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デジタル信号処理の基礎 - 10「伝達関数とその図示方法」

電気回路や機械系システムの伝達特性を表す関数としての伝達関数を求めることが、多 ch FFT 解析装置の重要な目的です。

ある系への入力信号と出力信号を、x (t)、y (t)として、それらのフーリエ変換をそれぞれ X (f)、Y (f)としますと、伝達関数 H (f) は、以下のように定義されます。

       H (f) = Y (f) / X (f) ---------------------- (1)

入出力間の周波数の関数なので、周波数応答関数とも言われますが、ここでは伝達関数と同義として説明します。

定義式(1)にあるように、X (f) と Y (f) の複素数比なので、伝達関数 H (f)も複素数となります。その実数部を HR (f)、虚数部 HI (f) をとおきますと、振幅(ゲインとも言う)と位相とに表現することもできます。

       H (f) = HR (f) + j HI (f) ---------------- (2)

       振幅 |H (f)| = √HR (f) 2 + HI (f) 2 ---  (3)
       位相 θ (f) = arctan(HI (f) / HR (f))------  (4)

さて、伝達関数の物理的な意味するところは、ある系への入出力信号の周波数毎の振幅比と位相差を表しています。
例えば信号 x (t) = A sin (2π f0 t) を系に入力すると、信号 y (t) = B sin (2π f0 t +φ) が出力されるとすると、周波数 f0 での伝達関数は、振幅が B/A で、位相が φ (通常の物理的な系は因果系なので、遅れ要素となり、位相はマイナスです)となります。

伝達関数は、周波数に対する2つの要素(実数と虚数、または、振幅と位相)を持った複素数関数なので、時間波形やパワースペクトルなどの実数関数のように1つのグラフでは表現できません。普通、以下の3つの表示方法があります。

第1の方法は、定義式(2)の通りに、周波数を共通の軸として、実数部と虚数部を別々の図として縦に並べて表示する方法で、コクアド線図と呼びます。
第2の方法は、定義式(3)と(4)にあるように、周波数を共通の横軸として、縦軸に振幅(大きさ)と位相を別々の図として縦に並べて表示する方法で、ボード線図と呼びます。振幅のグラフは、大きさは必ず正の数なので対数表示で表示することにより、大きなピークと同様に小さなピークをバランスよく表示することができます。また、周波数軸も対数表示することもよくあります。
第3の方法は、実数部を横軸に、虚数部を縦軸にした極座標表示で、ナイキスト線図(ベクトル線図)と呼びます。この方法は、グラフが1つとなりますが、周波数軸が明確に表示されない欠点があります。そのため、ナイキスト線図の3次元表示で、周波数軸を表現することもあります。この図は、共振点が明確に表示できる特徴を持っています。

電気系ではフィルタ特性、音響系ではスピーカなどの周波数特性、機械系では振動の共振周波数やダンピング特性、サーボ系では系の安定性などのように、伝達関数は、非常に他分野に渡った応用があります。

(2003年8月27日発行メールマガジンより抜粋)