前回の続きとして、今回も実効値に関するお話をします。
改めて、時間信号 x (t) の 2 乗平均値と実効値を定義します。
2乗平均値
実効値
実際に②式(または①式)を使って、信号の実効値を求めようとすると、平均時間 T をどのように決定するかが問題になります。時間信号 x (t) が周期信号であれば、その周期または整数倍の時間を平均時間として計算します。最も基本的な周期関数である正弦波を;
;とすると、その実効値は、②式から計算することにより、a/√2となります。ここで、a は正弦波の振幅(または片振幅)と呼ばれます。俗に言えば、正弦波のピーク値(または最大値)です。すなわち、正弦波の実効値は、その振幅の約 0.707 倍となり、逆に正弦波の振幅は、その実効値の約 1.414 倍となる関係にあります。ちなみに最大振幅値と実効値の比を波高率(クレストファクタ)と呼び、正弦波では、1.414 です。
アナログ回路で、②式を計算するのは非常に困難でしたので、ディジタル信号処理が一般的でなかった時のテスタやマルチメータでは、振幅を絶対値平均値検波で求め、それから実効値相当を算出していました。最近では、もちろん②式から求めるのが一般的ですが、前の方法と違うという意味で、真の実効値(True RMS)と呼ばれることがあります。
次に具体的に、正弦波を基本としたいろいろな時間信号について、実効値を求めて見ます。(以下は、表計算ソフトで実際に計算した例です。)
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図1 直線の重み・実効値 (0.58)
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図2 ハニング窓の重み 実効値 (0.61)
図 1 のグラフは、実効値が 1(すなわち振幅が 1.414)の正弦波の振幅が直線的に増加する例で、16 周期分で大きな周期と見なした時の平均です。実効値は約 0.58 となります。 図 2 のグラフは、同じく実効値 1 の正弦波の 16 周期分に、FFT アナライザでよく用いられる時間窓関数であるハニング窓をかけた例です。この時間波形の実効値を求めると、約 0.61となります。この値は、3/8 の平方根とほぼ等しくなり、ハニング窓をかけることによる信号のパワーの減少が 3/8 となることが確認できます。
上記 2 例では、一定の周波数での正弦波の振幅を変化させた(変調させた)例ですが、図 3のグラフは、周波数と振幅(実効値が 1 と 2)の異なる 2 つの正弦波信号は合成(加算)した例で、最大振幅は約 4.2 となる時間波形です。容易に推測できるように合成波形の実効値は、おのおの実効値から簡単に求められますが、3(=1+2)とはなりません。あくまでパワーでの加算となります。計算で求めると、実効値は約 2.2 となり、5(=12+22)の平方根となることが確認できます。
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図3 2つの正弦波の合成:実効値 (2.2)
さて、今までは周期関数の周期があらかじめ分かっている場合を述べましたが、周期関数ではあるがその周期が不明の場合には、②式の平均時間をどのように決めたらよいのでしょうか?
2 つの方法が考えられます。1 つには、平均時間がその周期関数の周期の整数倍とはならなくてもなるべく多く周期を含む十分な時間とする方法、もう 1 つの方法は、FFT アナライザで用いられる窓関数を利用する方法です。この方法では、上記で説明した例のように平均時間にハニング窓関数をかけて、後からそのパワー減少分を補正して求めることにより、誤差を軽減させることができます。
更に、求めたい時間関数が周期関数でない場合は、平均時間はどのように決めたらよいでしょうか? おおざっぱな分け方ですが、現実的な信号を分類すると、周期的な信号、過渡的な信号、ランダム信号などの連続的な信号(周期が無限大)に分類できます。
図 4 のような過渡信号の場合は、平均時間を明確に決めることはできません。時間的に有限で偏在する信号なので、平均時間によって②式の値が変わります。過渡信号の大きさ(強さ)は、平均しない量すなわちエネルギーで表すのが一般的です。
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図4
を、過渡信号のエネルギーと定義します。積分区間 T は信号が存在する時間となります。 周期生がないランダム信号では無限大の平均をとる必要となります。ランダム信号では、 ①式は;
;と定義されます。現実には、有限長の時間で平均して近似することになります。
時間波形の実効値に関してまとめると:
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信号のパワーの平方根に相当する。
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その求め方は;
2乗 → 加算 → 平均 → 平方根
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振幅が時間とともに変動する時間波形では、その平均時間でのパワー平均した値となる。時間波形の最大振幅(ピーク値)と実効値との関係(すなわちクレストファクタ)は、信号によって変わる。
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合成波形の実効値は、実効値の和でなくパワー値の和の平方根。
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過渡信号の場合は、積分区間で平均しないエネルギーで定義する。
(2008年1月24日発行メールマガジンより抜粋)