本文にスキップする

Select your region & language

Global

Region

計測に関するよくある質問から- 第28回「時定数とレベル化について」

当計測コラムでは、当社お客様相談室によくお問い合わせいただくご質問をとりあげ、回答内容をご紹介しています。

騒音計や振動レベル計で音や振動の大きさを測定する際や、解析装置によりリアルタイムオクターブ解析(RTA解析)をおこなう際の設定パラメータの1つに "時定数" があります。

音や振動の瞬時波形は、細かく上下(プラスマイナス)にふれる波形ですので、瞬時波形そのものから音や振動の大きさを読み取ることはできません。音や振動の大きさを評価する場合は、瞬時波形から"実効値(2乗平均値、root mean square value, RMS)"を求め、さらに"実効値"をレベル化(デシベル値に変換)した値で評価します。

瞬時波形から "実効値" を求める方法には何通りかありますが、そのうちの1つに実効値検波動特性回路を使う方法があります。 "時定数" はこの回路の特性を定めるパラメータの1つです。

実効値検波動特性回路と対数演算回路

騒音計において音の瞬時波形から実効値検波動特性回路を使い実効値を求め、レベル化(デシベル値に変換)する処理のブロック図を図1に示します。音や信号の時間波形を2乗し、RC直列回路に通すと実効値の2乗値が得られます。図1では、実効値の2乗値を対数演算回路に入れてレベル化(デシベル値に変換)しています。

  • 図1 実効値検波動特性回路と対数演算回路
    図1 実効値検波動特性回路と対数演算回路

A/D変換器によりサンプリングされた時系列データに対して、この回路と同じ処理をおこなうことを考えます。A/D変換器等でサンプリングされた瞬時波形を𝑥(𝑖)とします。これを二乗するのは単に𝑥(𝑖)2を求める処理です。RC直列回路(動特性回路)の出力𝑦(𝑖)は式1で求めることができます。これは1サンプル前の回路の出力𝑦(𝑖−1)と瞬時波形の二乗値𝑥(𝑖)2を重みをつけて足したものです。時刻𝑖の音圧レベル𝐿(𝑖)は式2で求めることができます。𝑦(𝑖)の単位はPa2ですので平方根をとってから計算する場合は式2'になります。式2と式2'の計算結果は同じです。

                                           𝑦(𝑖)=(1−h0)∙𝑦(𝑖−1)+h0∙𝑥(𝑖)2       式1

  • 式2
    式2
  • 式2'
    式2'

ここで、τは時定数(s)、𝑓𝑠はサンプリング周波数(Hz)、p0は音圧の基準値で 20μPaです。ℎ0は式3で定義される定数です。時定数が125ms、サンプリング周波数が48kHzの場合、ℎ0は約0.0001667といった小さな値になります。

ここで、τは時定数(s)、𝑓𝑠はサンプリング周波数(Hz)、p0は音圧の基準値で 20μPaです。ℎ0は式3で定義される定数です。時定数が125ms、サンプリング周波数が48kHzの場合、ℎ0は約0.0001667といった小さな値になります。

  • 式3
    式3

RC直列回路とその出力

実効値検波動特性回路のベースになる回路はRC直列回路で、抵抗(R)とコンデンサ(C)を直列に接続した回路です(図2)。ここで、τ=𝑅𝐶がこの回路の時定数と呼ばれる値です。

  • 図2 RC直列回路
    図2 RC直列回路

RC直列回路に、1周期だけの矩形波パルスを入力したときにRC直列回路の応答波形を図3に示します。パルスが入ってから時定数τ秒後に約0.63になり、指数関数的に1に近づきます。パルスがとぎれたあとはτ秒後に約0.37になり、指数関数的に0に近づいていきます。

  • 図3 矩形波パルス(青)に対するRC直列回路の応答波形(赤)
    図3 矩形波パルス(青)に対するRC直列回路の応答波形(赤)

バースト信号の音圧レベルの計算

継続時間1秒、周波数 1 kHz、片振幅1.41 Pa (音圧レベル 94 dB)のバースト信号と、そこから求めた音圧レベルを図4に示します。上段が瞬時音圧波形、中段が動特性回路の出力(音圧の二乗値)、下段が音圧レベル (dB) です。時定数はF (125ms) です。

  • 図4 バースト信号とその音圧レベル
    図4 バースト信号とその音圧レベル

動特性回路の出力はバースト信号が止まってから0.5秒程度でほぼゼロ (0.0183 Pa2) になっています。音圧レベルは 17.37 dBしか下がっていません。ただこれらは同じ値を音圧二乗値でみているかデシベル値でみているかの違いだけです。バースト信号が止まった後の音圧レベルは 125 msごとに約4.34 dBの傾きで下がっていきます。1秒で約34.74 dBさがります。

表1に、図4の波形の0.0625秒ごとの値を示します。1秒目から2秒目まで片振幅 1.41 Pa (音圧レベル 94 dB)の正弦波を加えています。図3と見比べていただくと分かるように、バースト信号が入った125 ms(時定数)後には回路出力は0.6320 Pa2 (91.99 dB) に達しています。500 ms後には0.9815 Pa2 (93.90 dB) になり、信号の音圧レベル (94 dB) とほぼ同じ値になります。バースト信号が止まった後は、回路の出力(Pa2)は125 ms(時定数)ごとに 0.3677 倍になる傾きで小さくなっていきます。これを音圧レベル(dB)であらわすと、125 ms(時定数)ごとに 4.34 dB下がる傾きになります。

表1 バースト信号とその音圧レベル

まとめ

今回は、実効値検波動特性回路を使って瞬時波形から実効値を算出する方法と、バースト信号が入力された場合の回路の出力値をご紹介しました。

RC直列回路に矩形パルスが入力されると、回路の時定数と同じ時間経過後に出力はパルスの振幅の約0.63倍に達します。パルスがとぎれると、回路の出力は時定数と同じ時間で約0.37倍になる傾きで下がっていきます。

騒音計等の実効値検波動特性回路も同じ回路を使っていますので同じ特性を示します。音圧二乗値(Pa2) でみると、時定数と同じ時間で 0.37 倍ずつ下がっていきますので、すぐに非常に小さい値になります。これを音圧レベル(dB) であらわすと時定数と同じ時間で4.34 dBずつしか下がっていきません。

バースト信号や衝撃音がとまっても時定数の影響で音圧レベルはすぐには下がりません。時定数が125 msであれば 1秒後でも 34.74 dBしか下がりません。そのため、繰り返し発生する衝撃音等の1回ごとの音圧を正確に測定しようとするには、衝撃音等の間隔を 0.5秒~1秒程度あける必要があります。時定数を125 msではなく短い時定数に変更してもかまわない測定であれば、時定数を10msにすれば、10 msで4.34 dB、100 msで 43.43 dB下がりますので、音の間隔が短くても影響を受けなくなります。

(2019724発行メールマガジンより抜粋)