8.サーチエンハンス機能とズーム機能
入力信号が sin 波の場合など、周波数をより正確に読みたい場合があります。方法として;
- 周波数レンジは同じでもサンプル点数を多く設定する
- サーチエンハンス機能(周波数分解能を補正して読みとる)
- ズーム機能(指定した中心周波数と周波数幅で FFT する)
があります。今回はこの機能を説明します。
8-1 サンプル点数
図 8-1 は入力信号sin 波502Hz を周波数レンジ1kHz、サンプル点数を256、2048、16384 点でFFT したパワースペクトルを示します。周波数分解能はそれぞれ 1kHz の1/100、1/800、1/6400 になり、16384 点ではパワースペクトルが最大のX 軸値=502.031Hz と、より詳細な周波数が読み取れます。
以前に説明しましたが DS-0221 FFT 解析ソフトでは;
周波数分解能=周波数レンジ÷(サンプル点数÷2.56)
となります。
図 8-1 の上段はサンプル点数256 でX 軸分解能が荒いスケールとなっていて、中下段と違
うような感じがしますが、ウインドウ関数が同じハニングウインドウですので前号で説明
したバンドパスフルターの形は変わりません。
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図 8-1 サンプル点数と周波数分解能
8-2 サーチエンハンス機能
サーチエンハンス機能はハニングウインドウの場合のみ有効です。サーチ位置の周波数を、
バンドパスフィルターの形から周波数分解を32 倍にアップして求めます。
この機能を【サーチエンハンス機能】といい、当社オリジナルな技術です。
図 8-2 の右図は、図8-1 のサンプル点数256 のスペクトルデータを使いサーチエンハンス機能をON にした様子を示します。左図はサーチエンハンス機能OFF です。サンプル点数256点の場合は、周波数分解能は10Hz ですから、サーチで周波数を読み取る場合500Hz の次は
510Hz になり10Hz 飛びの読み取りになります。
サーチエンハンス機能 ON では周波数分解能が1kHz/(100×32)=0.3125Hz になり、サー
チ位置の周波数は:#X:501.875Hz #Y:-0.04dB と表示され、サーチエンハンス機能を
使わない場合に比べ、より入力信号502Hz に近い値を読み取ることができます。
サーチエンハンス機能 ON のときは#X と#記号を付して表示しています。
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図 8-2 サーチエンハンス機能
8-3 ズーム機能
ウインドウ関数に関係なく分解能を向上させる方法として【ディジタルズーム】があります。
DS-0221 FFT 解析ソフトでは単に【ズーム機能】と称しています。
ズーム機能は特定の周波数範囲 f1 ~ f2 を通常のFFT でスペクトル表示される0 ~ f(周
波数レンジHz)の範囲に表示するよう周波数を変換します。Δ=f2-f1 の幅がf の幅へM
倍(Δ・M = f )に拡大表示されることから、周波数を細かく観測できるようになります。
図 8-3 下図は周波数レンジ1kHz、サンプル点数256 の条件で、入力信号sin 波502Hz を500Hz±10Hz の幅にズーム設定し、ズーム機能ON でFFT した様子を示します。上図はズーム機能がOFF です。X 軸は0 ~ 1kHz 間を100 等分、周波数分解能で10Hz のパワースペクト
ルが表示されています。ズーム機能ON では490Hz ~ 510Hz の周波数帯を同じく100 等分
(分解能20Hz/100 = 0.2Hz)で表示され、周波数分解能が50 倍になっていて、入力信号周
波数502Hz がより正確に読み取ることができます。
ズーム機能は、まず入力信号を設定されたf1 ~ f2 の狭帯域バンドパスフィルターを通します。この信号に周波数f1 のcos 波を掛け算し、-Δ ~ +Δへ周波数シフトします。このとき寄
生成分も発生しますので、これを除去するため、通常のFFT を行うようにエリアシングフ
ィルーを通し、Δの2.56 倍の周波数でリサンプリングを行います。この一連の処理がディ
ジタル演算で実行され、リサンプルされたサンプル点数N でFFT します。
注意点は、周波数分解能はΔとサンプル点数N で決まり周波数レンジf と比較するとM = f/Δ倍になります。リサンプル点数N を時間T で考えると(T = N÷サンプル周波数より)、周波数レンジf のときよりM 倍の時間長となります。またズーム機能ON のときの時間軸波形表示は周波数シフトされた波形が表示され、入力波形ではありません。
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図 8-3 ズーム機能
8-4 周波数分解能をあげたときのスペクトルの変化
周波数分解能 10Hz のときのバンドパスフィルターの幅は、周波数分解能0.2Hz の50 個分
の幅になります。今回はsin 波で説明してきましたのでスペクトルの大きさは同じですが、
一般的な波形、特にランダム波形の周波数は広く分布しますので、周波数分解能が高くなる
ほど細分化されたパワースペクトルが表示されるためパワースペクトルは小さくなります。
ランダムな信号のパワースペクトルを見る場合は周波数分解能にも注意しましょう。
図 8-4 はランダム信号をサンプル点数256 と2048 の場合のパワースペクトルです。
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図 8-4 ランダム信号のパワースペクトル
8-5 パワースペクトル密度
ランダムな信号の場合、周波数レンジが同じでも周波数分解能が変わるとパワースペクトルの値が
変わります。周波数分解能が変わっても同じパワースペクトル値になるようにする方法として【パワースペクトル密度】(PSD:Power Spectrum Density)があります。これは次式の通りFFT で求めたパワースペクトルを周波数分解能で割ることで1Hz あたりのパワースペクトルとして正規化して表示します。周波数レンジを800Hz、サンプル点数を2048 に選ぶと1Hz の分解能となりますが。パワースペクトル密度を使うと任意のレンジで1Hz あたりのパワースペクトルを表示しますので便利です。なおオーバーオールの値はパワースペクトルのときと同じになります。
PSD:スペクトル密度
Pi:リニア表示のパワースペクトル(rms)
W:ウインドウ関数補正値
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レクタングラウインドウ 1
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ハニングウインドウ 3/2
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フラットトップウインドウ 3.6714
図 8-5 はランダム信号のパワースペクトルです。左列はサンプル点数256 点、右列はサンプル点数2048、上段はパワースペクトル、下段はパワースペクトル密度(PSD)を表示しています。パワースペクトル密度の表示ではサンプル点数によるスペクトルの値に差が無く表示されています。
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図 8-5
(2007年9月20日発行メールマガジンより抜粋)