音波は、毎秒約340 mの速さで伝わる波動現象です。我々は、空気中を伝わる波動を耳によって聞いています。この波動は、空気の大気圧の圧力変動(交流的な圧力変化)が連続的に生じることによって発生します。
騒音計(サウンドレベルメーター)は、音圧レベルを測定できる測定器です。騒音計のマイクロホンはこの圧力(瞬時音圧)の変動を電気信号に変換します。騒音計本体ではこの瞬時音圧を基にいくつかの演算処理をおこなって、音圧レベルを算出しています。
今回の計測コラムは、騒音計のサウンドレコーディング機能によりWAVEファイルを収録し、そこからMicrosoft Excelにて騒音レベル(A特性音圧レベル)を算出した事例をご紹介します。これにより、騒音計の内部でおこなわれている演算処理や、騒音計の仕組みについてご理解が深まればと思います。
測定システム例
- ONO SOKKI LA-3560 精密騒音計
(構成:LA-0354 サウンドレコーディング機能) - ONO SOKKI 時系列データ解析ツール Oscope 2
(構成:OS-2600 スタンダード) - Microsoft Office Excel 2003
「コーヒー缶(空き缶)」の打撃音の測定
図1に「コーヒー缶(空き缶)」の打撃音からA特性音圧レベルを算出するエクセルファイル(emm131-can.xls)の一部を示します。
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図1 「コーヒー缶(空き缶)」の打撃音からのA特性音圧レベルの算出
A列、B列は、騒音計LA-3560のサウンドレコーディング機能により収録したWAVEファイルから、Oscope2を使用して1秒分のデータをCSVファイルにエクスポートし、エクセルに読み込んだデータです。A列が時刻、B列が瞬時音圧[Pa]です。
C列のデータ(瞬時音圧(A))は、B列のデータ(瞬時音圧)にA特性フィルタをかけたものです。C列にはA特性フィルタ(6次のIIRフィルタ)を計算する数式が入力されています。例えばC15セルには次のような数式が入力されています。
=($J$14*B15+$J$13*B14+$J$12*B13+$J$11*B12+$J$10*B11+$J$9*B10+$J$8*B9)-
($H$13*C14+$H$12*C13+$H$11*C12+$H$10*C11+$H$9*C10+$H$8*C9)
D列のデータ(瞬時音圧(A)の2乗値)は、C列のデータを2乗した値です。
E列では、動特性(Fast; 125ms, Slow: 1sなど)を適用し、動特性回路(抵抗とコンデンサによる平滑化回路)に相当する演算をおこなって2乗平均値[Pa2](実効値の2乗値)を求めています。この結果の値は音圧の2乗値に相当します。例えばE15セルには次のような数式が入力されています。
=E14+$H$6*(D15-E14)
ここで、$H$6セルの値はh0という定数で、h0の値はサンプリング周波数と動特性(時定数)で決まります。
F列のデータ(A特性音圧レベル)は、音圧の2乗値から音圧レベル[dB]を求めたものです。この際、基準となる音圧レベルはP0 = 20μPaを使用します。
図2、図3に瞬時音圧、瞬時音圧(A特性)とA特性音圧レベルのグラフを示します。グラフの横軸は1秒です。図2は動特性Fast(125 ms)のもの、図3は動特性10 msのものです。
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図2 「コーヒー缶(空き缶)」の瞬時音圧、瞬時音圧(A特性)、A特性音圧レベル(動特性Fast)
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図3 「コーヒー缶(空き缶)」の瞬時音圧、瞬時音圧(A特性)、A特性音圧レベル(動特性10 ms)
最大音圧レベルは、動特性Fast(125 ms)のものでは79.6 dBですが、動特性10 msでは87.4 dBと動特性(時定数)が短い方が大きくなります。これは時定数が長いと急激な変化が平滑化されてしまうためです。一般に衝撃音の大きさを最大音圧レベルで評価する場合、動特性をかえると測定結果も変化してしまうため、同一条件で比較する必要があります。
打撃音の発生後0.3秒経過した時点の音圧レベルは、動特性Fast(125 ms)のものでは71.8 dB、動特性10 msでは44.8 dBと、動特性が短い方が音圧レベルの減衰が大きいことがわかります。
「ニュートンのゆりかご」の動作音の測定
図4にニュートンのゆりかごと呼ばれる科学玩具(重り5個からなる振り子)の動作音からA特性音圧レベルを算出するエクセルファイル(emm131-furiko.xls)の一部を示します。
A列、B列はOscope2を使用し、騒音計LA-3560のサウンドレコーディング機能により収録したWAVEファイル(ンプリング周波数64 kHz)から2.5秒分のデータを読み込み、サンプリング周波数25.6 kHzにリサンプルしたのち、CSVファイルにエクスポートしたデータを、エクセルに読み込んだデータです。A列が時刻、B列が瞬時音圧[Pa]です。
以降の処理は、コーヒー缶(空き缶)の打撃音の場合と同じですが、サンプリング周波数が異なるため、A特性フィルタの係数が異なっています。
図5、図6に瞬時音圧、瞬時音圧(A特性)とA特性音圧レベルのグラフを示します。グラフの横軸の長さは2.5秒に相当します。図5は動特性Fast(125 ms)のもの、図6は動特性10 msのものです。振り子の周期は約0.78秒ですが、1周期の間に右から衝突した際と左からの際の2回、衝突するため、約0.39秒間隔で衝突音が発生しています。
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図5 「ニュートンのゆりかご」の瞬時音圧、瞬時音圧(A特性)、A特性音圧レベル(動特性Fast)
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図6 「ニュートンのゆりかご」の瞬時音圧、瞬時音圧(A特性)、A特性音圧レベル(動特性10 ms)
まとめ
今回ご紹介したような測定は、騒音計(一部の機種を除く)や、リアルタイムオクターブ解析ソフトウェアを使えば簡単に測定する事ができますが、今回ご紹介したような演算処理をおこなえば、瞬時音圧データからも算出が可能です。
なお、エクセルによる演算方法は簡易的なものになります。JIS C 1509や計量法に定められた騒音計には適合しておりません。また、これらに定められた精度を満たしている保証はありませんのでご了解ください。
今回使用した音データ(mp3ファイル)、並びにエクセルファイルは、下記よりダウンロードいただけます。
(2012年8月23日発行メールマガジンより抜粋)