今回は、フーリエ変換についてお話しします。
前回お話しした「フーリエ級数展開」では、時間波形は周期 T の周期関数であることを仮定していました。それでは、全く周期性のない連続的に続く信号や過渡的な信号ではどのようにその信号の周波数成分を求めたらよいのでしょうか?
フーリエ級数における周期 T に関する数値的な制限はないので、周期性が無いすなわち周期 T が無限大にまでなった場合を考えます。
前回説明した複素フーリエ級数からはじめます。時間関数 x(t)の周期を T とすると;
.................................(1)
.................................(2)
式(2)の c n は周波数間隔が 1/T で離散的になるので;
.................................(3)
とおいて、この記号を式(1)と式(2)とに代入して、T を無限大にしていくと;
.................................(4)
ここで、T→ ∞ とすると、Δf→ df、f n→ f として、結局;
.................................(5)
となります。ここに;
.................................(6)
式(6)が非周期的時間関数x(t)からその周波数スペクトルX(f)を求める式で、フーリエ変換(またはフーリエ積分)呼びます。逆に、スペクトルX(f)から元の時間信号x(t)を求める式が式(5)で逆フーリエ変換と呼びます。X(f)は明らかに複素数となりますので、複素フーリエスペクトルと呼ばれます。
この式(5)、式(6)は無限大の積分となっており、積分値が有限となるかどうかが問題となります。数学的な厳密な内容は省略しますが、時間信号 x(t)が下記の条件式(7)を満たせば、式(5)と式(6)とも有限値となります。
.................................(7)
この性質をx(t)は絶対可積分であるといいます。直感的に言えば、式(7)は正弦波やランダム波のように連続的で無限に続く時間波形は成り立たず、単発のパルス波などのような過渡的な信号には成り立つことになります。
さて、フーリエ級数式(2)とフーリエ変換式(6)を比べてみると、式(2)のc nは明らかに基本周波数 1/T及びその整数倍の波数成分だけを持つ線スペクトルとなりますが、式(6)の複素フーリエスペクトルX(f)は連続スペクトルとなります。
具体例として、図 1 のパルス波形のフーリエ変換を求めます。
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図 1 パルス波形
この時間波形は明らかに式(7)を満たすので;
.........................(8)
となります(図 2)。
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図 2 パルス波形のフーリエ変換
式(8)の右辺で、あえて分母分子にあるbを約さずに、sin x/x の形となるように記してあり
ます。この形の関数をSinc関数と呼び、信号処理の分野ではしばしば登場します。
次に、図 3 のように、図 1 のパルス波形が周期 T で繰り返す周期時間波形を考えます。
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図 3 パルス波形
そして、この波形のフーリエ級数展開を計算します。基本周波数を f 0 とすると、f0= 1/T
だから;
.........................(9)
さて、式(8)と式(9)を比べますと、定数 1/T を除いて、明らかに c n は X(f)に nf 0 を代入したものに等しいことが分かります。すなわち;
.......................(10)
の関係となります。
図 4 は、複素フーリエ係数 c n のグラフに係数 1/T を無視して複素フーリエスペクトル X(f)を重ね書きしたグラフです。
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図 4 周期的なパルス波形のフーリエ級数展開
最後に、まとめです。
- フーリエ変換は過渡的な信号のような非周期的な信号に適用する。
- フーリエ変換したそのスペクトルは無限に続く連続スペクトルである。それに対して、フーリエ級数展開したフーリエ級数は線スペクトルとなる。
- フーリエ係数の縦軸の単位は、その信号の物理量そのものとなるが、フーリエスペクトルの縦軸の単位は、その信号の物理量と時間を掛けたものとなる。
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【参考資料】
- 「信号処理」森下巌、小畑秀文共著 計測自動制御学会
- 「スペクトル解析」日野幹雄著 朝倉書店
- 「高速フーリエ変換」E. ORAN BRIGHAM 著 科学技術出版社
(2012年7月20日発行メールマガジンより抜粋)