当計測コラムでは、当社お客様相談室によくお問い合わせいただくご質問をとりあげ、回答内容をご紹介しています。
加速度検出器で収録した加速度信号を FFT アナライザやデータステーション等の解析装置で分析する場合は、加速度検出器の感度値を直接入力する場合と、加速度検出器用の感度校正器を使って校正をおこなう場合があります。
接続や設定を誤った状態で、また、装置の故障・ケーブルの断線などに気がつかないままに校正をおこなってしまうと、一見正しい値が表示されていても実際には正しい測定がおこなわれない状況になります。今回は電荷出力型加速度検出器に関して、正しくない校正の事例をいくつか紹介します。
加速度検出器用の感度校正器は、決まった大きさ・周波数(159.2 Hz、10 m/s2 など)で振する加振器です。加速度検出器をその加振器にとりつけ、解析装置で加速度検出器から出力される信号の電圧の大きさを確認すれば加速度検出器の感度がわかります。加速度検出器・アンプ・解析装置の動作確認になりますし、経年変化による感度のずれ、解析装置の入力特性のずれを補正した感度値を得ることができます。
正常な校正信号
電荷出力型加速度検出器と解析装置の接続例を図 1 に示します。
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図 1 電荷出力型加速度検出器と解析装置の接続例
当社の DS-3000 データステーションや、CF-9000 FFT アナライザ等には、電荷出力型加速度検出器を直接接続することはできません。当社の CH-1200A チャージアンプや、CH-6130/6140 チャージコンバータといった製品を間に接続し、加速度検出器が出力する電
荷信号を電圧信号に変換する必要があります。
プリアンプ内蔵型加速度検出器であれば直接接続することができます。当社の加速度検出
器のうち NP-2000 シリーズは電荷出力型、NP-3000 シリーズはプリアンプ内蔵型(電圧出力
型)です。電荷出力型とプリアンプ内蔵型の一番簡単な見分け方は、加速度検出器に付属す
る出荷特性表を確認することです。感度(Sensitivity)の単位が pC/(m/s2)のものは電荷出力型です。プリアンプ内蔵型の感度(Sensitivity)の単位は mV/(m/s2) です。
当社の NP-2710 電荷出力型加速度検出器を、CH-6130 チャージコンバータ経由で、DS-3000データステーションに接続して、加速度検出器用感度校正器の 10 m/s2、159.2 Hz の校正信号を測定した結果を図 2 に示します。感度校正器で確認したところ電荷出力型加速度検出器の感度は 0.297 pC/(m/s2)でした。CH-6130 チャージコンバータの利得は 1.0mV/pC ですので、加速度検出器と CH-6130 チャージコンバータをあわせた感度は 0.297mV/(m/s2) になります。校正信号の大きさは実効値で 10 m/s2、両振幅で 28.2 m/s2 ですので、校正信号の電圧は実効値で 2.97 mV、両振幅で 8.40 mV になる計算です。電圧波形(上段)の最大値と最小値の差は 8.45 mV でほぼ一致しています。
感度校正器で校正した加速度波形(中段)の最大値と最小値の差は 28.4 m/s2 で、校正信号の両振幅の 28.2 m/s2 とほぼ一致します。パワースペクトル(下段)の 160 Hz 成分とオーバーオールの値はそれぞれ、9.80 m/s2 、10.0 m/s2 で校正信号の大きさとほぼ一致します。
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図 2 正常な校正信号(上段: 電圧波形、中段: 加速度波形: 下段: パワースペクトル)
CCLD(定電流駆動)を OFF にした場合
CCLD(定電流駆動)とは解析装置等からセンサやプリアンプに電源を供給する仕組みの 1 つです。メーカによっては IPC、IEPE と呼んでいますが同じ仕組みです。CH-6130/6140 チャ
ージコンバータは CCLD 電源により動作しますので、使用する場合は解析装置等から CCLD
電源を供給する必要があります。
DS-3000 からの CCLD 電源供給を OFF にした状態で測定した校正信号を図 3 に示します。
校正信号の電圧波形(上段)の最大値と最小値の差は 70.8 μV で、本来の値(8.40 mV)に比べると非常に小さい値です。ただ、グラフの縦軸をオートスケール等に設定していると正弦波に近い波形が表示されてしまうため、設定誤りに気がつかずに校正をおこなってしまう可能性があります。
この状態で感度校正器による校正をおこなってしまった場合の加速度波形とそのパワースペクトルを図 3 の中段、下段に示します。総合感度は 0.297 mV/(m/s2)なので、EU 値は2.97E-4V/EU 程度の値になるはずですが、実際の EU 値は 2.58E-5 V/EU です。これは、加速度検出器の感度が 0.0258 mV/(m/s2)しかないことを示しますので、正しくない値です。
電圧波形(上段)と加速度波形(中段)には DC オフセット(直流成分)がのっています。DC オフセットの大きさは -189.2μV、 -7.36 m/s2 です。0 V が入力された場合、解析装置はそれを0V と表示すべきですが、実際にはわずかに 0 V からずれた値を表示します。これが DC オフセット誤差です。図 3 によると DC オフセットは 189.2μV ですが、誤った校正をおこなってしまったために、あたかも 7.36 m/s2 もの振動が発生しているかのような加速度波形が得られてしまいます。これは校正操作の誤りと DC オフセット誤差によるものですので、実際に発生している振動ではありません。
また、図 3 の波形では目立ちませんが、CCLD 電源供給を OFF にしたまま測定をおこなうと、ノイズがのった波形が得られる場合もあります。
