今回も、前回に引き続いて振動計測の基礎についてお話します。
振動する機械や構造物から外部に振動を伝達しないようにする、または逆に外部から機械や構造物に振動を伝達しないようにする技術を一般に「防振」と呼びます。後者は、特に「除振」と呼ぶことがあります。今回は、防振技術の重要な量的パラメータである振動の伝達率についてお話しします。
振動する機械とそれを支える基礎や床との間にゴムやばねなどの弾性体を挿入した場合で、振動がどのように伝わるかを考えます。この場合は、図1にあるように1自由度減衰系のモデルと見なします。
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図1 力の基礎への伝達
前回と同様に、質点に強制的な外力である調和加振力f (t)(正弦波関数として表せる加振力)を加えてその応答変位x (t)を調べます。振幅F、角周波数の調和加振力を;
f(t)= Fcos(ωt)
とすると、この振動系に存在する慣性力、粘性抵抗力、復元力を合わせた合力が外部の力と釣り合うことになりますから、運動方程式は、式(2)となります。
この時、定常状態での応答変位は;
.................................(3)
となり、この時の振幅倍率は;
Xst=F /k(静的な変位)、変位振幅をXと置くと
.................................(4)
(固有角振動数)
.................................(5)
(減衰比)
.................................(6)
と、表すことが出来ます(前回の復習です)。
次に、振動する質量m から固定した基礎に伝わる力をfT(t) として、この力がどうなるかを調べます。基礎への伝達力は、ばねkを通しての力とダンパーcを通しての力の和となりますから;
この合力の振幅をFT として、速度x (t)の成分は変位の成分の微分だから明らかに90°進んだ力となりますので、力のベクトルの合成振幅は、Xを変位振幅として;
.................................(8)
となります。
この伝達される力と加振力Fとの比が振動伝達率Tr と呼び、式(4)を利用すると;
.................................(9)
.................................(10)
となります。式(10)からわかるように、振動伝達率は、加振角周波数と減衰比ζとの関数となりますから、減衰比をパラメータにしてグラフ化すると、図2のようになります。
横軸は、固有角振動数ωで規格化した角周波数、縦軸は振動伝達率で、両軸とも対数軸です。
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図2 振動伝達率
この図から、加振角周波数ω=√2ωnの時は、振動伝達率は、減衰比ζに関わらず1となり、ω<√2ωnの時は1より大きく、ω>√2ωnの時は、1より小さくなることがわかります。
このことから、振動物体の加振力が基礎に伝わりにくくするために、固有角振動数ωnをなるべく小さくしてかつ減衰比ζを小さくすれば良いことになります。ただし、減衰比をあまり小さくすると、共振周波数での振幅が極端に大きくなりますので注意が必要です。
次に、振動する基礎や床からそれらの上に設置した機械の振動を考えます(図3)。
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図3 基礎変位の機械への伝達
いま、基礎が変位uで振動していて、変位加振による機械の振動変位を求めます。
基礎の振動を;
u(t)= Ucos(ωt) .................................(11)
として、機械の変位をx(t)とすると、ばねとダンパーの変位は相対変位x(t)-u(t)に等しく、また、復元力と粘性抵抗力以外の力は機械に働かないので、この機械の運動方程式は;
式(12)を書き改めると;
式(13)の右辺に式(11)を代入すると右辺は;
.................................(14)
これを、式(13)の右辺に代入すると;
.................................(15)
となります。式(15)は式(2)と同じ形となり、機械の定常振動は、振幅がU√k2 +(cω)2 の加振力が作用した場合と等価となるので、その変位振幅Xは;
.................................(16)
と求められます。よって、機械の変位振幅と基礎の変位振幅の比は;
.................................(17)
となります。これを変位の振動伝達率とよび、力の振動伝達率と式の形は全く同じとなります。
この結果から、基礎の振動がなるべく機械に伝達しないようにするためには、力の伝達と同じように、
となるようにする必要があります。
最後に、まとめです。
(1) 振動する機械や構造物から外部に振動を伝達しないようにする、または逆に外部から機械や構造物に振動を伝達しないようにする技術を一般に「防振」と呼びます。
(2) 上記(1)において、後者の場合を「除振」と呼ぶこともあります。
(3) 振動機械の加振力と基礎へ伝達する力との比を振動伝達率と呼び、弾性支持による振動絶縁を評価する重要なパラメータです。
(4) 振動物体の加振力が基礎に伝わりにくくするために、固有角振動数ωnをなるべく小さくしてかつ減衰比ζを小さくすれば良いことになります。
(5) 振動する基礎からその上に装備されている機械への変位の伝達率は、上記(3)の力の振動伝達率と同じ式となります。
【キーワード】
防振、除振、弾性体、1自由度減衰系、調和加振力、慣性力、粘性抵抗力、復元力、 振幅倍率、固有角振動数、減衰比、振動伝達率、変位の振動伝達率
【参考】
- 「モード解析入門」長松昭男著 コロナ社(1994年)
- 「公害防止の技術と法規」公害防止の技術と法規編集委員会編 (社団法人)産業公害防止協会(1990年)
(2015年11月19日発行メールマガジンより抜粋)