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デジタル計測の基礎 - 第8回「時間窓長とスペクトル分解能 」

今回は、FFT分析をする時間窓長とスペクトル分解能の関係についてのお話しです。 本計測コラムでも何回も取り上げたテーマですが、周波数分析の非常に基本的な事柄ですので、再度説明します。

一般的に、FFTアナライザでは、連続的な時間波形から、T秒間だけ切り出して(Tをサンプリング時間と呼ぶ)有限フーリエ変換を実施します。このとき、切り出された時間波形は、周期Tの周期関数と見なして、基本周波数1/T(周期の逆数)とその整数倍の周波数成分に分解することができます。(図1参照)このT秒のサンプリング時間長は、FFTの時間窓長となります。

  • 図1 基本周波数(1/T)とその整数倍のスペクトル
    図1 基本周波数(1/T)とその整数倍のスペクトル

この基本周波数はスペクトルの分解する能力を表し、分解能周波数と呼び、Δfで表すことにします。すなわち

  • デジタル計測の基礎 - 第8回「時間窓長とスペクトル分解能 」_NO.1

ここで、直感的に言えることですが、Δf(Hz)が分析できる最低の周波数だということです。このΔf(Hz)より低い周波数(言い換えれば、T秒より大きな周期を持つ)成分が含まれていても、分析範囲外となります。例えば、2秒の時間窓長(T=2)であれば、分析できる最低の周波数は0.5Hzとなります。すなわち、2秒の時間窓長に0.5Hzより低い周波数成分が含まれていても、分析することができません。(DC成分を除いて)分析できる下限周波数は、時間窓長に制限されることになります。
また、周波数スペクトルは、Δfの幅を持った短冊のようなフィルタ群が等間隔で並んだ形となっており、その短冊をFFTビン(bin)と呼ぶことがあります。ビン(bin)とは、英語で、バケツ(bucket)または、入れ物(container)を意味します。FFTでは、ビンの幅はΔfで、DC成分だけが、Δf/2となります。(図2)

  • 図2 幅Δfのビンの並び
    図2 幅Δfのビンの並び

次に、分析できる最高の周波数とビンの数は、いくらとなるか?という点を考えてみましょう。

時間窓長Tは、現実的にはディジタル時間データですので、あるサンプリング周期Δt(あるいはサンプリング周波数fS)でN点収録したものですから、時間窓長(サンプリング時間)Tは、

  • デジタル計測の基礎 - 第8回「時間窓長とスペクトル分解能 」_NO.2

と表すことができます。ここで、Nは、FFTの計算点数となります。 (1)式と(2)式より

  • デジタル計測の基礎 - 第8回「時間窓長とスペクトル分解能 」_NO.3

(3)式より、サンプリング周波数とFFT計算点数(あるいはサンプリング点数)Nが決まれば、分解能周波数Δfは、一義的に決まることになります。
分析できる最大の周波数は、ナイキストのサンプリングの定理などから理論的には、fS /2となります。この周波数をナイキスト周波数と呼ぶことがあります。またビンの数も同様にN/2まで求められます。実際のFFTアナライザでは、エリアシング(技術用語集を参照)誤差を無視できる範囲としてナイキスト周波数fS /2より小さめのfS /2.56を有効分析範囲(fSPAN)としています。すなわち

エリアシング-FFT解析に関する 基礎用語集

  • デジタル計測の基礎 - 第8回「時間窓長とスペクトル分解能 」_NO.4

 

この値をFFTアナライザでは、分析周波数レンジと呼んでいます。
ビンの数をLとすると、同様に          

  • デジタル計測の基礎 - 第8回「時間窓長とスペクトル分解能 」_NO.5

このビンの値を俗に、分析ライン数と呼んでいます。

  • 図3 ナイキスト周波数と有効分析範囲(fSPAN)
    図3 ナイキスト周波数と有効分析範囲(fSPAN)

また、Δfは、(4)、(5)式より

  • デジタル計測の基礎 - 第8回「時間窓長とスペクトル分解能 」_NO.6

とも表すことができます。

実際のFFTアナライザ(弊社のDSシリーズ)では、分析周波数レンジとサンプリング点数をユーザが指定することになります。
具体的な数値例としては、
   分析周波数レンジ:10kHz
   サンプリング点数:2048
とすると、
(4)式より、fS=25.6(kHz)
(5)式より、L=800
  (注)DCを含めるとL=801

(1)式あるいは(6)式より Δf=12.5(Hz)
と、計算できます。

次に、周波数の分解能をあげる(すなわちΔfを小さくする)ためには、どうしたらいいでしょうか?
(3)式より明らかに、サンプリング周波数を低くする(すなわち周波数レンジを下げる)か、サンプリング点数を大きくするかのどちらかとなります。周波数レンジを下げる方法ですと、高い周波数帯域を高分解能で分析できないという問題が出てきます。その解決方法として、周波数ズーミングがあります。
周波数ズーミングとは、着目する高い周波数を中心周波数として、ディジタルヘテロダイン方式で低い周波数にシフトして、ディジタルフィルタをかけたのちにリサンプリング(間引き)を行い、等価的にサンプリング周波数を低くして分析をします。この方法でも、実質的には、元の時間波形をズーム倍率分だけ多くの時間長が必要となり、(1)式が成立することになります。
周波数スペクトルが一定した周期信号を分析したもの(すなわちラインスペクトル)と仮定することができれば、ハニングウィンドウの形状からラインスペクトルのピーク前後の値から内挿方式により、ラインスペクトルのピーク周波数の分解能をあげて読み取ることができる方法(サーチエンハンス機能)も使うことができます。

(2008年5月22日発行メールマガジンより抜粋)