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計測に関するよくある質問から- 第4回 「スイープ信号等による周波数応答関数の測定」

当計測コラムでは、当社お客様相談室によくお問い合わせいただくご質問をとりあげ、回答内容をご紹介しています。今回から、スイープ信号等による周波数応答関数の測定に関するトピックスをとりあげます。

固有振動周波数を測定するには、対象物を加振器で加振し、その時の振動から周波数応答関数を求める方法があります。また、フィルタ回路の周波数応答の測定でも、回路に信号を入力し、その出力信号から周波数応答関数を求めます。

今回は周波数応答関数の測定に使われる入力信号のいくつかをご紹介します。

周波数応答関数とFFT(高速フーリエ変換)

周波数応答関数は周波数の関数で複素数の値を持ちます。複素数ですので実部と虚部を持ちます。また、ゲイン(振幅)と位相であらわす事もあります。対象物に、ある周波数で振幅が1のサイン波(正弦波)を入力したとき、対象物から出力される信号の振幅が“ゲイン”です。出力信号の時間遅れ(進み)は“位相”であらわします。時間遅れがある場合、位相はマイナスの値を持ちます。

  • 図1 周波数応答関数の例
    図1 周波数応答関数の例

周波数応答関数を測定するには、対象物にある周波数のサイン波を入力し、出力される
サイン波を測定し、振幅比と位相差を測定します。入力するサイン波の周波数を変えて
同じ測定を繰り返せば、周波数応答関数が得られます。このような測定に使用する、
周波数が順々に変化していく信号をサインスイープ信号と呼びます。

複数の周波数成分を含む時間軸波形を FFT(高速フーリエ変換)すると周波数スペクトルが
得られます。広帯域の周波数成分を含む信号を入力し、出力される信号を測定し、
それぞれをFFT して周波数スペクトルを求めると、そこから周波数応答関数を求める事が
できます。このような際に使用される広帯域信号には、ランダム信号、スウェプトサイン
信号、疑似ランダム信号などがあります。理論上はこのような信号を入力しFFT 演算を
1 回おこなえば周波数応答関数が測定できますが、実際には測定精度を高めるために複数回
のFFT 演算をおこないそれらの平均から算出します。

周波数応答関数の測定につかわれる信号

周波数応答関数の測定に使われる信号のいくつかをご紹介します。とくにサインスイープ信号とスウェプトサイン信号は混同される事が多いのですが、周波数応答関数等の測定の際は明確に区別しています。

(1) サインスイープ信号(SINE SWEEP)

図 2-1 にFFT 方式での周波数応答関数測定につかわれるサインスイープ信号の例を示します。この例は周波数レンジ1 kHz、サンプル点数2048 点で、5 Hz から50 Hz までスイープしたときの波形の先頭の10 秒分です。1 kHz レンジ、2048 点の条件では1 回のFFT をおこなうのに0.8 秒のデータが必要です。解析装置は5 Hz のサイン波を0.8 秒間出力して5 Hz 成分の周波数応答関数を測定します。次に6.25 Hz のサイン波を0.8 秒間出力し、といった処理を50 Hzまで繰り返します。5 Hz から50 Hz まで1.25 Hz 刻みで37 ラインありますので、これらの計測には0.8 秒×37 で29.7 秒かかります。1 つの周波数成分について複数回のFFT 演算をおこなって平均をとる場合はその平均回数倍の時間がかかります。

サインスイープ信号を使ったFFT 方式による周波数応答関数測定には、このように長い時間が
かかります。より短い時間で測定をおこなうFRA という方式もありますが、FRA 方式は
次回以降の計測コラムで紹介します。

  • 図 2-1 サインスイープ信号の時間軸波形(一部)
    図 2-1 サインスイープ信号の時間軸波形(一部)

(2) ランダム信号(RANDOM)

乱数により発生した信号をランダム信号と呼びます。ランダム信号のうちホワイトノイズ(白色雑音)と呼ばれる信号は、長時間平均すればどの周波数成分も同じ振幅を持ちます。図2-2 に周波数レンジ1 kHz、サンプル点数2048 点のランダム信号の時間波形とスペクトルを示します。

  • 図 2-2 ランダム信号の時間軸波形とスペクトル
    図 2-2 ランダム信号の時間軸波形とスペクトル

(3) スウェプトサイン信号(SWEPT SINE)

サインスイープ信号は一般に数十秒以上かけて周波数が変化するサイン波ですが、
スウェプトサイン信号は、1 回のFFT 演算の時間長の中で0 Hz から上限周波数まで周波数が変化するサイン波です。図2-2 に周波数レンジ1 kHz、サンプル点数2048 点のスウェプトサイン信号の時間波形とスペクトルを示します。図2-2 のスウェプトサイン信号は0.8 秒の間に0 Hz から1 kHz まで周波数が変化しています。

  • 図 2-3 スウェプトサイン信号の時間軸波形とスペクトル
    図 2-3 スウェプトサイン信号の時間軸波形とスペクトル

(4) 疑似ランダム信号(PSEUDO RANDOM)

疑似ランダム信号は一見ランダムな信号ですが、振幅が等しく位相がランダムな各周波数のサイン波を足し合わせたもので、そのスペクトルは平坦です。

  • 図 2-4 疑似ランダム信号の時間軸波形とスペクトル
    図 2-4 疑似ランダム信号の時間軸波形とスペクトル

まとめ

今回は周波数応答関数の測定に使われる信号をご紹介しました。サインスイープ信号を使う測定と、広帯域信号(ランダム信号、スウェプトサイン信号、疑似ランダム信号)では、測定にかかる時間が大きく違います。また、サインスイープ信号を使う測定は設定が複雑です。そのため、次回はサインスイープ信号を使う設定・測定手順や注意点をご紹介します。

(2015年10月22日発行メールマガジンより抜粋)