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基礎からの周波数分析(2)-「フーリエ級数展開」

信号処理の基本的技術はフーリエ変換ですが、今回はその基礎となる周期関数のフーリエ級数展開の話しをします。

フーリエ級数を初めて考えたのは、その名の通りナポレオン時代のフランスの数学者・物理学者であるジョゼフ・フーリエです。彼は、19 世紀の初め頃、固体内での熱伝導に関して熱伝導方程式を導き、その微分方程式を解くために考え出したと言われています。

フーリエの基本的な考えは、「どのような複雑な周期時間関数でも、その基本周波数およびその整数倍の周波数の三角関数(正弦波、余弦波)の和で表すことが出来る」という大胆なものでした。当時のフランス数学会の大御所ラグランジュさえこの考えに反対して論文の投稿を拒否したほどだそうです。現在では、電磁気、光学、音響振動、通信、画像処理、量子力学などの物理や工学のみならず経済学にも欠くことの出来ない基礎技術となっています。

x(t)を周期 T の周期関数とすると、その基本周波数 f 0 と基本角周波数 ω0 ;

  • 基礎からの周波数分析(2)-「フーリエ級数展開」_No.1

.................................(1)

x(t)のフーリエ級数展開は;

  • 基礎からの周波数分析(2)-「フーリエ級数展開」_No.2

.................................(2)

  • 基礎からの周波数分析(2)-「フーリエ級数展開」_No.3

.................................(3)

  • 基礎からの周波数分析(2)-「フーリエ級数展開」_No.4

と表されます。ここで、本当に式(2)の両辺が等しくなるかの疑問がありますが、我々が取り扱う通常の時間信号では nまでとすることにより、x(t)に一致させることができることが証明されています。

さて次には、式(2)の右辺の係数 an bn とをどのように求めるかになりますが、これは三角関数の直交性により、簡単に計算できます。

三角関数の直交性とは n m を任意の整数とすると;

  • 基礎からの周波数分析(2)-「フーリエ級数展開」_No.5

.................................(4)

  • 基礎からの周波数分析(2)-「フーリエ級数展開」_No.6

.................................(5)

が成り立つことです。

式(2)の両辺にcosnω0tとsinnω0tを掛けてそれぞれ周期Tで積分して;

  • 基礎からの周波数分析(2)-「フーリエ級数展開」_No.7

.................................(6)

  • 基礎からの周波数分析(2)-「フーリエ級数展開」_No.8

.................................(7)

  • 基礎からの周波数分析(2)-「フーリエ級数展開」_No.9

.................................(8)

(2)(あるいは式(3))を周期関数 x(t)のフーリエ級数展開、an bn をそのフーリエ係数と呼びます。

さて、式(2)は正弦波と余弦波の両方を含み、また三角関数の計算は結構面倒なので、複素指数表現に変形して使うことが多いです。

前回説明したオイラーの公式より;

  • 基礎からの周波数分析(2)-「フーリエ級数展開」_No.10

.................................(9)

を式(2)に代入すると;

  • 基礎からの周波数分析(2)-「フーリエ級数展開」_No.11

....(10)

ここで、多少形式的ですが;

  • 基礎からの周波数分析(2)-「フーリエ級数展開」_No.12

...............................(11)

おくと、式(10)は;

  • 基礎からの周波数分析(2)-「フーリエ級数展開」_No.13


...............................(12)

と、非常に簡潔に表現出来ます。
また、ejnω0t三角関数と同じように直交性の性質を有しますので、式(12)の両辺にe-jnω0tを掛けて周期 T で積分することにより;

  • 基礎からの周波数分析(2)-「フーリエ級数展開」_No.14

n=0、±1、±2、

...............................(13)

ここで、式(12)を複素フーリエ級数展開、式(13)の c n を複素フーリエ係数と呼びます。また、c n と c- n とはお互いに複素共役の関係にあります。

フーリエ級数展開式の意味するところですが、式(2)は式(3)に変形できるので、明らかに基本角周波数 ω0 とその整数倍の角周波数 nω0 からなる余弦波の合成ですが、式(12)はそれほど直感的ではありません。

式(12)において、複素指数関数ejnω0tは角周波数nω0で原点の回りを正の方向(反時計回り)に回転するベクトル、同じくe-jnω0tは角周波数 nω0 で原点の回りを負の方向(時計回り)に回転するベクトルを表しています。また、c n と c- n とはそれぞれ、正方向に回転するベクトルと負方向に回転するベクトルの初期ベクトル(時間軸 t = 0)を意味します。

この正方向と負方向のベクトルは実数軸に関して対称ですからその合成ベクトルは必ず実
数軸にのみ存在するすなわち実数の三角関数となります。式(12)の右辺 x(t)は、その合
成ベクトルの和を意味しています。負方向の回転ベクトルは負の周波数成分を表していて、
負の周波数成分の存在を許すことにより、実数の時間波形を複素数で表現していることに
なります。このことは、実数である正弦波と余弦波を表現する式(9)のオイラーの公式で
も明らかでしょう。

  • 図 1 複素フーリエ級数の図形的な意味合い 
    図 1 複素フーリエ級数の図形的な意味合い 

フーリエ級数展開は、通常の時間関数を周波数成分に分けるすなわち時間領域表現を周波
数領域表現に変換することですので、両表現とも同じ情報を含んでいます。ここで、式(2)
の両辺を 2 乗して周期 T で平均をとると;

  • 基礎からの周波数分析(2)-「フーリエ級数展開」_No.15

(14)

先ほどと同じく直交性の性質から、右辺は簡単に計算できて;

  • 基礎からの周波数分析(2)-「フーリエ級数展開」_No.16

................................... (15)

となります。この時間軸上と周波数軸上との関係式を一般にパーセバルの定理と呼ばれます。

式(15)の物理的な意味合いは、左辺は 2 乗平均値、右辺は周波数成分毎の係数の 2 乗値
(これをパワーと呼ぶ)の合成和です。FFT アナライザでは、右辺は分析されたパワー
スペクトルのオーバーオール値(パワー合計値)を意味していて(もちろん n の値は
有限となりますが)、パワースペクトルのオーバーオール値は元の時間波形の 2 乗平均
値(実効値の 2 乗)に等しいことを表しています。

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【参考資料】

  1. 「信号処理」森下巌、小畑秀文共著 計測自動制御学会
  2. 「スペクトル解析」日野幹雄著 朝倉書店

(2012年3月23日発行メールマガジンより抜粋)