3.H∞制御
この制御設計法は、周波数軸である値以下にするように対象の制御系を構成する手法です。ここでは伝達関数の大きさを測るノルムとしてH∞ノルムを用いる。H∞制御は目的の制御系の特性が明確であるため見通しの立ちやすい設計法ともいえます。H∞の解法としてはリカッチ方程式に基づく手法、リカッチ不等式に基づく手法、LMI(線形行列不等式)に基づく手法など多数の解法が知られています。
図:H∞制御の概念
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H∞制御の概念
4.最適レギュレータ理論
最適レギュレータ理論においては、フィードバックは前出の状態ベクトルXを用いて行われます。すなわち制御入力の形として、次の式が採用されます。
U=−KX (12)
この時のKはフィードバックゲインとよばれる行列です。このKをうまく選ぶことにより極を任意の特性根に配置できますが、実際には、どのような極位置が最も有効なのかは分かりにくい。そこで、制御に要するエネルギーと制御性能の和が最小限となるように、2次形式の評価関数を定義して制御設計、状態フィードバックゲインを決定します。すなわち最適レギュレータ理論では次のような多入力多出力系に対して
X’=AX+BU (13)
A:SystemMatrix
B:InputMatrix
X:状態量
次のような2次形式の評価関数Jを最小にする状態フィードバックゲイン行列Kを定める方法を採用しています。
J=∫[X^TQX+U^TRU]dt(14)
∫:0~∞までの積分を示す
X^T:X の転置行列を示す
(以下同様)
このときの2次形式のなかのQは状態ベクトルにかかる重み行列であり非負の正定行列である。Rは入力ベクトルにかかる重み行列であり、同じく正定行列である。このQとRのとりかたによって制御性能・振動特性と入力エネルギー消費のバランスのトレードオフが成立します。
図:制御性能・振動特性と入力エネルギーの関係
つまりRを小さくすると制御量が大きくなり良好な制振効果が得られる反面、大きなエネルギー(またはコスト)を許容することになります。
行列Qは影響させたい状態量に応じて定められます。したがってLQ制御理論ではこれらの行列が制御系を設計する際の設計パラメータとなります。しかながら、これらの行列の値を決定する指導原理はないので、現状ではシミュレーションによって選択しています。
図:現代制御理論の概念
行列Q、Rが与えられたとして、この制御理論では以下のリカッチ方程式を解くことによって正定な解Pを求める。
𝑃𝐴+𝐴^𝑇 𝑃−𝑃𝐵𝑅^(−1) 𝐵^𝑇 𝑃+𝑄=𝑂 ̅ (15)
式(15)よりQを求め、式(14)に代入すると;
𝐽=∫130_0^∞▒[𝑋^𝑇 𝑃𝐵𝑅^(−1) 𝐵^𝑇 𝑃𝑋−𝑋^𝑇 𝑃𝐴𝑋−𝑋^𝑇 𝐴^𝑇 𝑃𝑋+𝑢^𝑇 𝑅𝑢]ⅆ𝑡 (16)
𝑋^𝑇 𝑃𝐵𝑅^(−1) 𝐵^𝑇 𝑃𝑋−𝑋^𝑇 𝑃𝐴𝑋−𝑋^𝑇 𝐴^𝑇 𝑃𝑋は振動特性
𝑢^𝑇 𝑅𝑢はエネルギー消費量
ここで
ⅆ/ⅆ𝑡 (𝑋^𝑇 𝑃𝑋)=𝑋^𝑇 𝑃𝑋+𝑋^𝑇 𝑃𝑋 (17)
および、状態方程式(11)を用いることにより;
𝑋^𝑇 𝑃𝐴𝑋+𝑋^𝑇 𝐴^𝑇 𝑃𝑋=ⅆ/ⅆ𝑡 (𝑋^𝑇 𝑃𝑋)−𝑢^𝑇 𝐵^𝑇 𝑃𝑋−𝑋^𝑇 𝑃𝐵𝑢 (18)
を得ます。したがって式(16)は次のように変形されます;
𝐽=∫130_0^∞▒[(𝑋^𝑇 𝑃𝐵𝑅^(−1)+𝑢^𝑇 )𝑅(𝑅^(−1) 𝐵^𝑇 𝑃𝑋+𝑢)]ⅆ𝑡−𝑋〖𝑃├ 𝑋┤|〗_0^∞ (19)
このJを最小にする条件から最適フィードバックゲインKは次のようにして定まります;
𝑢=−𝑅^(−1) 𝐵^𝑇 𝑃𝑋=−𝐾𝑋 (20)
状態方程式のブロック線図
式(20)でK(コントロールのための定数)を求める。
Kの決め方で、∞理論または最適レギュレータ理論を使う。
5.まとめ
古典制御による設計は今も活用されています。これは1入力1出力で簡易的に振動を制御する場合、コスト等において非常に利点の多い手法である点にあります。これに対して現代制御理論では多入力多出力やロバスト性を必要とする制御において活用されています。現代制御を行うにあたっての要点は以下のようにまとめることができます。
- 各変数を状態量にまとめ、システムを状態方程式によって記述する必要がある
- 制御目的に応じて最適レギュレータ設計、H∞制御設計等の制御設計手法を用いてフードバックを決定することにあります。
これらはMATRAB(サイバネットシステム(株))のようなシミュレーションプログラムにより簡単に試してみることができます。
他方、制御においての障害としては、制御対象の不確かさ(モデル誤差)であり、モデルの低次元化の問題があります。また実際の制御を行う場合は、ノイズ、非線形要素等が予期しない制御の障害となります。
これらの制御手法に付いてはまたの機会とさせていただきます。
以上、振動制御の一部で簡単ではありますがご紹介いたしました。
補足説明
(2)ノルム
ベクトルは行列で記述され、その大きさ(magnitude)は絶対値(absolute value)あるいはノルム(norm)とも言い、同じベクトルの内積の平方根、すなわち全項の自乗和の平方根で表されます。
𝑃=⌊𝑃_1 𝑃_2 ⌋とすると
‖𝑃‖=√(𝑃_1^2+𝑃_2^2 )
(3)ロバスト性
制御対象の特性が変化した時、一般的に制御性能が低下します。制御性能が落ちにくい制御法をロバストな制御と呼ばれています。言いかえると制御性の変化に対して耐性のある制御のことです。
(2004年4月22日発行メールマガジンより抜粋)