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計測に関するよくある質問から- 第30回「加速度検出器と検出器ノイズについて」

当計測コラムでは、当社お客様相談室によくお問い合わせいただくご質問をとりあげ、回
答内容をご紹介しています。

加速度検出器のよくあるお問い合わせの1 つに、測定できる最小の加速度、振動速度、変
位に関するものがあります。暗振動や電気ノイズなどが一切なく、解析装置の自己ノイズ
が十分小さい場合、測定できる最小の加速度値は、加速度検出器の検出器ノイズ(電荷出力
型加速度検出器の場合はチャージアンプの入力換算ノイズ) により決まります。

加速度検出器の検出器ノイズ

プリアンプ内蔵型加速度検出器の検出器ノイズは製品仕様に記載されています。弊社の3軸加速度検出器 NP-3574 や、NP-3578N20 の場合は、0.004 m/s2 (rms) 以下です。これは、振動が一切ない場合であっても、実効値 (rms) で 4 mm/s2 相当の電圧信号が出力されてしまうことを示します。

加速度の時間波形を測定する場合や、その時間波形の最大値等を測定する場合の誤差は約4
mm/s2 です。測定結果が 40 mm/s2 の場合、誤差は ±4 mm/s2 (±10 %)、測定結果が400mm/s2 であれば誤差は ±4 mm/s2 (±1 %) です。10 % 程度の測定精度が許容できるのであれば、測定できる最小加速度は検出器ノイズの10 倍の40 mm/s2 になります。

実効値やパワースペクトルの加算平均を測定する場合、計算は加速度の二乗値でおこなわ
れるため、検出器ノイズの影響は小さくなります。測定結果が40 mm/s2 の場合、誤差は
1 − 􀶥1 − (4/40)2 = 約0.005 で 0.5 % になります。検出器ノイズの10 倍程度の大きさの加
速度であれば十分な精度が得られます。

測定できる最小の振動速度や変位についてですが、加速度値と振動速度値・変位値の関係
は振動の周波数分布に依存するため、加速度検出器の検出器ノイズから見積ることはでき
ません。実際の測定対象物の振動を測定して検証する必要があります。

電荷出力型加速度検出器とチャージアンプのノイズ

電荷出力型加速度検出器を使用する場合のノイズはチャージアンプの入力換算ノイズで決
まります。弊社のチャージアンプ CH-1200A の入力換算ノイズは 0.05 pC (rms) 以下です。
弊社の加速度検出器 NP-2106 の感度は約 0.035 pC/(m/s2) ですので、NP-2106 との組み合
わせでは 0.05 pC は 1.43 m/s2 に相当します。測定できる最小加速度を検出器ノイズの10倍とするとNP-2106 で測定できる最小加速度は 14.3 m/s2 になります。NP-2106 は落下試
験・衝撃試験用で大きな加速度を測定するための検出器ですので小さな加速度の測定には
むきません。

検出器ノイズの時間波形

加速度検出器 NP-3574 を棚の上に置いて測定したノイズの時間軸波形を 図1 に示します。
この信号には加速度検出器自体の検出器ノイズの他、暗振動、電気ノイズなどが含まれて
います。NP-3574 の感度は 10 mV/(m/s2)、検出器ノイズは0.004 m/s2 (rms) 以下です。周
波数レンジ 10 kHz、電圧レンジ 31.6 mVrms で測定しました。

図1 の左上が加速度検出器から出力されたノイズ信号の時間軸波形です。低周波の暗振動・
電気ノイズを含んでおり、ピーク値は 16.742 m/s2 あります。左下は、左上波形を二重積分
して変位波形をもとめたものです。元の信号の低周波成分の影響で右下がりの波形になっ
ており、最小値は -440 μm を示しています。これは実際に発生している変位の波形ではあ
りません。低周波ノイズが含まれている信号を数値積分した際に得られる正しくない波形
です。

図1 の右上は、逆FFT 機能を利用して 25 Hz 以下の成分をカットした加速度の時間波形で
す。ピーク値は 5.079 m/s2 でした。右下は25 Hz 以下の成分をカットし二重積分して求めた
変位波形でピーク値は 0.058 μm とかなり小さな値になりました。

実際の測定では、加速度検出器の検出器ノイズの他に、暗振動や電気ノイズの影響をうけ
ますので、ノイズ信号を実測し、測定できる加速度や変位の値を確認する必要があります。

  • 図 1 検出器ノイズの時間軸波形 左上: 加速度波形、右上: 帯域制限加速度波形、 左下: 二重積分波形、右下: 帯域制限二重積分波形
    図 1 検出器ノイズの時間軸波形
    左上: 加速度波形、右上: 帯域制限加速度波形、
    左下: 二重積分波形、右下: 帯域制限二重積分波形

