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計測初心者のための入門コラム:わかりませんの人たち集まれ~ 第12回「デジタル計測器のAD変換について」

読者の皆様が日常業務で使用されているデジタル計測器として、デジタルオシロスコープやデジタルレコーダ、FFTアナライザ等がありますが、この入力部の基本機能である A/D変換と、性能の一つであるダイナミックレンジについて、今回と次回のコラムで説明いたします。

A/D 変換(Analog/Digital Conversion)

音や電気、電波など物理現象に伴う信号は本来連続量であるため、そのままではデジタル計測器などの電子回路で取り扱うことが出来ません。このため、横軸の時間を一定の間隔で離散化し、さらに縦軸の強度を一定のレベルで離散化して、点群で波形を表す、という方法が取られます。この操作を A/D 変換と言います。デジタル計測器には接続センサからの信号が絶え間なく入力されていますが、計測器本体側ではユーザから指定された周期で測定し、二次元座標点データとして扱われています。以前は観測波形をモニタするだけなら、波形をそのまま連続的に表示する計測器(アナログオシロスコープ等)がありましたが、現在では計測結果を数値で記録するニーズも多いため、デジタル計測器が主流となり、データ処理の中では A/D変換が必須になっています。

  • 図 1 A/D 変換のイメージ
    図 1 A/D 変換のイメージ

時間軸の離散化=サンプリング(標本化)

次に、デジタル計測器で A/D 変換を行う上で必要な要素について説明していきます。計測器に入力される信号を二次元で表わすには、横軸を時間、縦軸を振幅として扱います。アナログ信号を一定の時間間隔で離散化することを、サンプリング(標本化)と言います。このこときの一定の時間間隔をサンプリング周期と言い、その逆数をサンプリング周波数と言います。音や電気などの計測では、サンプリング周期は 1 秒よりはるかに短いことが多いこともあり、表記上の読みやすさから、その逆数のサンプリング周波数が使われます。
例えば 1 kHz (1000 Hz) のサンプリング周波数であれば、0.001 s 毎に連続値を離散値(非連続の値)に置き換えていることになります。因みに、音楽 CD はアナログレコードとは異なり、デジタルサンプリングされた媒体であることは、読者の皆様もよくご存じだと思います。このサンプリング周波数は 44.1 kHz (44,100 Hz) なので、その逆数を取った、約0.0000227 s(22.7 μs)毎に、サンプリング(標本化)されて記録されている、ということになります。さらに、より高音質とされるデジタルハイレゾ音源は 96 kHz (96,000 Hz)サンプリングなので、約 0.0000104 s (10.4 μs)毎にサンプリング(標本化)されている、ということになります。この様にサンプリング周波数を高く設定すれば、より原アナログ信号の細かい変動に追従出来ますが、時間当たりデータ点数が増える(周波数 2 倍でデータ点数も 2 倍となる)ので、実際の計測では目的にあったサンプリング周波数を選択することで、無駄なデータ容量を増やすこ
とも無くまります。

  • 図 2 サンプリング(標本化)のイメージ
    図 2 サンプリング(標本化)のイメージ

振幅軸の離散化=量子化

前節でサンプリング周波数は、アナログ信号を A/D 変換する際の、横軸の刻み量(時間間隔)
であることを説明しましたが、縦軸を一定の振幅刻みで離散化することを量子化と言います。
また、このときの刻み量を用いて原アナログ信号の振幅を何段階の数値で表現するか、を示す
値のことを A/D 分解能(量子化ビット数)と言います。
電子回路は OFF と ON を「0」と「1」で表す 2 進法で表現します。これは 1 ビットなら振幅強度を 0 か 1 の 2 段階で表現することを意味します。2 ビットなら 2²=4 なので縦軸を 4つの目盛りに当てはめて波形を描くということになります。今日のデジタル計測器では 16 ビットが主流になってきていますが、16 ビット = 216=65,536 なので、縦軸スケールを65,536 の目盛りに分けて原アナログ信号を当てはめる仕様であると意味しています。

仮に±1 Vのレンジの場合は、+1 V から-1 V までの 2 V スパンを 65,536 目盛りに分割
して当てはめているので、その分解能は約 0.00003 V = 約 30 μV ということになります。
先に述べた音楽 CD の量子化ビット数は 16 ビット、デジタルハイレゾ音源はさらに細かい24 ビットになっています。先の±1 Vのレンジを例にとると、デジタルハイレゾ音源の量子化ビット数は 24 ビット = 2²⁴=16,777,216 の目盛りとなり、2 V スパンをこの数字で割り算した、約 0.00000012 V = 約 120n V の縦軸スケール目盛りに当てはめて量子化しているということになります。
サンプリング周波数同様、量子化ビット数が大きな値であれば、原アナログ信号に対してより忠実にデジタル変換(量子化)出来ますが、一般的には高 bit の A/D 変換機は処理が複雑になり、高価になります。

  • 図3 量子化のイメージ
    図3 量子化のイメージ

A/D 分解能についての話はここまでとします。次回はデジタル計測器のもう一つの基本的性能指標であるダイナミックレンジについて説明いたします。

(2022年9月21日発行メールマガジンより抜粋)