本文にスキップする

Select your region & language

Global

Region

計測コラム:「波形とFFT-9」ウインドウ関数

今回はウインドウ関数を取り上げます。前回のバンドパスフィルターの続編になります。

前回の図7-6を参考ください。

 

また、小野測器技術レポート「FFT アナライザについて」の“7 章 FFT と時間窓”に上記
参考文献より引用した参考資料がありますので参照下さい。

7-5.ウインドウ関数(窓関数)

FFT で処理するデータの時間長T は周波数レンジとサンプル点数の設定で決まってしまい
ます。観測波形に含まれる色々な周波数成分はこのT と無関係のため、波形の切り取り初
めと終わりが連続的になることはないでしょう。サンプルされ2048 点に切り取られたデー
タは、ちょうど車の窓で切り取られた景色と同じです。FFT では切り取られた波形が周期的
に繰り返すと仮定しています。2048 点の切り出しのときに、2048 点サンプリングの最初
の部分と最後の部分が次第にゼロになるように重み付けをすることで不連続をなくして
滑らかにつなぐことにより、【リーケージエラー(もれ誤差)】をおさえることができます。
この重み付けはいろいろ提案されていてウインドウ関数(窓関数)といわれています。
このイメージを図7-7 に示します。この重み付け効果は前号でお話したバンドパスフィルター
の形、用語で言うとウインドウ関数の【メインローブ】と【サイドローブ】の形に現れます。

参考資料

 

【等価信号帯域幅】は、FFT した場合の計算上の周波数帯域幅であり、周波数分離性を表します。
前号でバンドパスフィルターが多数並んだものと説明しました。バンドパスフィルターのバンド
幅は、等価信号帯域幅で代表され、バンドパスフィルターのパワーに相当します。
また、fo (周波数分解能)は、fo = 1/T のことで、X 軸はn fo(n=0 ~ N)の周波数離散点で表さ
れることを以前説明しました。レクタンギュラウインドウではfo と同じ1/T になります。
今回は周波数分離性とバンド幅に注目し、説明の都合上、【等価信号帯域幅】を「バンド幅
Δf」と記して説明します。

  • 図 7-7 ウインドウ関数
    図 7-7 ウインドウ関数

DS-0221 汎用FFT 解析ソフトではウインドウ関数として【レクタンギュラウインドウ】、【ハ
ニングウインドウ】、【フラットトップウインドウ】が使えます。

(1)レクタンギュラウインドウ

レクタンギュラウインドウはフラットな重み(サンプルデータのまま)になります。バン
ド幅Δf は周波数分解能fo と同じになり、他のウインドウ関数より狭く、周波数の分離能力
が良いウインドウ関数となります。ゼロから始まりゼロで終わる打撃試験などの衝撃波形
や、FFT アナライザ内蔵の信号出力を使った試験ではFFT する時間の長さT が信号周期に
同期(周期の整数倍になっている)しているので、このような場合に使用されます。信号
周期に同期した時間長にサンプルできない場合は図7-10 のように【サイドローブ】が大き
くなります。図7-10 の502Hz の例で、もし解析信号に502Hz とその他の周波数成分がある場
合、その他の周波数成分が小さいと、このサイドローブに埋もれてしまう可能性があります。

(2)ハニングウインドウ

ハニングウインドウはサンプリングされたデータに図 7-8 のような形の重み付けとな
ります。この重み付けをするとこのままではパワーが小さくなります。当社FFT アナ
ライザでは正弦波の振幅がそのまま直読できるようにこの減衰分を正規化して表示
しています。正規化したメインローブが前号図7-6 のバンドパスフィルターになります。
また参考資料より正規化することでバンド幅(パワー)はΔf の3/2 倍(全体のパワー
はレクタングラウインドウの場合の3/2 倍)になります。わかりにくくなりましたが
バンド幅はバンドパスフィルターの形の違いと理解してください。ハニングウインド
ウではサイドローブがレクタンギュラウインドウに比べ小さくなります。ランダムな
信号や一般的な連続波形の場合はこのウインドウ関数がよく使用されます。インパル
スハンマの打撃波形の場合、衝撃波形が最初の位置にくると衝撃波形がハニングウイ
ンドウの重み付けのため減衰してしまうので、重み付けの影響の無いレクタンギュラ
ウインドウが使われることになります。ハニングウインドウは次のフラットトップウ
インドウとレクタンギュラウインドウとの中間的な性質を持ったウインドウ関数と
いえます。

  • 図 7-8-1 ハニングウインドウ関数と信号
    図 7-8-1 ハニングウインドウ関数と信号
  • 図 7-8-2 ハニングウインドウ関数がかかった信号
    図 7-8-2 ハニングウインドウ関数がかかった信号

(3)フラットトップウインドウ

フラットトップウインドウは振幅をより正しく読むために提案されたウインドウです。
ハニングウインドウよりも、サンプルの最初と最後部分をゼロにする部分を広くした
重みとなっていて、バンド幅はΔf の約3.67 倍になります(図7-9)。周波数分離性は
他のウインドウのほうがよいのですが、信号が周波数分解能の狭間の周波数では他の
ウインドウでは実際より小さい振幅表示になりますが、フラットトップウインドウで
はバンド幅が広い分より正確に読めます。これは参考文献の著者城戸先生より提案さ
れたウインドウ関数です。

  • 図 7-9-1 フラットトップウインドウと信号
    図 7-9-1 フラットトップウインドウと信号
  • 図 7-9-2 フラットトップウインドウ関数がかかった信号
    図 7-9-2 フラットトップウインドウ関数がかかった信号

ウインドウの種類によりバンドパスフィルターの形が変わりますから、周波数分離性
とスペクトル値に違いが生じます。その程度は入力信号の周波数分布により変わりま
すが、ピーク値の振幅をより正しく読むためにはフラットトップで測定します。
インパルス波形のように時間長 T の中におさまる波形ではレクタンギュラウインドウ、
そうでない波形はハニングウインドウを使います。また振幅に注目する場合はフラッ
トトップを使うなど、測定目的によってウインドウを使いわけ分析することができます。
一般的にはハニングウインドウを使うと周波数分離性、振幅ともに無難な測定を行う
ことができます。

(4)メインローブとサイドローブ

図 7-10 は周波数レンジ1kHz、サンプル数256 に周波数分解能を荒く設定し、信号と
して振幅1Vrms(0dBVr)、sin 波、周波数を500Hz と502Hz を入力し、ウインドウ関
数を変えてFFT したものを並べてみました。
500Hz の場合はこの周期にあった時間長T でサンプルができますので、サイドローブ
は小さいですが、502Hz はそのようにサンプルができませんのでサイドローブが大き
くなっています。またこのときの振幅値の読み取りはウインドウ関数により違いがあ
らわれます。

  • 図 7-10 ウインドウの特徴
    図 7-10 ウインドウの特徴
    左列:500Hz のsin 信号 右列:502Hz のsin 信号
    上より時間波形、レクタンギュラウインドウ、ハニングウインドウ、フラットトップウインドウ

<ポイント>
FFT アナライザでは、サンプリングするときアンチエリアシングフィルタがかかること、パ
ワースペクトルではウインドウ関数がかけられて処理されていることを考慮し分析します。
一般的に衝撃波形はレクタンギュラウインドウ、連続信号はハニングウインドウを使い、
ピーク値の振幅レベルを正確に測定するためにはフラットトップウインドウを使います。

(2007年8月22日発行メールマガジンより抜粋)