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音の測定の基礎 - 第15回「残響理論と残響時間の測定」その1 - 拡散音場 -

今回から、数回に分けて「残響理論と残響時間の測定」というテーマを扱いたいと思います。

残響時間は、室内の音場の特徴を表す最も基本的な量で、直接的に室の響きを示す場合に限らず、材料の吸音率(残響室法吸音率)や、音響透過損失(残響室 - 残響室法)などの材料の音響性能算出する場合にも計測される重要な物理量です。

前回、直方体室の固有振動周波数の求め方を示しました。寸法比によっては、同じ周波数に固有振動が重なるケースが多くなることがありますが、これを縮退しているといい、室内音響としては好ましくない現象です。このような縮退がなく、分布が一様で、音の減衰過程においても一定の減衰を示す残響室のような音場を、拡散音場といいます。残響理論は、拡散音場を前提としています。

拡散音場の定義としては、

  1. 音響エネルギー密度が均一であること
  2. 音響エネルギーの流れがすべての点ですべての方向に等確率であること

となり、残響理論を展開する上で重要な前提条件となっています。音響エネルギーについては、第 11 回に以下のように説明しました。

「空気中を伝搬する音は、エネルギーの流れと考えることができ、このエネルギーを音響エネルギーといいます。この音響エネルギーを表す量として、ある面を単位時間に通過する音響エネルギーを考え、これを“音響パワー”P(W)と呼びます。音響インテンシティ”I(W/m2)または音の強さは、いわば、単位面積を通過するパワーといえます。」

音響エネルギー密度は、平面波では、単位面積を 1 秒間に流れるエネルギー I(音響インテンシティ)が、距離 c(m)の間に存在することになるので、その空間の音のエネルギー密度は、E = I/c(W/m3) c:音速 となります。

しかし、拡散音場の場合、音響エネルギーはあらゆる方向に伝搬するので、平面波のように単純ではありません。次図1を用いながら、拡散音場における音響エネルギー密度を求めてみましょう。

 

  • 図 1 拡散音場から壁への入射
    図 1 拡散音場から壁への入射

拡散音場における音響エネルギー密度を E とし、壁の一部分 dS から距離 r の点を含む微小
容積 dV に含まれるエネルギーEdV のうち dS に入射するエネルギーをΔIdS とします。
図1において、dV から見た dS の実効面積は d S cosθですから、

  • 音の測定の基礎 - 第15回「残響理論と残響時間の測定」その1 - 拡散音場 -_No.1

.................................(1)

となり、1秒間に dS に入射する全エネルギー Ei は、dS を中心として 1 秒間に音が伝搬
する距離 c を半径とする半径内にあるすべての dV について、これを積分して求めます。

dS を中心とする dV の極座標を r、θ、ψとすれば、

  • 音の測定の基礎 - 第15回「残響理論と残響時間の測定」その1 - 拡散音場 -_No.2

.................................(2)

これによって、音響エネルギー密度 E の拡散音場の周壁の単位面積( 1 m2) に、1 秒間に入射する音響エネルギーは、

  • 音の測定の基礎 - 第15回「残響理論と残響時間の測定」その1 - 拡散音場 -_No.3

(ただし、c:音速)

.................................(3)

となります。この拡散音場における音響エネルギー密度を用いて、室内の全周壁に入射するエネルギーと吸音されるエネルギーの平衡式から、残響時間の理論式が求まりますが、その算出プロセスについては次回説明したいと思います。

(2010年6月17日発行メールマガジンより抜粋)