感度校正器により校正をおこなう場合は、校正前の電圧波形を確認すれば、その振幅が異常に小さいため、こういった設定誤りに気づくことができます。
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図 3 CCLD OFF 時の校正信号(上段: 電圧波形、中段: 加速度波形: 下段: パワースペクトル)
プリアンプ内蔵型加速度検出器を使用する場合も同様に解析装置から CCLD 電源を供給する必要があります。上記のケースと同様、CCLD 電源供給を OFF にしたまま校正・測定をおこなうと、電圧が非常に小さく、DC オフセットやノイズののった信号が得られます。そのような場合は、お使いの加速度検出器が CCLD 電源を必要とするものかを確認したうえで、設定変更等をおこなってください。
電荷出力型加速度検出器を直接接続した場合
当社の DS-3000 データステーションや、CF-9000 FFT アナライザ等には、電荷出力型加速度検出器を直接接続することはできません。CH-6130/6140 チャージコンバータや CH-1200Aチャージアンプ等を間に入れて接続する必要があります。
チャージコンバータやチャージアンプは、加速度検出器から出力された電荷信号を電圧信号に変換するアンプであり、入力側は ミニチュアコネクタ(No. 10-32 UNF)で、出力側はBNC コネクタです。一方で、単にセンサケーブルのコネクタを変換するだけの NP-0021 ミニチュア/BNC 変換アダプタといった製品もあります。NP-0021 ミニチュア/BNC 変換アダプタはチャージコンバータに形が似ていますが、チャージコンバータの代わりにはなりません。
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図 4 CH-6130 チャージコンバータ(左)と、NP-0021 ミニチュア/BNC 変換アダプタ(右)
当社の NP-2710 電荷出力型加速度検出器を、ミニチュア/BNC 変換アダプタで、DS-3000 デ
ータステーションに接続して、加速度検出器用感度校正器の 10 m/s2、159.2 Hz の校正信号
を計測した結果を図 5 に示します。これは正しい接続・計測方法ではありません。
正しく接続した場合の電圧信号の両振幅値は 8.40 mV になるはずです。電圧信号(上段)の最
大値と最小値の差は 6.37mV で一見正常な値が得られています。
使用した電荷出力型加速度検出器の感度は 0.297 pC/(m/s2)ですので、EU 値は 2.97E-4 V/EU程度の値になるはずです。この状態で感度校正器による校正をおこなうと EU 値は2.26E-4V/EU になります。これは加速度検出器の感度 0.226 mV/(m/s2)に相当します。感度の単位は異なるのですが、数値にだけ着目してしまうとおおむね桁があっている値が得られてしまっています。そのため、正しい接続をおこなっていないことに気が付かないと、このまま校正・計測を進めてしまう可能性があります。
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図 5 電荷出力型を直結した場合の校正信号
(上段: 電圧波形、中段: 加速度波形: 下段: パワースペクトル)
電荷出力型加速度検出器を直接接続した場合に表示される波形について
電荷出力型の加速度検出器をチャージコンバータ・チャージアンプを通さずに直接解析装置に接続すると一見正しそうな波形が表示されることがあります。
片振幅がQ[C]で、周波数 f の電荷信号の時間波形は式 1 であらわされます。ここで t は時
間です。
q(t) = Q × sin (2πft) 式 1
電荷信号を微分すると式 2 のように電流信号 i(t)が得られます。
式 2
この電流信号を入力インピーダンスR[Ω]の解析装置に入力して得られる電圧信号 v(t)を式3 に示します。
v(t) = R × i(t) = 2πf × R × Q × cos (2πf) 式 3
入力インピーダンスRを 1 MΩ、周波数 fを 159.2 Hz とすると式 4 が得られます。
v(t) = 2π × 159.2 × 1000000 = 109 × Q × cos (2πf) 式 4
大きさが Q = 1 pC の電荷信号が入力されると、解析装置で観測される電圧信号の大きさは
その 109 倍の 1 mV になります。このため、このような誤った校正をおこなって得られた
感度値は、数値はそのままで単位を pC/(m/s2)から mV/(m/s2)に変えた値とほぼ一致してしまいます。
ただ、pC 単位の値を mV 単位に読み変えると値が一致するのは振動の周波数が 159.2 Hz の場合だけであり、それ以外の周波数では一致しません。この状態で実際の加速度信号を測定しても正しい結果は得られませんので、チャージコンバータ等を使用して正しく接続する必要があります。
まとめ
加速度検出器で収録した加速度信号を FFT アナライザやデータステーション等の解析装置で分析する際に、加速度検出器用の感度校正器を使って校正をおこなう場合があります。
設定や接続に誤りがあるまま校正をおこなってしまうと、一見正しい加速度信号が観測されるようになりますが、実際の測定では正しい結果は得られません。
今回は加速度検出器で正しい測定結果が得られない場合の原因となりうる、CCLD 電源の供給し忘れと、電荷出力型加速度検出器をチャージコンバータ等を使わずに接続しているケースについて、どのような校正信号が得られるかをご紹介しました。正しい接続・設定をおこなっても、校正や測定がうまくいかない場合には、ケーブルの断線、加速度検出器や解析装置の故障、電気ノイズなどの原因が考えられるため、1つ1つ確認をおこなっていってください。
(2018年12月19日発行メールマガジンより抜粋)