当計測コラムでは、当社お客様相談室によくお問い合わせいただくご質問をとりあげ、回答内容をご紹介しています。
振動を定量的に捕えるには、一般に変位(単位: m)、速度(単位: m/s)、加速度(単位: m/s2)の3つの物理量が使われます。振動を測定するためのセンサには様々な種類のものがあり、測定する物理量に応じて変位センサ、速度センサ、加速度センサに分けられます。センサにはそれぞれ特徴や制約があり、測定したい物理量を測定できるセンサを使用できるとは限りません。
圧電式の加速度センサは接触式であり、計測が比較的簡単で安価ですが、測定できる物理量は加速度です。速度や変位を測定したい場合は、センサから得られた加速度信号を数値積分などにより速度や変位に変換する必要があります。
加速度の時間波形を単純に数値積分するとノイズの影響をうけ正しい速度・変位の時間波形にはなりません。そのような場合には、IFFT(逆フーリエ変換)機能を用います。今回は、弊社リアルタイム音響振動解析システムのDS-0321 FFT 解析機能を例にとり、IFFT機能を用いた速度・変位の時間波形の表示手順をご紹介します。
振り子の振動の加速度時間波形とスペクトル
振り子の重りに横向きに加速度センサをはりつけて測定した振動の加速度時間波形とパワースペクトル図1に示します。周波数レンジは50 Hz、サンプル点数は2048点で分析しました。FFTフレームの時間長は16秒、周波数分解能は0.0625 Hzとなる設定です。パワースペクトルは0 Hz ~ 20 Hzを拡大表示しています。
パワースペクトルによると、振動の周波数は1.313 Hzですので、振り子の振動周期はその逆数の0.762秒であることがわかります。一次成分の加速度実効値は0.199 m/s2 で、オーバーオールは 0.250 m/s2 でした。両振幅値(peak-peak)に換算するとそれぞれ 0.563 m/s2 、0.707 m/s2 になります。また、パワースペクトルの0.5 Hz以下に低周波のノイズ成分が含まれていることが分かります。
時間波形から両振幅値(peak-peak)の最大値を読みとると、0.862 m/s2 です。二次以上の成分や低周波ノイズの影響があると、パワースペクトルから読み取った値と完全に一致はし
ませんが、おおむね妥当な値が得られています。
加速度値を(2×π×周波数)で割ると速度値、(2×π×周波数)で2回割ると変位値になります。パワースペクトルから読み取った一次成分(1.313 Hz)の加速度実効値は0.199 m/s2 でしたので、速度実効値は24.1 mm/s、変位の実効値は2.92 mmになります。また、速度の両振幅値(peak-peak)は68.2 mm/s、変位の両振幅値(peak-peak)は8.27 mmになります。
なお、データ表示設定メニュー⇒ Y軸スケール設定で、スケールはAUTO に設定してい
ます。また、データ表示設定メニュー⇒ カーソル設定のY軸カーソル設定では、時間軸ピ
ークを Peak-Peak に、“2つのカーソル値を表示”を ON にしています。
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図1 振り子振動の加速度時間波形(上段)とパワースペクトル(下段)
時間波形の数値積分による速度時間波形と変位時間波形
DS-0321 FFT 解析機能は、数値演算による時間軸微積分機能をそなえています。図2に振り子振動の加速度時間波形と、時間軸微積分機能により求めた速度時間波形、変位時間波形を示します。FFTフレームの時間長は16秒ですが、そのうちの8秒分を拡大表示しています。
速度時間波形、変位時間波形のカーソル値をみると -499 mm/s、-3256 mm といった明らかに異常な値を示しています。また、全体的に弓なりの波形になっています。これは信号に含まれる低周波ノイズが積分により強調されたためで、正しい速度時間波形、変位時間波形ではありません。
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図2 振り子振動の加速度時間波形(上段)と数値積分による速度時間波形(中段)、変位時間波形(下段)
時間軸微積分機能は解析設定メニュー ⇒ 時間軸データ解析で設定します(図3)。加速度の時間波形に対して、時間軸微積分で1重積分をおこなうと速度時間波形が得られます。2重積分をおこなうと変位時間波形が得られます。DC除去はONにします。積分単位変換をONにすると速度の単位、変位の単位を指定できます。
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図3 時間軸微積分機能設定画面(解析設定メニュー ⇒ 時間軸データ解析)
IFFT機能による速度時間波形と変位時間波形
低周波ノイズの影響をカットして、加速度時間波形から、速度時間波形や変位時間波形を求めるには、周波数微積分機能と、IFFT(逆フーリエ変換)機能を使います。
加速度時間波形を一旦FFTし、フーリエスペクトルを求めます。得られたフーリエスペクトルの各周波数成分を(2×π×周波数)で1回または2回割ると、速度や変位のフーリエスペクトルが得られます。得られた速度・変位のフーリエスペクトルのうち、1 Hz未満の成分をカットしてからIFFT(逆フーリエ変換)したものを図4に示します。
速度時間波形、変位時間波形の両振幅値(peak-peak)は、それぞれ81.8 mm/s、10.1 mmと妥当な値が得られています。
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図4 振り子振動の加速度時間波形(上段)とIFFTによる速度時間波形(中段)、 変位時間波形(下段)
図4 振り子振動の加速度時間波形(上段)とIFFTによる速度時間波形(中段)、 変位時間波形(下段)
IFFT 機能による速度・変位時間波形の表示手順は次の通りです。
- 入出力設定メニュー ⇒ 窓関数設定で窓関数をレクタンギュラに設定します。
窓関数の設定は再測定後に有効になります。 - データ表示設定メニュー ⇒ データ設定でグラフにフーリエスペクトルを表示します。
- 解析設定メニュー ⇒ 周波数微積分で、1重積分(速度を表示する場合)または2重積分(変位を表示する場合)に設定します。また、積分単位変換をONにし、速度の単位、変位の単位を設定します。

- 解析設定メニュー⇒ IFFT演算で、帯域制限をON、帯域制限方法を “外側カット” に設定した後、IFFT機能をONにします。下限周波数は、低周波ノイズの影響を受けないような値に設定します。時間波形が期待した波形にならない場合は、下限周波数を調整してください。上限周波数は周波数レンジと同じ値に設定します。

まとめ
今回は、加速度の時間波形をIFFT(逆フーリエ変換)機能を用いて速度・変位の時間波形に変換する手順をご紹介しました。時間波形の数値積分によりもとめた速度・変位の時間波形が期待した波形にならない場合は、IFFT機能をお使いください。
なお、今回の計測コラムでご紹介した手順は、リアルタイム音響振動解析システム DS-3000シリーズのVer.2.5 のものです。旧バージョンでは手順が異なります。
(2017年8月29日発行メールマガジンより抜粋)