本文にスキップする

Select your region & language

Global

Region

デジタル信号処理の基礎 - 9 「パワースペクトルとクロススペクトル」

前回までの説明は、1ch の時間波形とその周波数分析結果との関係に関してでしたが、今回から 2ch 間の関係を記述する関数に関して説明します。

2ch 間の関数を求める主な目的は、着目する対象物(一般に系と呼ばれます)に加振力などの入力を加えて、その応答を同時に計測して、入出力間の関係を求めることにあります。
ある系への入力信号と出力信号を、x(t)、y(t) とし、それらのフーリエ変換をそれぞれ X(f)、Y(f) としますと、前回説明したように、X(f)、Y(f)は、一般に複素数となります。またそのパワースペクトル Gxx(f) は、

                        Gxx(f)=|X(f)|2=XR(f)2+XI(f)2

です。さらに、複素数 X(f) の複素共役(複素数の虚数部の符号を反転させたもの)を X(f)* と表すと、

                        Gxx(f)=X(f)* ・ X(f)

と表現することもできます。出力信号 y(t) のパワースペクトルも同様に

                        Gyy(f)=Y(f)* ・Y(f)

と表されます。パワースペクトルは、周波数毎のパワー成分を表しており、実数関数(複素数でない)となりますので、横軸が周波数で、縦軸がパワー(振幅の2乗の大きさ)でグラフ表示できます。

次に、入力信号 x(t) と出力信号 y(t) 間の関係を記述する関数としてクロス(パワー)スペクトル Gxy(f) を以下のように定義します。

                        Gxy(f)=X(f)* ・Y(f)

クロススペクトルは、x(t) と y(t) の 2ch 信号に含まれる共通のパワー成分を周波数の関数として表したもので、複素関数となります。その実数部を CR(f)、虚数部を CI(f) とおきますと、絶対値(振幅)と位相とに表現することもできます。

                        振幅 |Gxy(f)|= √{CR(f)2+CI(f)2
                                                { }内は√の中を表します。
                        位相 θ(f) = arctan (CI(f)/CR(f))

振幅情報に関しては、明確な意味づけは難しいのですが、位相は、各周波数毎のch間の位相差を意味しており、非常に重要な情報です。
クロススペクトル関しての意味や用途についてまとめました。

  1. クロススペクトルそれ自体は、あまり具体的な用途がないが、これを使って、重要な関数(伝達関数、コヒーレンス関数、相互相関関数など)を2次処理計算で、算出することができます。

  2. ch 間の位相差を求める時に利用出来ます。

  3. 2マイクロホン法による音響インテンシティ計測の時、利用します。

  4. 特殊な用途ですが、雑音に埋もれた周期信号の周期およびパワースペクトルの検出にクロススペクトルを使うことができます。

(2003年6月20日発行メールマガジンより抜粋)