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計測に関するよくある質問から- 第3回 「ハンマリング測定とインパルスハンマのチップ」

当計測コラムでは、当社お客様相談室によくお問い合わせいただくご質問をとりあげ、回答内容をご紹介しています。今回も引き続き、インパルスハンマを使用したハンマリング測定に関するトピックスをとりあげます。

インパルスハンマには何種類かの先端チップが付属しています。一般には高い周波数帯域まで測定したい場合は固いチップを、低い周波数を測定する場合には柔らかいチップを使います。今回はそれぞれのチップで打撃したときの時間軸波形とパワースペクトルをご紹介し、チップを使い分ける必要性について解説いたします。

インパルスハンマによる打撃力の時間軸波形とパワースペクトル

インパルスハンマによる打撃力の時間軸波形とパワースペクトル(一例)を図1、図2に示します。黄色がミディアムチップ(プラスチック)を使用した場合、赤色がスーパーソフトチップ(赤)を使用した場合です。なお、これらの波形は周波数レンジ20 kHz、サンプル点数8192点で測定し、X軸を拡大して表示しています。

打撃力の最大値はミディアムチップ(プラスチック)が約96 N、スーパーソフトチップ(赤)が約29 Nで、固いチップを使用したほうが大きな力が加わることが分かります。パワースペクトルからは、ミディアムチップ(プラスチック)では約1100 Hzまで、スーパーソフトチップ(赤)では約290 Hzまで周波数成分がのびている事がわかります。

  • 図1 インパルスハンマによる打撃力の時間軸波形 <黄: ミディアムチップ(プラスチック)、赤: スーパーソフトチップ(赤)>
    図1 インパルスハンマによる打撃力の時間軸波形<黄: ミディアムチップ(プラスチック)、赤: スーパーソフトチップ(赤)>
  • 図2 インパルスハンマによる打撃力のパワースペクトル <黄: ミディアムチップ(プラスチック)、赤: スーパーソフトチップ(赤)>
    図2 インパルスハンマによる打撃力のパワースペクトル<黄: ミディアムチップ(プラスチック)、赤: スーパーソフトチップ(赤)>

打撃力の時間軸波形と周波数帯域

ハンマリングにより周波数応答関数や固有振動数を測定する際は、測定する周波数帯域に合わせてインパルスハンマのチップを選択します。同じチップを使用しても対象物の材質等により打撃力のパワースペクトルは変わってきますので、実際に対象物を打撃し、打撃力のパワースペクトルやコヒーレンス関数、周波数応答関数をみて確認します。測定したい周波数帯域まで打撃力のパワースペクトルが伸びていない場合や、コヒーレンス関数が低い場合はチップをより固いものに変更して試します。

逆に必要以上に高い周波数までのびている場合、高い周波数成分の影響で測定したい帯域のS/Nが悪くなり、また、次に述べる理由でトリガー検出レベルの調整が難しくなるので、柔らかいチップを使用します。

FFTアナライザでは、周波数レンジを下げると時間軸波形に含まれる周波数レンジより高い周波数成分をカットするローパスフィルタがかかります。そのため、高い周波数成分が含まれている時間軸波形を低い周波数レンジで測定すると、見かけ上時間軸波形の高さが小さくなります。

図3、図4にミディアムチップ(プラスチック)、スーパーソフトチップ(赤)を使用したときの打撃力時間軸波形にローパスフィルタをかけた波形を示します。

ミディアムチップ(プラスチック)の時間軸波形(図3)の最大値は、元波形が96.1 N、2000 Hzのものが95.6 N、500 Hzが64.9 N、200 Hzが29.1 Nであり、ローパスフィルタをかける(高い周波数成分をカットする)と振幅が小さくなることが分かります。このため、このような打撃力により測定をおこなうと測定結果のS/Nが悪くなります。また、振幅が小さくなるため周波数レンジを変えるたびにトリガー検出レベルを再調整する必要があります。

スーパーソフトチップ(赤)の時間軸波形(図4)の最大値は、元波形が28.8 N、2000 Hzのものが28.8 N、500 Hzが29.2 N、200 Hzが26.0 Nでした。もともと約290 Hzまでしか周波数成分がないためローパスフィルタをかけても振幅は変化しません。そのため、周波数レンジを変えてもトリガー検出レベルを再調整する必要がありません。

  • 図3 ミディアムチップ(プラスチック)使用時の打撃力時間軸波形
    図3 ミディアムチップ(プラスチック)使用時の打撃力時間軸波形
  • 図4 スーパーソフトチップ(赤)使用時の打撃力時間軸波形
    図4 スーパーソフトチップ(赤)使用時の打撃力時間軸波形

まとめ

今回は、固さの違う2種類のチップ(ミディアムチップ、スーパーソフトチップ)を使用したときのインパルスハンマによる打撃力の時間軸波形とパワースペクトル、および、それらにローパスフィルタをかけたときの時間波形をご紹介しました。
低い周波数帯域の測定をする際に、固いチップを使用してしまうと、測定結果のS/Nが悪くなり、また、トリガー検出レベルの調整が難しくなりますので、測定する周波数帯域に合わせたチップを選択することが重要になります。

(2015年8月27日発行メールマガジンより抜粋)