これまで、回転体の音振動計測手法としてよく使われる「トラッキング解析」や、回転体の振動対策で重要となる「バランシング計測」についてお話しましたが、今回のテーマは、「回転変動計測」です。回転体の回転変動は、負荷変動やトルク変動など様々な要因がありますが、ここでは、トラッキング解析技術を使ってねじり振動現象での回転変動を計測します。そしてそれから角変位変動成分を算出する例を紹介します。
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図1 いろいろなタイプの小野測器製回転検出器
回転速度情報を得るためには回転センサが必要で、例えば図1のようにいろいろなタイプの回転検出器があります。ここではMP-900/9000シリーズ 電磁式回転検出器を使います。
その検出原理は、図2にあるように回転軸に取り付けた歯車(磁性体)に電磁式回転検出器を近接させ(約0.5~1 mm程度)、検出器の先端が歯車の歯先に近づいたり離れたりすることで磁気抵抗の変化が生じ内部のコイルに誘導起電力が発生してそれを出力します。いわば、発電機の原理で交流電圧が発生しますので、正弦波状の時間波形が出力され回転速度が上がればその周波数が大きくなりまたその振幅も大きくなります。この例(図2)では、検出器の出力をTM-3100シリーズ ディジタル回転計に入力して回転速度(単位 : r/min)を表示しています。
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図2 MP-9000電磁式回転検出器とTM-3100ディジタル回転計
図2にあるようなディジタル回転計は、平均的な回転速度を計測することができますが、回転変動成分(回転速度の変化量)を求めるためには、高速FVコンバータ により回転速度情報を電圧時間信号に変換してそれを周波数分析器(FFTアナライザ)で分析する手法がよく使われます。図3の例では、回転センサとしてロータリエンコーダ を使っていますが、本手法により、回転変動成分を計測しています。
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図3 高速FVコンバータとFFTアナライザを使った回転変動計測例
高速FVコンバータ(以下FV-1500と呼ぶ)に入力する信号は正弦波状の交流信号でもパルス信号(図3でのロータリエンコーダの出力)でもどちらでもよく、正弦波状の信号は入力段でパルス信号に変換して演算処理しますので、ここではパルス信号入力として以下説明します。
回転速度は、パルス信号(回転検出器からの信号)の周波数に比例することになりますから、FV-1500は、パルス信号の1周期の逆数(すなわち瞬時の周波数)に対応した電圧信号をパルス信号が入るたびに出力します。図4に例を示すように、入力された信号の周波数に比例した電圧信号が出力されていることが分かります。
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図4 スイープさせた正弦波の出力結果
上図:FV-1500の出力電圧波形
下図:入力信号(10 Hzから40 Hzを10sでスイープ)
もう1つの例として、一定の周波数 (5 kHz) の正弦波(搬送波)を50 Hzの信号波で周波数変調(FM)した信号をFV-1500で電圧信号に変換したものが下図(図5)です。
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図5 周波数変調した信号を高速FV変換した例
(元のFM波: 5 kHz、信号波: 50 Hz)
一定回転速度で回転している回転体が回転変動を起こしているとすれば、物理的には周波数変調と同じ現象となりますから、回転速度情報を高速FV変換すれば、回転変動成分を抽出する事ができます。
この高速FV変換器FV-1500を使って回転変動計測を行うときの注意点を述べます。この機器の演算手法は、1パルス毎にアナログ信号を出力しているから、等価的に変調信号(回転変動成分)を入力パルスでサンプルして(数値化して)それをアナログ出力していることになります。それ故、入力のパルス周波数が1回転あたりの回転変動周波数よりも大きくなければならない、すなわち、1回転Nサンプル出力される回転検出器を使う必要があります。1 P/Rの回転検出器では、回転変動成分を検出できないと言うことです。
