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デジタル信号処理の基礎 - 11「伝達関数の推定」

前回、伝達関数の説明をしましたが、一般のFFT解析装置では、具体的にどのように計算されているのでしょうか?

定義式をもう一度書きますと

       H (f) = Y (f) / X (f) ---------------------- (1)

ここで、X (f) と Y (f) は、系の入出力信号 x (t)、y (t) のフーリエ変換です。実際の計算では、上記(1)式は、使われていません。(1)式の右辺の分母と分子に X (f) * (複素共役)を掛けると;

       H (f) = Y (f) / X (f) = X (f) * Y (f) / X (f)* X (f)
                      = Gxy (f) / Gxx (f) ------------------- (2)

となります。すなわち、伝達関数 H (f) は、系の入出力のクロススペクトル Gxy (f) と入力のパワースペクトル Gxx (f) の比となり、一般のFFT 解析装置では、(2)式で計算されます。
さらに、実際のスペクトルの推定では、サンプルされた十分に長い時系列信号から N 点のFFT 時間窓長を M ブロック切り取り、平均をすることにより、実行します。

       Gxx (f) = 1/M Σ (X (f) * X (f))---------------- (3)
       Gxy (f) = 1/M Σ (X (f) * Y (f))---------------- (4)
(Σ:加算の添え字は省略します)

すなわち、伝達関数の推定値は、クロススペクトルの推定値(4)式とパワースペクトルの推定値(3)式の比として、求められます。

このように計算するメリットあるいは理由としては;

  1. 直接 (1) 式で、平均すると、位相がバラバラで安定しない。またランダム信号では、瞬時のスペクトル X (f) が0となる場合があり、計算できないことがある。
  2. 入力源にランダム信号を用いて充分平均操作をすることにより、非線形の系を線形近似することができる。
  3. 出力信号に信号源に無相関なノイズが乗った場合でも、平均操作をすることにより、ランダムエラーを低減できる。

などがあります。

(1)式の右辺の分母と分子に X (f) * (複素共役) を掛けるかわりにY (f) * を掛けると、
       H (f) = Y (f) / X (f) = Y (f) * Y(f) / Y(f)* X(f) 
               = Gyy (f) / Gyx (f) ------------------ (5)

となり、出力のパワースペクトルと入出力のクロススペクトル(複素共役)の比としても計算することができます。

(2)式より求める伝達関数を H1、(5)式より求める伝達関数をH2 と言うことがあります。H2 推定は、入力に大きなノイズが乗った場合に充分な平均により、ランダムエラーを低減することができます。

(2003年9月19日発行メールマガジンより抜粋)