前回は、音響パワーレベルと室内音圧レベルの関係式を用い、具体的に室内のある点にお
ける音圧を求めるプロセスを示しました。その最後に触れたように、吸音材が偏在したり、
音源、受音点に近い場所に反射物があるような場合は、拡散音場を満足せず、呈示した式
による結果と差が生じます。
また、直方体室の場合、室表面が剛であっても、奥行き・幅・高さの寸法比によって決定
される室の固有振動周波数においては、それに近い純音成分があれば、定在波が生じて室
の拡散性がくずれ、前回示した拡散音場前提の計算式が成り立たなくなります。
今回は、室の寸法比と固有周波数の関係を 2 つスケールの異なる室を例にとって計算して
みることにします。
直方体室の固有振動周波数は下記で表されます。
.................................(1)
ここで nx、ny、nzの任意の組み合わせに対し固有周波数が存在しますから、その数は無数にありますが、その組合せによって 3 種類に分類されます。
- 1次元モード(axial mode)
nx、ny、nzのうち 2 個が 0 にあるもの。1 本の軸に平行な波であるから軸波とよび
ます。 - 2次元モード(tangential mode)
3 個の n のうち1個が 0 になるもの。1対の平行壁面に平行で、他の 2 対の壁面に
斜めに入射する波で、接線波とよびます。 - 3 次元モード(oblique mode)
3 個の n がいずれも 0 でないもの。すべて斜めに入射する波で斜め波とよびます。
表 1 計算に用いた2つの直方体室 単位(m)
| 幅 | 奥行き | 高さ | 想定される室 | |
| 直方体室A |
2.0 |
3.0 |
1.5 |
自動車内程度の広さの室 |
| 直方体室B |
8.0 |
11.0 |
5.0 |
50人程度収容できる小さなホール |
表1に示す 2 室を例に、固有振動周波数の試算しますと、次頁の図 2 のような分布を示します。
直方体室 A は、自動車の室内程度の広さを想定した室ですが、100Hz 以下には固有周波数は2つしかなく、いずれも 1 次モードの軸波で、最低周波数が 57Hz、もう一つは 85Hz です。奥行きと高さの寸法比を 2:1、また、奥行きと幅の寸法比を 3:2 にしたため、例えば、図 2に示す低い順の固有振動周波数の no.7 と no.8 や no.11 と no.12 など一致する周波数が頻出することになります。室内の設計において固有振動周波数はできる限り分散させることが望ましく、このような単純な寸法比で構成させる室の設計は避けなければなりません。
直方体室 B は、50 人程度収容する小ホールを想定した室ですが、直方体室 A と比べると容積比で約 50 倍、寸法比で約 3.7 倍です。固有振動周波数の最低周波数は、15Hz で 100Hz 以下に 66 個の固有周波数があります。(リストにある 50 番目の固有周波数86Hz)no.29~no.32 まで 71Hz の組合せが4つ並んでいます。前後にも隣接した周波数に固有振動があり、71Hz を中心にした周波数の分布は、場所によっては共振、反共振が起きやすい周波数となることが推定できます。
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図 2 2 つの室の固有振動周波数(リストについては、低いほうから 50 個の周波数を表示)
このように、直方体を基本とした室の設計を行う場合、固有振動周波数の分布において、集中しないような寸法比を検討することが、残響時間などの設計とともに重要な要素になります。
また、室の固有振動周波数の測定は、純音をスイープすることで室内の伝送周波数特性として示すのが一般的です。
(2010年5月20日発行メールマガジンより抜粋)