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デジタル計測の基礎 - 第11回「交流電力の力率」

今回は、交流電源の力率についてお話しします。

直流電源の場合は、抵抗R の両端に電源電圧E (V)をかけた時の電流をI (A)とすると、消費
する電力はEI(W)となり、簡単に求めることができますが、交流電源の場合は、これほ
ど単純ではありません。

交流電源の負荷が、抵抗だけで
なく誘導性負荷(コイル)や容
量性負荷(コンデンサ)などの
リアクタンス成分を含む場合
(インピーダンスZ が負荷)は、
交流の瞬時電圧と瞬時電流に位
相差が生じます。
ここで、瞬時電圧v (t)、瞬時電流
i (t)、位相差をθとすると、瞬時
電力p (t)は;

図 1 インタピーダンスに流れる電流

················· (1)

ここで、

V :瞬時電圧の振幅
I :瞬時電流の振幅
ω:交流電圧の角周波数(=2πf
f :交流電圧の周波数

一般に、交流の電力とは瞬時電圧と瞬時電流との積の時間平均となりますので、p (t)を周期
T(=2π/ω)で時間平均すると、(1)式の第2 項は、平均化により0 となりますので、交
流電力P は;

·················(2)

となります。あるいは、v (t)とi (t)の実効値をそれぞれVrIr とすると(2)式は;
·················(3)

;となります。

すなわち、交流の電力は、交流電圧および交流電流の大きさ(実効値)の積に両者の位相
差の余弦cos (θ)をかけたものに等しくなります。このcos (θ)を力率と呼び、位相差が交
流電力を決めるのに重要となります。またこの電力P を実際に消費される電力であること
から、実効電力(有効電力)といい、単位はワット(W)です。私たちが電力会社に支払う
電気代も、この実効電力の積算をもとに決められています。
それに対して、交流電圧および交流電流の大きさ(実効値)の積 VrIr皮相電力といい、
その単位はボルトアンペア(VA)です。また、皮相電力にsin (θ)をかけたものを無効電力
と呼びます。
一般に、交流電力を複素数で表現すると、図 2 のようになります。

図 2 電力の複素数表示

これらの関係をまとめると:

実効電力 P :皮相電力の実数部=S cos (θ)
無効電力Q :皮相電力の虚数部=S sin (θ)
力率cos (θ) :(実効電力)/(皮相電力)

さて、交流電力や力率などの量は、FFT アナライザでどのように求めることができるのでし
ょうか?

準備として、FFT アナライザのCh1 に電流波形を、Ch2 に電圧波形を入力します。

(方法その1) 時間軸計算で求める場合

定義通りに、電流波形と電圧波形の積を時間平均して求めます(図 3)。

図 3 時間軸上での実効電力の計算

上段のグラフが、瞬時電力波形で時間軸統計演算機能により、「MEAN」値が実効電力とな
ります。この例では、1.281(W)であることが分かります。

(方法その2) 周波数軸上で求める場合

Ch1:電流波形、Ch2:電圧波形とすると、そのクロススペクトルが交流電力のスペクトル
に相当します。すなわち;

クロススペクトルの Mag :皮相電力
クロススペクトルの Real :実効電力
クロススペクトルの Imag :無効電力
クロススペクトルの Phase :θ(力率の位相)

;となります(図 4)。

図 4 クロススペクトルと複素電力

実数部を読むと、1.281(W)となり、方法1 と同じとなることが分かります。クロススペ
クトルから求める方法は、時間軸の方法と違い、無効電力、力率などが簡単に求めること
ができます。

ちなみに、同じように FFT アナライザにCh1:電流波形、Ch2:電圧波形と入力して伝達
関数を測定すると、図1 におけるZ(複素インピーダンス)を求めることができます。

(2008年8月25日発行メールマガジンより抜粋)