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基礎からの周波数分析(23)-「振動計測の基礎-2」

今回は、前回に引き続いて振動計測の基礎についてお話します。

前回は、自由振動についてお話しましたが、今回は強制振動についてです。強制振動とは、振動系に対して外から力が加わり、強制的に振動が引き起こされる現象です。その振動系に減衰要素があっても、外から振動のエネルギーが供給されますので、永久に振動し続けます。一般に強制振動は、機械などに直接強制力が加わる場合と、機械の支持系が振動する場合があります。自動車の例で言えば、前者はエンジンの爆発振動、後者は悪路などの路面からの変位による強制振動です。ここでは、外部から力が加わった強制振動について説明します。

前回の自由振動と同じように、図1のような1自由度振動系を考えて、質点に強制的な外力f (t) が常に加わっている場合を考えます。この時、この振動系に存在する慣性力、粘性抵抗力、復元力を合わせた合力が外部の力と釣り合うことになりますから、運動方程式は、式(1)となります。

  • 図1 1自由度振動系に外力が加わった例
    図1 1自由度振動系に外力が加わった例

前回の自由振動と同じように、図2のように減衰がない場合(c = 0)について、考えると、この時の運動方程式は;

となります。

  • 図2 1自由度不減衰強制振動の例
    図2 1自由度不減衰強制振動の例

一般に外力は、いろんな周波数成分を含んだ複雑な時間信号が考えられますが、どんな波形も正弦波の合成とみなすことが出来ますので、調和加振力f(t)(正弦波関数として表せる加振力)を加えてその応答変位x(t)を調べます。振幅F、角周波数ωの調和加振力を;

で定義して、これを式(2)に代入すると;

となります。

式(4)を解くと;

  • 基礎からの周波数分析(23)-「振動計測の基礎-2」_No.1

.................................(5)

(固有角振動数)

  • 基礎からの周波数分析(23)-「振動計測の基礎-2」_No.2

(固有振動数)

.................................(6)

  • 基礎からの周波数分析(23)-「振動計測の基礎-2」_No.3

.................................(7)

式(5)から、加振力の応答変位x(t)が、式(3)の調和加振力と同じ角振動ωで振動していて、角振動数ωが固有角振動数ωnに近づくと変位の振幅はどんどん大きくなり、両者が等しくなると、その変位応答は無限大となることがわかります。この現象を共振、このときの周波数を共振点と呼びます。(現実的には、必ず減衰がありますので、無限大振幅となることはありませんが・・・)

式(5)において、/ kFXst=(静的な変位)、変位振幅をXと置くと;

  • 基礎からの周波数分析(23)-「振動計測の基礎-2」_No.4

.................................(8)

式(8)を振幅倍率(magnification factor)と呼びます。さらに、式(5)において、角振動数ωが固有角振動数ωnより大きくなると、振幅部分が負になりますので;

  • 基礎からの周波数分析(23)-「振動計測の基礎-2」_No.5

.................................(9)

と書き換えることができます。これらのことから、角振動数をDC付近から高い周波数まで掃引した時の振幅倍率と、加振力に対する応答変位の位相差のグラフは、図3のようになります。

  • 図3 1自由度不減衰系の強制振動における振幅と位相
    図3 1自由度不減衰系の強制振動における振幅と位相

図3のグラフから、共振点で、位相が不連続に180度(πラジアン)遅れる、すなわち位相が反転することがわかります。

次に、減衰系の強制振動について考えます。

式(1)に式(3)を代入して、この場合の微分方程式は;

となります。前回の減衰自由振動で出てきた減衰比ζが1より小さい時、式(10)を解くと;

  • 基礎からの周波数分析(23)-「振動計測の基礎-2」_No.6

.................................(11)

ここで;

減衰比

  • 基礎からの周波数分析(23)-「振動計測の基礎-2」_No.7

.................................(12)

減衰固有角振動数

  • 基礎からの周波数分析(23)-「振動計測の基礎-2」_No.8

.................................(13)

減衰率

式(11)の右辺第1項は、強制振動に対する応答変位を示し、第2項は、減衰自由振動で強制振動を加えた瞬間に現れて時間が経つと消滅する過渡振動です。図4は、加振力の角周波数が系の固有角振動数より小さい場合を示しています。

  • 図4 減衰系の強制振動の過渡特性(加振角振動数<固有角振動数の時)
    図4 減衰系の強制振動の過渡特性(加振角振動数<固有角振動数の時)

自由振動が消えた定常状態での応答変位は;

  • 基礎からの周波数分析(23)-「振動計測の基礎-2」_No.9

.................................(15)

この時の振幅倍率は、Xst =F/k(静的な変位)、変位振幅をXと置くと;

  • 基礎からの周波数分析(23)-「振動計測の基礎-2」_No.10

.................................(16)

また、位相角φは;

  • 基礎からの周波数分析(23)-「振動計測の基礎-2」_No.10

.................................(17)

式(16)から、加振力角振動数が固有角振動数と一致しても振幅倍率は無限大とならず、1/(2ζ)となります。(注意:この値が最大値ではない)また、式(17)から、加振力角振動数が固有角振動数と等しい時、位相遅れは90度(π/2ラジアン)であり、それより大きくなると位相遅れは180度(πラジアン)に近づいていきます。図5は、式(16)の振幅倍率と式(17)の位相遅れ(ここでは遅れを負の大きさとしている)を図示したものです。このように、両グラフとも、その形状は減衰比ζの値に依存することがわかります。

  • 図5 1自由度減衰系の強制振動における振幅と位相
    図5 1自由度減衰系の強制振動における振幅と位相

また、図6は、振幅倍率を対数表示したグラフです。

  • 図6 減衰比ζによる振幅倍率の違い
    図6 減衰比ζによる振幅倍率の違い

最後に、まとめです。

(1) 1自由度非減衰の強制振動系では、調和加振力の角振動数が固有角振動数と一致すると、応答変位が無限大となり、この状態を共振と呼びます。
(2) 1自由度非減衰の強制振動系の共振点において、加振力に対する応答変位の位相が反転します。
(3) 1自由度減衰の強制振動系の応答変位は、自由減衰振動と強制振動の応答変位振動との合成となります。
(4) 1自由度減衰の強制振動系の定常状態での応答変位の振幅特性と位相特性は、減衰比ζの値により変化します。
(5) 1自由度減衰の強制振動系の共振点付近で、加振力に対する応答変位の位相は、0度から180度へ遅れ、共振点での遅れは90度となります。

【キーワード】
自由振動、強制振動、1自由度振動系、慣性力、粘性抵抗力、復元力、調和加振力、 固有角振動数、固有振動数、共振、共振点、振幅倍率、magnification factor、減衰比、減衰固有角振動数、減衰率、過渡振動、定常状態

【参考】

  1. 「モード解析入門」長松昭男著 コロナ社(1994年)
  2. 「公害防止の技術と法規」公害防止の技術と法規編集委員会編 (社団法人)産業公害防止協会(1990年)

(2015年9月17日発行メールマガジンより抜粋)