今月は、身近な機器の測定事例として、携帯電話のバイブレーション機能の振動計測事例をご紹介します。
振動計測用に加速度検出器や測定器を設置したときや、それらに不具合が発生したときの動作確認・調査の際、測定対象物があれば良いのですが、用意できなかったり、あっても運転できない事がしばしばあります。加振器や振動校正器があれば正確な動作確認ができるのですが、ない場合は、加速度検出器を振ってみる、検出器の近くを叩いてみる、といった方法をとっている方が多いのではないかと思います。
こういった場合、携帯電話があれば、そのバイブレータを利用する事ができます。もちろん、校正用途や精度の確認には使用できませんが、振る・叩くといった方法に比べると安定した振動を発生させる事ができますので、簡単な動作確認用途であれば使用可能です。そのほかにも携帯電話のバイブレータは、振動計測器のトレーニングの題材や、複数の検出器や測定器の比較検証用途などにも利用する事ができます
今回は、このような用途の参考になればと思い、携帯電話のバイブレーション振動計測事例を紹介します。
測定システム例
- ONO SOKKI NP-3211プリアンプ内蔵型加速度検出器
- ONO SOKKI DS-3000シリーズデータステーション
- ONO SOKKI DS-0321 FFT解析機能(ソフトウェア)
- パソコン
測定方法
- 携帯電話を折りたたんだタオルの上に置きます。
- 携帯電話の背面・中央に両面テープまたはワックスで、加速度検出器を固定します。
- 携帯電話に電話をかけ、着信時のバイブレータの振動を計測します。
両面テープ・ワックスが、携帯電話ケースに与える影響が心配の方は、古い携帯電話機をご用意ください。
測定条件
- 周波数レンジ:4kHz
- サンプル点数:2048点
- 電圧レンジ:31.6mVrms
測定結果-1
単位・校正をおこなう前の、電圧値表示のままの時間軸波形を図1に示します。加速度検出器NP-3211の感度は1 mV /(m/s2)ですので、9.15 mV(0-peak、片振幅)は、9.15 m/s2に相当します。
-
図1: 測定結果1 -時間軸波形(電圧値)-
測定結果-2
単位・校正をおこない、加速度値(m/s2)表示の時間軸波形とパワースペクトルを図2に示します。時間軸波形のピーク値は9.90 m/s2(0-peak、片振幅)、実効値は6.45 m/s2でした。Overallは16.2 dB、6.46 m/s2(rms、実効値)で、時間軸波形の実効値とほぼ一致します。また、時間軸波形は正弦波から若干ひずんでいますので、パワースペクトルのピーク値(220 Hz)はOverall値より若干小さくなっています。なお、dB値は1 m/s2を基準値とした値です。
-
図2: 測定結果2 -時間軸波形とパワースペクトル(加速度値)-
図3は、一重積分・二重積分をおこなった、速度値・変位値のパワースペクトルです。積分の影響でピークの位置は215 Hzに移動していますが、速度値 = 加速度値/2πf、変位値 = 速度値/2πf、ここでf = 215 Hzの関係がほぼ成り立っている事がわかります
-
図3: 測定結果2 -時間軸波形とパワースペクトル(加速度値)-
測定結果-3
加速度検出器の質量による影響を調べるため、質量の異なる2つの加速度検出器により振動加速度を測定しました。NP-3130は、携帯電話のうちバイブレータにより振動している部位の質量に比べ、無視できないために、振動加速度が非常に小さくなっているのがわかります。
| 型名 | 感度 | 質量 | 加速度値(実効値) |
| NP-3211 | 1.02 mV/(m/s²) ±15% | 0.5 g | 6.34 m/s² |
| NP-3130 | 10 mV/(m/s²) ±1 dB | 46 g | 0.699 m/s² |
以上のように、携帯電話のバイブレータを使えば、振動に関する基本的な現象(時間軸波形とスペクトルの関係、振動加速度・速度・変位の関係)などを確認する事ができます。他方、振幅は検出器の質量の影響を受けますし、今回は確認できませんでしたが、携帯電話の機種や個体による差もあると思われますので、精密な確認用途には使えませんが、一度、お持ちの携帯電話の振動を測定しておくと、役に立つ事があるかもしれません。
(2012年2月23日発行メールマガジンより抜粋)