例えば、60 P/Rの回転検出器を使えば、サンプリング定理から原理的に回転30次成分(1/2)までの回転変動成分を求めることができることになりますが、波形の歪み、折返し誤差、D/A変換器の0次ホールド誤差などがあり、現実的には、6次成分 (1/10)ほどが実用的となります。
ここで、回転体の回転速度と角速度との関係について考えます。通常回転速度といえば、1分間に回転する回数で、その単位はm-1あるいはr/minです。また、1秒間に回転する回数は回転周波数で、その単位は、s-1 あるいはHzです。それに対して角速度(角周波数)は、1秒間に角度でどれくらい回転するか(何ラジアン回転するか)を表す量で、その単位はrad/sです。いま、回転速度をn、周波数をf、角速度をωとすると、1回転の角度は2π(360度)ですから
の関係となります。例えば、回転速度が1000 (r/min) であれば、角速度は、約105 (rad/s)です。
これらの予備知識を踏まえ、図6にある回転デモ装置を使い、回転速度をスイープさせて、ねじり振動 に起因する回転変動成分を計測してみます。この装置の回転軸には60 P/Rの歯車がついており、電磁式回転検出器で回転速度情報を検出し、FV-1500によりアナログ電圧信号に高速変換して、それをFFTアナライザに入力して、トラッキング解析を実行します。なお、回転トラッキング解析に必要な外部サンプルパルス信 (1 P/R) は、別のセンサから検出しています。
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図6 電磁式回転検出器と高速FVコンバータを使った回転変動計測
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図7 周波数変動成分(4次)の定比トラッキング解析結果
スイープ範囲 :1000 ~ 3500 r/min
図7は、その計測結果です。4次成分のトラッキング線図(横軸:回転速度、縦軸:周波数)で、約1643 r/min付近でねじり振動の共振により大きく回転変動していることが分かります。
周波数変動振幅:273.4 (mHz)
角速度変動振幅:1.718 (rad/s)
回転速度変動振幅:16.40 (r/min)
この結果から、角変位変動振幅を求めることにします。
ここで、周波数変調の考え方を説明します。
以下で、x(t)は周波数変調された時間信号
ω(t)はその角速度、ω(s)は変動成分の角速度、amは変動成分の角速度変動量
ωc:中心角速度
ωs:変動成分の角速度
am:角速度変動量
これらの関係式から、角変位変動量は、角速度変動量を変動成分の角速度で割ることにより求めることができます。具体的な計算方法は、FFTアナライザの1機能である周波数微積分機能(jω演算)を使います。
図8が、その計算結果です。
縦軸は角度相当となっていますが、rad (弧度法)ベースとなっており、度(度数法)の角度にするためには、360倍すれば良いことになります。具体的には
角変位変動成分の振幅: 397.3 μ x 360=0.14 deg (1643 r/minにて)となります。
今回の計測例では、電磁式回転検出器と高速FVコンバータを使いましたが、回転デモ装置についている円盤の接線方向の速度vをレーザ面内速度計で計測すれば、ωrv=(rは円盤の半径)の関係から角速度 ω を直接検出することも可能です。
次回は、2 chを使って、ねじり振動計測の説明をします。
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図8 角変位変動成分(4次)の定比トラッキング解析結果
図7の結果を周波数軸1重積分したもの
最後にまとめです。
- 回転体の回転情報を検出する回転センサは、様々なタイプがありますが、電磁式回転検出器が使いやすく比較的安価でよく利用されています。
- 電磁式回転検出器からの回転パルスを高速FVコンバータにより回転速度(あるいは角速度)変動成分のアナログ信号に変換してFFTアナライザで分析する手法がよく用いられます。
- 回転体のねじり共振による回転変動は、高速FVコンバータの出力をトラッキング解析により求めることができます。
- 回転速度(あるいは角速度)変動成分の検出は、回転検出器+高速FVコンバータの方法だけでなく、レーザ面内速度計でも検出可能です。
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(2018年5月22日発行メールマガジンより抜粋)