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デジタル計測の基礎 - 第12回「いろいろなインピーダンスとその測定」

今回は、交流電力の力率(前回)に続いて、インピーダンスについてお話しします。

インピーダンスという概念は、電気、通信、光、音、振動などの分野に適用できる非常に幅広い概念です。このすべてを網羅するのは、筆者の能力を超えていますので、基本的な説明を致します。

あるものに力(または圧力)をかけるとある量が変化しますが、加えた力(または圧力)とその変化する量との比をインピーダンスと定義されています。俗に言いますと、力(または圧力)をかけると、ある量が動いたり流れたりしますが、インピーダンスは、その動きにくさや流れにくさを表しています。ちなみに、単語impedeは、「遅らせる、妨げる」といった意味です。
一般に、インピーダンスは周波数の関数となる大きさ(ゲインやマグニチュードと呼ばれる)と位相の2つの量を持つので、複素数で表現されます。

  •   図1 インピーダンスに流れる交流電流
      図1 インピーダンスに流れる交流電流

電気回路におけるインピーダンスは、図1において、両端にかかる電圧とそれによって流れる電流との比となります。すなわち;

  • デジタル計測の基礎 - 第12回「いろいろなインピーダンスとその測定」_NO.1

;となります。この関係は、直流におけるオームの法則と全く同じとなり、インピーダンスは交流信号の流れを妨げる抵抗と言うことができます。

前回の説明と全く同じように、図1のZ(インピーダンス)がリアクタンス成分(すなわち、コイルやコンデンサーなどの回路素子)を含む場合、瞬時の交流電圧と交流電流に、位相差が生じます。

交流電圧

  • デジタル計測の基礎 - 第12回「いろいろなインピーダンスとその測定」_NO.2

交流電流

  • デジタル計測の基礎 - 第12回「いろいろなインピーダンスとその測定」_NO.3

とすると、インピーダンスZは、周波数fの関数となって;

  • デジタル計測の基礎 - 第12回「いろいろなインピーダンスとその測定」_NO.4

と表すことができます。(2)式から、Zは、大きさがV/Iで位相が-θ(位相遅れをマイナスとする)で周波数fの複素関数となることが分かります。

さて、FFTアナライザや周波数特性分析器でインピーダンスを測定するためには、対象となるインピーダンス系を駆動する交流の信号源が必要となります。このとき、重要なのは、駆動する信号源の周波数と分析する周波数が同期している点です。

電気的なインピーダンスを測定している2つの例を以下に示します。第1の例は、オーディオスピーカの入力インピーダンス(俗に負荷抵抗)を測定している例(図2)です。

  • 図2 スピーカのインピーダンス測定システム例
    図2 スピーカのインピーダンス測定システム例

分析器(DS-2000)からの交流信号でスピーカを駆動させ、Ch2にはスピーカ両端の電圧信号を、Ch1にはスピーカに流れる電流信号(シャント抵抗の両端の電圧信号)を入力して、Ch間の伝達関数を計測することにより、インピーダンスを求めています。図3はその測定結果で、左図(ボード線図)の赤が、電圧と電量の振幅比(すなわち、交流的な抵抗、単位はΩ)で、青が位相差(角度、deg)を表示しています。

  • 図3 スピーカの出力インピーダンス測定データ例
    図3 スピーカの出力インピーダンス測定データ例

第2の例は、燃料電池などのバッテリの出力インピーダンス(俗に内部抵抗)を測定している例(図4)です。

  • 図4 バッテリの出力インピーダンス測定システム例
    図4 バッテリの出力インピーダンス測定システム例

   (注意:電子負荷装置に(株)計測技術研究所様のELZ-175を使用した例です。)

この例では、バッテリのパワーを吸収するための電子負荷装置が必要となります。分析器(DS-2000)からの交流信号を電子負荷装置の負荷電流制御信号として供給して、Ch1に電子負荷装置が吸収する電流信号を、Ch2にバッテリ両端の電圧信号を入力して、上記の例1と同じように伝達関数を計測することにより、バッテリの内部インピーダンスを測定することができます。図5が、測定例で、右側のグラフがCole-Cole 図です。

  • 図5 燃料電池の内部インピーダンス測定データ例
    図5 燃料電池の内部インピーダンス測定データ例

機械系では、機械インピーダンスが使われています。ある対象物を加振器などで加振したときの励振力をF、その応答の振動速度をVとすると、機械インピーダンスZは;

  • デジタル計測の基礎 - 第12回「いろいろなインピーダンスとその測定」_NO.5

;と定義できます。すなわち、Zは振動の動きにくさ度合を表しています。

制振材料の損失係数を求める方法の1つとして、機械インピーダスが利用されています(制振材料とその性能測定についての資料参照)。

オーバーオール-FFT解析に関する 基礎用語集

図6のグラフは、二層型の試験片の機械インピーダンスデータ例です。具体的な測定方法は、Ch1に加速度センサからの信号、Ch2に力センサからの信号を入力して、力/加速度の伝達関数(動質量やみかけの質量と呼ばれる)を求め、それを周波数軸上の微分操作をすることにより、機械インピーダンスZを求めています。

  • 図6 制振材料の機械インピーダンス測定データ例
    図6 制振材料の機械インピーダンス測定データ例

音響系でも、インピーダンスが定義されます。一般に空気などの媒質の指定された面においてその面を通過する体積速度に対する音圧の比を、音響インピーダンスと呼び、媒質の動きにくさを表しています。特に、音響管のような場合では平面波と見なせるので、媒質の1点における粒子速度に値する音圧との比を比音響インピーダンス(または音響インピーダンス密度)と呼びます。

音響インピーダンス管を用いた垂直入射吸音率測定システムでは、吸音材の比音響インピーダンスを求めることができます。

電気、機械、音響分野での各物理量との対応関係を表1にまとめます。

電気系 機械系 音響系(一般空間) 音響系(平面波)
電圧 V 力 F 音圧 p 音圧 p
電流 i 速度 V 体積速度 V 粒子速度 v
インピーダンス Z=V/i 機械インピーダンス Z=F/V 音響インピーダンス Z=p/V 比音響インピーダンス Z=p/v

表1.電気系、機械系、音響系でのインピーダンス

(2008年9月18日発行メールマガジンより抜粋)