インパルス応答
今回も引き続き打撃試験です。
ある系を入力→伝達系(周波数応答関数)→出力としてみた場合、伝達系は伝達関数(周波数応答関数)で表すことができます。
入力、伝達系、出力信号のフーリエ変換したものをX(f)、Y(f)、F(f)とすると
Y(f)=F(f)X(f) ・・・(1)
として、出力信号は掛け算で求めることができます。このことは前回、入力周波数が決まれば出力が簡単に計算できるということでお話をしました。伝達関数は周波数軸での話でしたが、今回はこれを時間軸で考えてみましょう。
入力信号をx(t)、出力信号y(t)が得られる系で、時間τだけ送らせた入力x(t-τ)に対し出力がy(t-τ)となるような時間不変性な線形系に、単位インパルスδ(t)(デルタ関数)を加えたときの系のレスポンス(応答)をインパルスレスポンスといいます。
単位インパルスの周波数スペクトルはあらゆる周波数成分を均等に含んでいるので、式(1)のX(f)は
X(f)=1(=あらゆる周波数でスペクトル一定)
よって
F(f)=Y(f)/X(f)=Y(f)
となり、インパルスレスポンスは周波数領域では伝達関数そのものとなります。伝達関数測定はインパルスレスポンスを意識していなくても実際は測定していたのです。
では、時間領域ではどのようになっているのでしょう。
特にインパルスレスポンスをh(t)とすると、t=0で単位インパルスの入力が作用するとその時の出力はy(t)=h(t)となります。t=τの時の入力はx(τ)ですが、x(t)がインパルスの集まりと考えると入力はx(τ)dτとあらわせます。この入力信号に対する出力は
y(t)=x(τ)dτh(t−τ)
となります。これを整理すると次のようになります。
入力 → x(τ)δ(t-τ)dτ
出力 → x(τ)h(t-τ)dτ ・・・(2)
さて、x(t)は次々にインパルス信号が入力されている状態ですから、この出力は、次々に発生するインパルスレスポンスを重ねあわせたものが出力としてあらわれます。
インパルスを線形系に入力した際のインパルスレスポンスと伝達関数

入力信号をパルス列と見なすとき、出力信号はパルス列の応答の和で与えられる
よって連続的な入力信号 x (t) に対する応答は積分することでもとめられ 次式になります。
y(t)=∫x (τ) h(t-τ) dτ ・・・(3)
(∫は -∞ ~ +∞ の積分を示す、以下同じ)
また、t-τ → t と変数変換して、次のようにも表されます。
y(t)=∫x(t-τ) h (t) dτ ・・・(4)
式(3)、(4)の右辺積分は畳み込み積分(コンボリュ-ション積分、重畳積分)と呼びます。
(4)式の両辺を次のようにフーリエ変換すると次のような周波数領域での関係式が導かれます。
∫y(t) exp(-j2πft)dt=∫∫x (t-τ) h (τ) dτ exp(-j2πft) dt
t-τ → tと変換して右辺をτで整理すると
右辺 =∫∫x (t) h (τ) dτ exp{-j2πf(t+τ)}dt
=∫∫x (t) exp (-2πft) dt h (τ) exp (-j2πfτ)dτ
=∫X (f) h(τ) exp (-j2πfτ) dτ
よって
Y (f) = X (f) H(f) ・・・ (5)
H(f)は入力信号が単位インパルスの時の応答ですから式(1)と同じになります。
時間領域での畳み込み積分は、周波数領域では掛け算となることがわかりました。また、伝達関数はインパルスレスポンスを周波数領域で表現したものということがわかりました。
畳み込み積分は演算回数が多くなり、時間領域で出力応答を求めるのは大変ですが、周波数領域では伝達関数と入力信号のパワースペクトルの掛け算となり、出力応答を簡単に求めることができます。実際 FFTアナライザではこれをイコライズ機能として持っています。
例えば床に装置を設置するとき、設置工事の前に装置の振動のパワースペクトルがどうなるか推定したい場合、この機能を利用することができます。加振機などで装置の伝達関数を測定し、また床の振動のパワースペクトルを測定し、それぞれの掛け算を実行します。演算結果は装置を床に置いた場合に予想される装置の振動パワースペクトルとなります。
伝達関数は入力点と出力点の関係ですから、出力点の振動パワースペクトルが演算されたということになります。
また、FFTアナライザーでインパルスレスポンスを表示する機能があり、これは伝達関数を逆フーリエ変換をして求めています。
振動を解析する時この畳み込み積分と伝達関数、時間領域と周波数領域 の関係を考えると参考になるかと思います。
(2004年8月26日発行メールマガジンより抜粋)