数を角変位に変換するとき、
角度を度(deg)で直読できるようにするためです。 - 電磁式回転検出器 MP1 と MP3 から出力される時間波形(正弦波)から、ヒルベルト変換機能を使って瞬時位相(角変位)を算出して、その差から角変位変動成分を求める。
∆θ=θ(MP3) − θ(MP1) ··············(2)
上記 2 つの計算は、小野測器の時系列データ解析ツールOscopeを使って 2 次処理計算を行
います。以下、2 つの方法の手順を説明します。
- F/V 変換機能を使う方法
①MP1 と MP3 の時間波形を F/V コンバータ(信号処理メニュー)を使って、
瞬時周波数の時間信号を求める。(図 4)
(注意)縦軸は、回転周波数の値となっており、単位は Hz である。
② チャンネル間演算(信号処理メニュー)を使って、
(MP3-FV―MP1-FV)x 360 により角周波数変動成分を求める。
③ 時間軸微積分(信号処理メニュー)の一重積分を使って角周波数変動成分を位相差角変動成分に変換する。(注意)縦軸は角度で単位は度 (deg) である。
④定比トラッキング解析(波形解析メニュー)を使って、ねじり振動の回転速度とその振幅値(角変位変動)を求める。
(解析条件)
回転速度:1000~3500 r/min
解析ブロック数:400
最大解析次数:50
上記手順による解析結果は図 5 となり、その 4 次成分のねじり共振は、1658 r/min の回転速度で発生してその角変位変動振幅は約 0.564 度であることがわかります。
図 4 MP1 からの時間信号を F/V 変換した結果
図 5 「F/V 変換機能」を使う方法により求めたねじり振動結果(4 次成分) - ヒルベルト変換機能を使う方法
①MP1 と MP3 からの時間信号から、ヒルベルト変換を使って瞬時位相(角変位)を求める。(図 6)
(注意)瞬時位相とは、時間信号(正弦波)Asinθ の位相角θ を時間の関数(横軸:時間、縦軸:位相角)として取り出すことである。
図 6 MP1 の時間波形の位相
位相は、1周期 360 度で円周上を何回も回り時間とともに大きくなるが、
±180 度で折り返して表示している
②チャンネル間演算(信号処理メニュー)を使って MP1 と MP3 との角度差を計算して、位相差角変動成分を求める。(注意)縦軸は角度で単位は度 (deg) である。ただし、この場合での角度は、1回転 60 歯の時間信号だから電気角相当で、実際の機械角は、60 で割る必要がある。
③定比トラッキング解析(波形解析メニュー)を使って、ねじり振動の回転速度とその振幅値(角変位変動)を求める。
(解析条件)
回転速度:1000 ~ 3500 r/min
解析ブロック数: 400
最大解析次数:50
上記手順による解析結果は 図7となり、その 4 次成分のねじり共振は、1658 r/min の回転速度で発生してその角変位変動振幅は電気角で約 33.988 度(機械角では約 0.566 度)であることがわかります。
図 7 「ヒルベルト変換機能」を使う方法により求めたねじり振動結果(4 次成分)
なお、方法 1(FV変換機能を使う方法)は、MP1 とMP3 での瞬時周波数から計算する方法ですから、前回述べたように、回転デモ装置についている円盤の接線方向の速度vをレーザ面内速度計で計測してV = rω (rは円盤の半径)の関係から瞬時周波数を求める方法もあります。
最後にまとめです。
- 軸のねじり共振によって軸の破損や騒音問題となるため、ねじり振動や回転変動などの計測は、回転体の振動計測ではとても重要となります。
- ねじり振動とは、回転体がある回転速度で、回転力(トルク)により大きく軸がねじれ、そのときのトルク周波数でねじり共振を起こす現象です。
- ねじり振動計測は、2Ch間の軸のねじり角度差を求める必要があり、そのために大きく 2 つの方法があります。
- 方法 1 は、回転検出器やレーザ面内速度計で軸の瞬時周波数(角速度)を計測して、2Ch間の差を求めその結果を時間積分して角変位変動成分を求めます。
- 方法 2 は、回転検出器から検出した時間信号からヒルベルト変換機能を使って瞬時位相(角変位)を算出して、その差から角変位変動成分を求めます。
- 上記の(4)と(5) から求めた角変位変動成分をトラッキング解析することにより、ある回転速度でのねじり共振の角変位変動成分振幅値を求めます。
【キーワード】
ねじり振動、回転変動、回転力、トルク、ねじり共振、ねじれ角、ねじり振動モード、時間積分、ヒルベルト変換、瞬時位相、瞬時周波数、定比トラッキング解析、電気角、機械角、レーザ面内速度計
【参考】
(2018年7月25日発行メールマガジンより抜粋)