当計測コラムでは、当社お客様相談室によくお問い合わせいただくご質問をとりあげ、回答内容をご紹介しています。
FFTアナライザを用いて周波数分析を行う際に、どこから手を付けたらよいのか、その手順について悩んだ方も少なくないと思います。
今回は、FFTアナライザの設定手順についてご紹介します。
FFTアナライザを用いた計測の流れ
最も一般的な計測の流れは以下のようになります。
- センサを接続し、センサの入力設定を行う。
- 各種計測設定を行い、入力波形が正しく計測できるようにする。
- アナログ信号を離散化し、正しくデジタル信号として扱えるようにする。
- 短い時間間隔(解析フレーム)に分割する。
- FFT演算を実行し、パワースペクトルを描画する。
- 平均化処理を実行し、解析結果として保存する。
各パートにおける説明
1.センサを接続し、センサの入力設定を行う
ここでのFFTアナライザの設定としては、CCLD(定電流駆動)の設定があります。プリアンプ内蔵型のマイクロホンや加速度ピックアップの場合、センサを駆動させるために、FFTアナライザより電流を供給する設定です。これによりセンサは正しい電圧信号を出力することができるようになります。
CCLD 設定の詳細については、以下の計測コラムををご参照下さい。
工学単位(EU, Engineering Unit)と単位校正 - 第1回 加速度検出器の場合 その1 -
2.各種計測設定を行い、波形を正しく計測できるようにする
センサからの出力、つまりFFTアナライザへの入力信号をFFTアナライザ上で正しくモニタするために、入力電圧レンジを設定する必要があります。また、この入力信号を音や振動の信号として扱うために、単位を変換する設定を行います。これを単位校正といいます。
単位校正の詳細については、以下の計測コラムをご参照下さい。
工学単位(EU, Engineering Unit)と単位校正 - 第5回 マイクロホン・騒音計の場合 その1-
工学単位(EU, Engineering Unit)と単位校正 - 第6回 マイクロホン・騒音計の場合 その2 -
3.アナログ信号を離散化し、正しくデジタル信号として扱えるようにする
FFTアナライザ内部での信号処理はデジタルで行われます。したがって、アナログの入力信号をデジタル化する必要があり、これを離散化(サンプリング)といいます。特に時間軸方向のサンプリングを標本化、振幅軸方向のサンプリングを量子化と呼びます。アナログ信号を標本化する際に、「サンプリング定理」と呼ばれる法則に基づいてサンプリングします。ここでのFFTアナライザの設定は、周波数レンジです。
標本化の詳細については、以下の計測コラムをご参照下さい。
基礎からの周波数分析(7)-「時間信号のサンプリング」
4.短い時間間隔(解析フレーム)に分割する
FFTアナライザを用いてFFT演算を行うためには、現実的に有限のデータしか扱うことができません。したがって、前ステップで離散化されたデジタルデータをある有限の点数で区切って(時間窓で切り取るとも言います)計算します。ただし、任意の点で切り取るため、FFT演算するとリーケッジ誤差という演算誤差が生じます。その演算誤差を低減するために時間窓で切り取られたデータの始まりと終わりを滑らかにする(0 にする)ように重み付けをします。これを窓関数と呼びます。時間窓には様々な種類がありますが、連続的な音や振動の場合はハニング窓を用いるのが一般的です。 ここでのFFTアナライザの設定は、サンプル点数設定、および窓関数の設定になります。
窓関数の詳細については、以下の計測コラムをご参照下さい。
基礎からの周波数分析(14)-「DFT(FFT)と時間窓」
5.FFT解析を実行し、パワースペクトルを描画する
FFTアナライザを用いると、様々なFFT解析グラフを描画することができます。一般的には、パワースペクトルグラフにより、各周波数成分の大きさを確認します。
パワースペクトルの詳細については、以下の計測コラムをご参照下さい。
デジタル計測の基礎 - 第9回「いろいろな時間波形とスペクトル」
6.平均化処理を実行し、解析結果として保存する
解析フレームごとのパワースペクトルは時々刻々とその値が変化するため、ある解析時間、あるいは解析フレーム回数で平均化処理されたパワースペクトルを解析結果とするのが一般的です。
平均化処理の詳細については、以下の計測コラムをご参照下さい。
基礎からの周波数分析(15)-「パワースペクトル(その3)」
まとめ
今回はFFTアナライザを用いた一般的な周波数分析の手順をご紹介しました。FFTアナライザには、様々な計測に関する設定項目がありますが、接続しているセンサが駆動できるようにする、電圧の単位を音の単位へ変換する、アナログの信号をデジタルの信号へ変換する等、順序立てて計測の流れを整理しておくことが肝心です。その上で、各ステップに合わせた設定をFFTアナライザで行うようにしましょう。
(2021年1月20日発行メールマガジンより抜粋)