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計測に関するよくある質問から- 第8回 「パーシャルオーバーオールの計算方法」

当計測コラムでは、当社お客様相談室によくお問い合わせいただくご質問をとりあげ、回答内容をご紹介しています。今回はFFT解析により得られたパワースペクトルからオーバーオール(OA)、パーシャルオーバーオール(POA)を計算する方法をご紹介します。

オーバーオール(OA)は分析周波数レンジまでのパワー値(2乗値)の総和(オーバーオール)です。総和をとる周波数範囲を限定し、その範囲の総和を求めた値をパーシャルオーバーオール(POA)と呼びます。

オーバーオール(OA)とパーシャルオーバーオール(POA)の計算

オーバーオール(OA)は式(1)で求める事ができます。この式で得られるオーバーオール(OA)の値は物理値の2乗値です。オーバーオール値を2乗値ではなく物理値で表示したい場合は式(1)の結果の平方根をとってください。

  • オーバーオール(OA)とパーシャルオーバーオール(POA)の計算_No.1


ここで:
PDC :DC成分(0 Hz成分)のパワー値(2乗値)
Pi :i番目のパワースペクトルの値(実効値、2乗値)
N :パワースペクトルの個数(ライン数)
Hf: :ウィンドウ(窓関数)の補正値

パーシャルオーバーオール(POA)は総和を求める範囲を限定したオーバーオールです。式(1)で加算する範囲(かぎ括弧内)を変えた式で計算できます。

ウィンドウ(窓関数)ごとの補正値Hfの値を表1に示します。なお、フラットトップ(※)の補正値は当社DS-2000/DS-3000シリーズデータステーション、CF-5200/CF-7200/CF-9000/ CF-4500/CF-4700 FFTアナライザのものです。当社の旧製品(CF-350/CF-360 FFTアナライザ等)ではフラットトップ窓関数の形状が異なるため、補正値も異なります。また、他社製品では当社とは異なる形状のフラットトップ窓関数が使われている可能性があり、その場合は補正値も異なります。
表1 OA・POAを求める際のウィンドウ(窓関数)の補正値

ウィンドウ(窓関数) 補正値
レクタンギュラ(矩形窓) 1
ハニング 2/3 = 約0.6667
フラットトップ(※) 1/3.6714416356 = 約0.2724
フォース 1
指数 1

加速度パワースペクトルからのオーバーオールの算出

FFTアナライザで解析した加速度パワースペクトルをエクセルに読み込んだ例を表2に示します。周波数レンジ(C6セル)は10000 Hz、サンプル点数(B7セル)は1024点ですので、周波数分解能は25 Hzになります。A17 ~ A417セルが周波数の値で0 Hzから10 kHzまで25 Hzおきの値が並んでいます。

Y軸スケール(B14セル)がLinになっていますので、これはY軸スケールをLinに設定して計測したデータで、B17 ~ B417セルの値は各周波数成分の物理値(加速度値)です。Y軸スケールがMagLogになっているデータはY軸スケールをLog/MagLogに設定して計測したデータで、この場合もB17 ~ B417セルの値は各周波数成分の物理値(加速度値)です。

D17 ~ D417セル、D421セル、B421セルに表2のような数式を入力するとB421セルにオーバーオール(OA)の物理量(加速度値)が表示されます。D17 ~ D417セルには各周波数成分の物理値の2乗を求める式が入力されています。B421セルには" SQRT(D421 / 1.5)"という数式が入力されていますが、この1.5で割っているのがハニング窓関数の補正値(2/3)をかける処理に相当します。D421セルには" SUM(D17:D417)"という数式が入力されていますがこの式の総和を求める範囲を変更すればパーシャルオーバーオール(POA)を求める事ができます。

Y軸Magnitude(B16セル)がrmsになっていますのでB17 ~ B417セルの値は実効値(RMS値)です。そのため、上記の方法で求めたオーバーオール(OA)、パーシャルオーバーオール(POA)の値も実効値(RMS値)です。

C16 ~ C17セルにPSD、ESD、V2と表示されているデータは、PSD(パワースペクトル密度)、ESD(エネルギースペクトル密度)、V2(物理値の2乗値での表示)等を設定して計測したデータです。記録されるデータが異なるので、本節で紹介した計算方法を一部変更しないと計算はできません。

