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デジタル計測の基礎 - 第7回「時間波形と位相スペクトル」

今回は、時間波形と位相スペクトルの関係についてお話しします。
最初に、いろいろな時間波形の基本となる正弦波(サイン波)について考えます。時間関数である正弦波信号を x (t)とすると;

  • 図 1 正弦波信号波形
    図 1 正弦波信号波形

;と表すことができます(図1)。
ここで、A:振幅、ω:角周波数、f:周波数、T:周期(= 1/f)、ωt+φ:位相、φ:初期位相、と言います。

このように、位相とは、正弦波関数の角度に相当しますが、上記の値(ωt+φ)では時間とともに大きくなるだけですから、多くの場合初期位相のことを位相と呼ばれています。図 1のように横軸が時間の場合、座標原点の位置からの時間差が位相に対応します。

一般に、位相θと時間差τとの関係は;

  • デジタル計測の基礎 - 第7回「時間波形と位相スペクトル」_No.1

;となるので、時間差がわかれば、位相を計算できます。逆も同様です。

さて、FFT アナライザでは、1ch の位相はどのように表されるのでしょうか?

1ch の位相は、FFT アナライザでは複素フーリエスペクトルの位相となります。複素フーリエスペクトル C (k)を;

  • デジタル計測の基礎 - 第7回「時間波形と位相スペクトル」_No.2

とすると、位相スペクトルθ(k)は;

  • デジタル計測の基礎 - 第7回「時間波形と位相スペクトル」_No.3

;として、求められます。

この式からも分かるように、FFT アナライザでは、余弦波(コサイン)波形を基準としています。すなわち、下図 2 のようなコサイン波形では、位相を 0 deg と定義し、また、下図 3 のサイン波形では、コサインより 90 deg 遅れて山が現れますから、位相は、-90deg となります。

  • 図 2 余弦波(コサイン波)<位相φ = 0 °>
    図 2 余弦波(コサイン波)<位相φ = 0 °>
  • 図 3 正弦波(サイン波)<位相φ = -90 °>
    図 3 正弦波(サイン波)<位相φ = -90 °>

このように、1ch の複素フーリエスペクトルを求め、周波数 k 毎の位相を計算して、位相スペクトルθ(k)を求めます。1ch の位相スペクトルは、一般には、トリガー(内部または、外部のトリガ信号)をかけてその取り込みタイミングからの位相を求めます。主なアプリケ ーションとしては、「回転体のバランシング計測」がこれにあたります。

1ch の位相は、上の説明にあるように、データ取り込みを原点とした位相となりますが、2chの位相は、明確に Ch 間の位相差となります。例えば、入出力の 2ch の正弦波を;

  • デジタル計測の基礎 - 第7回「時間波形と位相スペクトル」_No.4

とすると、その伝達関数のゲインは A2/A1、位相はφ2-φ1 となり、1ch と同様に、周波数 fの関数となります。ここで、注意することは、位相差は、あくまで 2ch の信号に含まれる同じ周波数成分同士の差となります。周波数が異なっていては、通常は、位相は求められません。また、2ch 間の位相差は、伝達関数の位相(=クロススペクトルの位相)として求められますが、原理的には、同時サンプルした 2ch の各複素フーリエスペクトルの位相の差と等価となります。チャンネル間の位相差は、系の入出力間の位相特性を表し、電気計測、振動解析、サーボ解析などにおける伝達関数の計測に幅広く利用されています。

最後に、方形波の位相を考えてみましょう。ご存じのように、方形波は、その周期を基本周期とした正弦波とその高調波周波数の正弦波から成り立っていますので、調和成分毎の位相が求まります。ここで注意することは、方形波パルスの立ち上がりを原点とした場合でも方形波のデューティ比によって基本波の位相は異なります。次図 4 の例にあるように、デューティ比が 50%の場合では、奇数次の高調波だけとなり、位相はちょうど-90deg となりますが、デューティ比が 50%以外(この例では、15.6%)では、偶数次の高調波も現れます。一般に、方形波のデューティ比をd(100d%)とすると立ち上がりを原点とした時の方形波の基本波の位相は、-180d(deg)と表すことができます。図 5.では、立ち上がりを原点とし方形波とそれを更にある時間だけ(78.125μs)遅延させた方形波の位相を表しています。右側の方形波の基本波が更に、22.5deg だけ遅れているのが分かります。

  • 図 4 方形波のデューティ比による位相の違い
    図 4 方形波のデューティ比による位相の違い
    左側:デューティ比 50%の場合
    右側:デューティ比 15.6%の場合
  • 図 5 同じ方形波で片方を遅延した波形の位相比較
    図 5 同じ方形波で片方を遅延した波形の位相比較
    左側:立ち上がり原点
    右側:左の波形を約 78μs 遅延させた波形
    (注釈:θ=ωτにおいて、τ=78.125e-6、ω=360/1.25e-3)

このように、周波数が等しい方形波の立ち上がりの位相を比較する場合でも、デューティ比が異なっていれば、その基本波の位相差とはなりません。一般的に、デューティ比が d1と d2である方形波の伝達関数をとり、基本波の位相差をθ1と求められたとすると、方形波の立ち上がり位相差θは;

  • デジタル計測の基礎 - 第7回「時間波形と位相スペクトル」_No.5

となります。

(2008年4月24日発行メールマガジンより抜粋)