検出器ノイズのパワースペクトル (1)

加速度検出器NP-3574 を棚の上に置いて測定したノイズのパワースペクトルを図2 (緑)に
示します。この信号には加速度検出器自体の検出器ノイズの他、暗振動、電気ノイズなど
が含まれています。NP-3574 の感度は 10 mV/(m/s2)、検出器ノイズは0.004 m/s2 (rms) 以下です。周波数レンジ 10 kHz、サンプル点数 2048 点、電圧レンジ 31.6 mVrms で10 秒間の加算平均をおこないました。

図2 の橙は、弊社のデータステーションDS-3000 の電圧レンジを 1 Vrms に設定したとき
のDS-3000 自体の自己ノイズです。NP-3574 のノイズよりも大きいため、電圧レンジが
1 Vrms のままでは小さな振動の測定はできません。測定対象の振動が小さければ、電圧レ
ンジを下げても入力オーバーはおきないはずです。電圧レンジは入力オーバーがおきない
範囲でなるべく小さく設定してください。

パワースペクトルは信号を周波数成分に分解したものですので、各周波数成分の値は検出
器の自己ノイズ (4 mm/s2) よりもかなり小さな値になっています。実際の暗振動、電気ノイ
ズ等の大きさは現場で実測して確認する必要があります。そのうえで、測定対象の振動が
ノイズよりも十分大きければ測定可能ですし、そうでなければ暗振動、電気ノイズを受け
にくい測定方法の検討が必要です。

ノイズのパワースペクトルに対し、一重積分、二重積分をおこなえば、振動速度や変位に
換算したノイズのスペクトルを算出することができます。測定したい振動速度や変位の値、
もしくは、測定対象の実際の振動速度や変位の測定結果と比べることで、測定が可能かど
うか検討することができます。

  • 図 2 ノイズのパワースペクトル (10 kHz レンジ) 緑: NP-3574、青: DS-3000 (31.6 mVrms レンジ) 、橙: DS-3000 (1 Vrms レンジ)
    図 2 ノイズのパワースペクトル (10 kHz レンジ)
    緑: NP-3574、青: DS-3000 (31.6 mVrms レンジ) 、橙: DS-3000 (1 Vrms レンジ)

検出器ノイズのパワースペクトル (2)

図3 に周波数レンジ 1 kHz でのNP-3574 のノイズと、DS-3000 (31.6 mVrms レンジ、1 Vrmsレンジ) の自己ノイズのパワースペクトルを測定した結果を示します。NP-3574 のノイズは加速度検出器自体の検出器ノイズの他、暗振動、電気ノイズなどが含まれています。

周波数レンジを下げたため、50 Hz や20 Hz 以下の成分が目立ちます。この測定をおこなっ
た場所は一般的な事務室ですが、それでも20 Hz 以下の低周波成分や、商用電源に起因する
50 Hz や 100 Hz の周波数成分が観測されています。測定対象の振動がこれらよりも十分大
きければ測定可能ですし、そうでなければ暗振動、電気ノイズを受けにくい測定方法の検
討が必要です。

ノイズのパワースペクトルに対し、一重積分、二重積分をおこなうと、振動速度や変位に
換算したノイズのスペクトルを表示することができます。測定したい振動速度や変位の値、
もしくは、測定対象の実際の振動速度や変位の測定結果と比べることで、測定が可能かど
うか検討することができます。

  • 図3 ノイズのパワースペクトル (1 kHz レンジ) 緑: NP-3574、青: DS-3000 (31.6 mVrms レンジ) 、橙: DS-3000 (1 Vrms レンジ)
    図3 ノイズのパワースペクトル (1 kHz レンジ)
    緑: NP-3574、青: DS-3000 (31.6 mVrms レンジ) 、橙: DS-3000 (1 Vrms レンジ)

まとめ

今回は、加速度検出器で測定できる最小の加速度、振動速度、変位についてご紹介しまし
た。

加速度検出器で測定できる最小の加速度値は、その仕様(検出器ノイズ)から求めることが
できます。ただ、測定現場では暗振動や電気ノイズの影響を受けるため、測定現場でノイ
ズを測定し、どの程度の加速度値まで測定できるかを確認する必要があります。

加速度値と振動速度値・変位値の関係は振動の周波数分布に依存するため、測定できる最
小の振動速度値・変位値を加速度検出器の仕様から求めることはできません。測定対象物
の振動の大きさや周波数分布を測定したうえで、どの程度の値まで測定できるかを確認す
る必要があります。

(2019年9月25日発行メールマガジンより抜粋)