表2 加速度パワースペクトルからのオーバーオールの算出例

  A B C D E
1 Label: CH2: パワースペクトル    
2 DateTime: Mon Jun 20 17:55:25 2016    
3 DataKind: CH2 PowerSpec Mag  
4 DataPoints: 402 Filter: FLAT  
5 DataCalc:        
6 Frequency: 0 10000 Hz  
7 Sample: 1024 Internal    
8 Average: 0 Power/Sum    
9 Voltage(CH2): -10 dBVrms    
10 EU/V(CH2): 1.00E+03 0dBRef.(CH2): 1.00E+00  
11 Window(CH2): Hann      
12 X-AxisScale: Lin      
13 X-AxisUnit: Hz      
14 Y-AxisScale: Lin      
15 Y-AxisUnit: m/s2      
16 Y-AxisMagnitude: rms   物理量2乗値 セルの数式
17 0.0 0.4217   0.177858442 =B17*B17
18 25.0 0.9046   0.818217277 =B18*B18
19 50.0 0.5663   0.320670754 =B19*B19
20 75.0 0.2481   0.06155948 =B20*B20
       
414 9925.0 0.0489   0.002388137 =B414*B414
415 9950.0 0.0255   0.000652105 =B415*B415
416 9975.0 0.0547   0.002996523 =B416*B416
417 10000.0 0.0501   0.002509365 =B417*B417
418 OVERALL 17.9163      
419          
420   オーバーオール値 物理量2乗値の総和
421   17.91631297   481.4914056  
422   =SQRT(D421/1.5) =SUM(D17:D417)

なお、表2の内容は以下のリンクからダウンロードいただけます。

表2 加速度パワースペクトルからのオーバーオールの算出例

音圧レベルスペクトルからのオーバーオールの算出

FFTアナライザで解析した音圧レベルのパワースペクトルをエクセルに読み込んだ例を表3に示します。周波数レンジ(C6セル)は10000 Hz、サンプル点数(B7セル)は1024点ですので、周波数分解能は25 Hzになります。A17 ~ A417セルが周波数の値で0 Hzから10 kHzまで25 Hzおきの値が並んでいます。

Y軸スケール(B14セル)がLogになっていますので、これはY軸スケールをLogに設定して計測したデータで、B17 ~ B417セルの値は各周波数成分のデシベル値(音圧レベル値)です。

D17 ~ D417セル、D421セル、B421セルに表3のような数式を入力すると、B421セルにオーバーオール(OA)のデシベル値(音圧レベル値)が表示されます。D17 ~ D417セルには各周波数成分のデシベル値から、音圧2乗値を求める式が入力されています。B421セルには" 10*LOG10(D421/1.5)"という数式が入力されていますが、この1.5で割っているのがハニング窓関数の補正値(2/3)をかける処理で、"10*LOG10"が音圧2乗値をデシベル値に変換する処理です。D421セルには" SUM(D17:D417)"という数式が入力されていますが、この式の総和を求める範囲を変更すればパーシャルオーバーオール(POA)を求める事ができます。

Y軸Magnitude(B16セル)がrmsになっていますのでB17 ~ B417セルの値は実効値(RMS値)です。そのため、上記の方法で求めたオーバーオール(OA)、パーシャルオーバーオール(POA)の値も実効値(RMS値)です。

C16 ~ C17セルにPSD、ESD、V2と表示されているデータは、PSD(パワースペクトル密度)、ESD(エネルギースペクトル密度)等を設定して計測したデータです。記録されるデータが異なるので、本節で紹介した計算方法を一部変更しないと計算はできません。

なお、表3の内容は以下のリンクからダウンロードいただけます。

表3 音圧レベルスペクトルからのオーバーオールの算出例

表3 音圧レベルスペクトルからのオーバーオールの算出例

  A B C D E
1 Label: CH1: パワースペクトル    
2 DateTime: Mon Jun 20 17:55:25 2016    
3 DataKind: CH1 PowerSpec Mag  
4 DataPoints: 402 Filter: FLAT  
5 DataCalc:        
6 Frequency: 0 10000 Hz  
7 Sample: 1024 Internal    
8 Average: 0 Power/Sum    
9 Voltage(CH1): -30 dBVrms    
10 EU/V(CH1): 3.98E+01 0dBRef.(CH1): 2.00E-05  
11 Window(CH1): Hann      
12 X-AxisScale: Lin      
13 X-AxisUnit: Hz      
14 Y-AxisScale: Log      
15 Y-AxisUnit: Pa      
16 Y-AxisMagnitude: rms   物理量2乗値 セルの数式
17 0.0 52.256   168096.9835 =10^(B17/10)
18 25.0 50.504   112293.3427 =10^(B18/10)
19 50.0 37.941   6224.698059 =10^(B19/10)
20 75.0 35.992   3973.889804 =10^(B20/10)
       
