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デジタル信号処理の基礎 - 12「伝達関数とコヒーレンス関数」

前回、伝達関数の具体的な計算方法を述べましたが、今回は、伝達関数の推定精度を測るために重要なコヒーレンス関数を説明します。

出力信号 y (t) が、信号 x (t) を伝達系に入力して得られる出力信号v (t) とそれに関係ない信号(すなわちノイズ) n (t) の合成とすると、

        y (t) = v (t) + n (t) -------------------------(1)

となります。ここで、実際に計測出来るのは、x (t) と y (t) だけで、v (t) は計測出来ません。また、系の伝達関数を H (f) とすると、

        V (f) = H (f) X (f) -----------------------------(2)

となり、x (t) の成分だけに起因する出力信号 v (t) のパワースペクトルは

        GVV (f) = |H (f)|2 GXX (f) ---------------------(3)

と表すことができます。

ここで、(3) 式のパワースペクトルと全出力 y (t) のパワースペクトルの比 γ2 (f) を計算すると、

   γ2 (f) = |H (f)|2GXX (f) /GYY (f)
   (H (f) = GXY (f) /GXX (f) を代入して)
       = |GXY (f) |2 /(GXX (f) GYY (f)) ----------(4)

となります。この γ2 (f) はコヒーレンス関数(関連度関数)と呼ばれ、全出力のパワーの中で、入力信号に基づく成分(すなわち入力信号に線形な成分)のパワーの比率を意味しています。

このように、コヒーレンス関数は、入力と出力の関係の強さを表現する比ですので、その値は0 から1の間になり、γ2 (f) = 0 ならば、入出力が全く無関係であることを表し、γ2 (f) = 1 ならば、出力が全て入力の寄与の成分であることを表しています。

一般に、コヒーレンス関数が1より小さくなる理由は、以下の原因の1つあるいはその複合が考えられます。

  1. 系が線形でない場合
  2. 測定系に無関係な外部雑音が混入する場合
  3. 漏れ誤差(分解能バイアス誤差)が生じる場合
    (伝達系のインパルス応答が時間窓長より長い時)
  4. 着目する入力信号x(t)以外の他の信号が系に入力されている場合

などです。

現実的には、出力のパワースペクトルが非常に小さい場合(すなわち出力が応答しない場合)にもコヒーレンス関数が低下します。

コヒーレンス関数は、伝達関数の推定の信頼度を評価するのに用いられます。実際的には、0.9 以上のコヒーレンス関数が算出されている周波数成分は、信頼出来る伝達関数が推定されていると言って良いでしょう。       

(2003年10月17日発行メールマガジンより抜粋)