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基礎からの周波数分析(6)-「フーリエ変換と畳み込み」

今回は、時間と周波数の間の関係を表現するフーリエ変換の重要な性質の1つである「畳み込み」に関してお話しします。

時間信号x(t)とh(t)との畳み込み(convolution)は2つの関数の積和演算で、式(1)で定義されます。また、積分で表現するので、畳み込み積分(convolution integral)とも呼ばれます。

  • 基礎からの周波数分析(6)-「フーリエ変換と畳み込み」_No.1

           =x(t)*h(t)

式(2)は、式(1)の積分を簡素化して表現した形です。

畳み込みの具体的な例として、フィルタなどの電気回路のような線形系(図1)において、x(t)を入力時間信号、h(t)をその系の特性を表す時間関数とすると、系の出力は式(1)のy(t)となります。

  • 図1 線形系
    図1 線形系
  • 図2 線形系に信号を入力した場合
    図2 線形系に信号を入力した場合

ここで、系の特性h(t)が図2のような関数の系に、ステップ1の信号x(t)を入力した場合に、出力y(t)がどうなるか調べてみます。

  • 図3 畳み込み積分の手順の説明(上図は、t = t’のときの図)
    図3 畳み込み積分の手順の説明(上図は、t = t’のときの図)

畳み込み積分式(1)の手順は、h(τ)の時間軸を折り返して(図a)、それを時間軸の正方向へ推移させて(図b)、x(τ)と乗算をして(図c)、積分を行うことにより、最終的に図3の(d)が出力y(t)となります。

実際に式(1)から計算してみると;

  • 基礎からの周波数分析(6)-「フーリエ変換と畳み込み」_No.2

となることが分かります。

また、説明は省略しますが、式(1)でx(t)とh(t)を交換した計算式でも同様な結果となります。

すなわち;

  • 基礎からの周波数分析(6)-「フーリエ変換と畳み込み」_No.3
  • 基礎からの周波数分析(6)-「フーリエ変換と畳み込み」_No.4

次に、図1の線形系に単位インパルス関数(前回出てきたデルタ関数)を入力した場合を考えます。

式(4)において、x(t)にデルタ関数δ(t)を代入して、デルタ関数の性質と偶関数であることを利用して;

  • 基礎からの周波数分析(6)-「フーリエ変換と畳み込み」_No.5

;と、出力信号y(t)はh(t)そのものとなります。

図1の線形系におけるh(t)は、系に単位インパルス関数を入力した出力ですので、インパルス応答と呼ばれます。

この畳み込みとフーリエ変換との最も重要な関係について述べます。

  • 図4 線形系における時間関数とそのフーリエ変換
    図4 線形系における時間関数とそのフーリエ変換

図4のように、時間関数x(t)、h(t)、y(t)のフーリエ変換をそれぞれX(f)、H(f)、Y(f)とします。時間軸上で畳み込みの関係のある関数は、周波数軸上でどのような関係となるか考えてみましょう。

式(1)の両辺をフーリエ変換すると;

  • 基礎からの周波数分析(6)-「フーリエ変換と畳み込み」_No.6
  • 基礎からの周波数分析(6)-「フーリエ変換と畳み込み」_No.7

時間関数h(t)を-τだけ時間推移した関数のフーリエ変換は、元の関数のフーリエ変換とe-j2πftとの積に等しいので、[ ]内はe-j2πftH(f)とおけるので、式(8)は;

  • 基礎からの周波数分析(6)-「フーリエ変換と畳み込み」_No.8

2つの関数x(t)とh(t)の畳み込みy(t)のフーリエ変換は、元の関数のフーリエ変換の積に等しくなります。この関係を畳み込み定理(convolution theorem)と呼びます。逆も成り立ちますので、でフーリエ変換と逆フーリエ変換を表すとすると、式(10)のようなフーリエ変換対となります。

      x(t)*h(t)=X(f)H(f)

後述することになりますが、FFTアナライザではこの関係を利用して、周波数応答関数やインパルス応答などを算出しています。

全く同様にして、周波数軸上での2つの関数の畳み込みの逆フーリエ変換は、元の時間関数の積に等しくなります。式(10)と同じ表記をすると;

      x(t)*h(t)=X(f)*H(f)

これは、フーリエ変換演算の対称性により、明らかでしょう。式(11)を、周波数畳み込み定理(frequency convolution theorem)と呼ぶことがあります。

この関係は、FFTアナライザにおける窓関数などの説明において重要な定理です。

最後に、式(11)において、2つの時間関数を両方ともx(t)とおくと、左側はx2(t)のフーリエ変換となるので、新変数をkとすると;

  • 基礎からの周波数分析(6)-「フーリエ変換と畳み込み」_No.9

となります。ここで、k = 0とおくと、結局;

  • 基礎からの周波数分析(6)-「フーリエ変換と畳み込み」_No.10

の関係が得られます。この関係をパーセバルの定理(Parseval’s theorem)と呼びます。式(13)の物理的な意味は、時間軸上の全エネルギーは、周波軸上の全エネルギーに等しいという当たり前のことを言っています。その意味で、|x(f)|2 fXはエネルギースペクトルと呼ぶことができます。

最後に、まとめです。
  1. 2つの時間関数の畳み込み積分は、式(1)または式(3)で定義されます。
  2. インパルス応答h(t)の線形系にx(t)を入力すると、その出力はh(t)とx(t)との畳み込みとなります。
  3. 2つの関数x(t)とh(t)の畳み込みy(t)のフーリエ変換は、元の関数のフーリエ変換の積に等しくなります。[畳み込み定理(式(10))]
  4. 周波数軸上での2つの関数の畳み込みの逆フーリエ変換は、元の時間関数の積に等しくなります。[周波数畳み込み定理(式(11))]
  5. 時間軸上の全エネルギーは、周波軸上の全エネルギーに等しくなります。 [パーセバルの定理(式(13))]

【キーワード】
畳み込み(convolution)、畳み込み積分(convolution integral)、線形系、単位インパルス関数、デルタ関数、インパルス応答、畳み込み定理(convolution theorem)、周波数畳み込み定理(frequency convolution theorem)、パーセバルの定理(Parseval’s theorem)、エネルギースペクトル

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【参考資料】
  1. 「スペクトル解析」日野幹雄著 朝倉書店
  2. 「高速フーリエ変換」E. ORAN BRIGHAM著 科学技術出版社
  3. 「フーリエ解析」H.P.スウ著 佐藤平八訳 森北出版

(2012年11月15日発行メールマガジンより抜粋)