414 9925.0 29.817   958.7666301 =10^(B414/10)
415 9950.0 21.824   152.1842996 =10^(B415/10)
416 9975.0 27.408   550.5741158 =10^(B416/10)
417 10000.0 35.021   3177.875289 =10^(B417/10)
418 OVERALL 75.045      
419          
420   オーバーオール値 物理量2乗値の総和
421   75.04507623   47929056.75  
422   =10*LOG10(D421/1.5) =SUM(D17:D417)

ハニング窓関数補正値について

ハニング窓関数を使用してFFT解析すると、窓関数の影響で各周波数成分やオーバーオール(OA)の値が変化してしまいます。そのため、FFTアナライザはその影響分を補正して各周波数成分やオーバーオール(OA)の値を表示しています。

ハニング窓関数は式(2)で定義されます。

  • ハニング窓関数補正値について_No.1

ハニング窓関数の平均値 w、2乗平均値2wはそれぞれ式(3)、式(4)で求める事ができ、その値は1/2、3/8です。定常的な時間軸波形に窓関数をかけると、その時間軸波形の平均値は1/2になり、2乗平均値は3/8になります。

  • ハニング窓関数補正値について_No.2
  • ハニング窓関数補正値について_No.3

窓関数をかけたあとの時間軸波形をそのままFFT(フーリエ変換)してしまうと、得られるパワースペクトルの振幅は1/2になってしまっていますので、パワースペクトルを振幅比で2倍(パワー比で4倍)して振幅を補正します。

オーバーオール(OA)は2乗平均値ですので3/8になってしまっています。振幅の補正の際に4倍していますので、振幅補正後のパワースペクトルから求めたオーバーオール(OA)の値は、本来の値の3/8 × 4 = 3/2倍になります。

このため、パワースペクトルからオーバーオール(OA)を求める場合は、スペクトルの各成分(パワー値)を合計した結果に補正値Hf = 2/3をかけるという補正をおこないます。オーバーオール補正値Hfはハニング窓関数の平均値w、2乗平均値w2から式(5)で求める事ができます。

  • ハニング窓関数補正値について_No.4

なお、この補正をせずにオーバーオール(OA)、パーシャルオーバーオール(POA)を求めてしまうと、その値は本来の値よりパワー比で1.5倍、振幅比で約1.225倍大きくなってしまいます。デシベル値の場合は約1.761 dB大きくなります。

フラットトップ窓関数補正値について

フラットトップ窓関数を使用してFFT解析すると、窓関数の影響で各周波数成分やオーバーオール(OA)の値が変化してしまいます。そのため、FFTアナライザはその影響分を補正して各周波数成分やオーバーオール(OA)の値を表示しています。

当社製品で使用しているフラットトップ窓関数は式(6)で定義されます。

  • フラットトップ窓関数補正値について_No.1

                 (0≤t≤1)

フラットトップ窓関数の平均値 w、2乗平均値w2はそれぞれ式(7)、式(8)で求める事ができ、その値は1/4.6、3.6714416356/21.16です。時間軸波形に窓関数をかけると、その時間軸波形の平均値は1 / 4.6になり、2乗平均値は3.6714416356 / 21.16になります。

  • フラットトップ窓関数補正値について_No.2
  • フラットトップ窓関数補正値について_No.3

窓関数をかけたあとの時間軸波形をそのままFFT(フーリエ変換)してしまうと、得られるパワースペクトルの振幅は1/4.6になってしまっていますので、パワースペクトルを振幅比で4.6倍(パワー比で21.16倍)して振幅を補正します。

振幅補正後のパワースペクトルから求めたオーバーオール(OA)の値は本来の値からずれてしまいますので、補正値Hf = 1/3.6714416356を掛けるという補正をおこないます。

オーバーオール補正値Hfはフラットトップ窓関数の平均値ーw、2乗平均値ーw2から式(9)で求める事ができます。

  • フラットトップ窓関数補正値について_No.4

なお、この補正をせずにオーバーオール(OA)、パーシャルオーバーオール(POA)を求めてしまうと、その値は本来の値よりパワー比で約3.667倍、振幅比で約1.918倍大きくなってしまいます。デシベル値の場合は約5.655 dB大きくなります。

まとめ

今回はFFT解析により得られたパワースペクトルからオーバーオール(OA)、パーシャルオーバーオール(POA)を計算する方法をご紹介しました。
オーバーオール(OA) は分析周波数レンジまでの、パーシャルオーバーオール(POA)は限定された周波数範囲のパワー値(2乗値)の総和です。ただ、そのまま計算してしまうとFFT分析の際にかけた窓関数の影響で大きめの値になってしまいますので、窓関数の形状によって決まる補正値をかける必要があります。

(2016年8月25日発行メールマガジンより抜粋)