前回は、回転体の音振動計測手法としてよく使われる「トラッキング解析」についてお話しましたが、今回は、回転体の振動対策で重要となる「バランシング計測」についてお話します。
一般に発電プラントなどの回転機械設備の異常原因の40%程度が「振動」であり、その振動の原因の30%前後がアンバランシング(不釣り合い)であると言われています。そのため、回転機械の設置時や保守時において、バランシング修正は極めて重要な振動制御の方法となります。ここでは、回転体の現場で行えるフィールドバランシング手法の原理と使い方を簡単に説明します。
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図1 ロータの回転遠心力によるアンバランス
F=Meω2
ここで、F:遠心力(N)
M:ロータ質量(kg) e:偏重心
ω:角周波数(rad/s) 回転速度をn(r/min)とすると
f:振動数(Hz)
図1 ロータの回転遠心力によるアンバランス
アンバランスとは、図1にあるようにロータの回転中心(図のO)と重心(図のG)がずれた状態でそれにより遠心力が生じて、異常振動が発生する現象で、その振動周波数は、回転1次成分の周波数となります。図1の式(1)からわかるように、角周波数(あるいは回転速度)の2乗に比例して遠心力が大きくなりますので、高速回転のとき、バランシング修正はとても重要になります。
以下、1つのロータでバランシングをとる基本的な手法の手順を説明します。
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図2 バランス修正の考え方
- 初期状態での振幅と位相を求め、それをFとする。
F=(A0、θ0) - 次にロータの任意の点(角度を0°とする)に質量mtの試し重りを取り付け、その時の状態の振幅と位相を求め、それをF+Tとする。
F+T=(A1、θ1) - これから、ベクトル計算で試し重りの振幅と位相を求める。
T=(A2、θ2) - 初期状態のベクトルFと試し重りでのベクトルTから修正点の角度を計算して、 試し重りを外して修正重りmcをつける。
ここで、
修正点角度は、試し重りを付けた点(角度0°)を基準にして
(θ0−02)±180° - 修正重りを付けた効果を確認する。
ここで、振幅と位相とは、回転1次成分の周波数に相当する正弦波のそれらを求めることになります。
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図3 アンバランスに起因する振動と基準位置
このように、バランシング計測には、回転1次成分の振動波形の振幅と位相(基準点からの)を同時に精度良く求めることが必要になります。回転1次成分の正弦波の振幅と位相を計測するためにFFTアナライザを使います。具体的には、基準位置信号をトリガー信号として「フーリエスペクトルの次数比分析」を行います。
FFTアナライザにおけるフーリエスペクトルの位相は、余弦波を基準として求められます。今、回転1次成分の振動波形をx(t)=Acos(ωt+φ)とすると、図4において振幅は同じAですが、余弦波の位相は0°、正弦波の位相は-90°となります。
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図4 FFTアナライザにおける余弦波と正弦波の位相次
次数比分析とは、フーリエスペクトルの横軸(周波数軸)を通常の周波数としないで、回転1次を基準とした次数とする分析手法です。基準信号(1回転1パルス)と同期したサンプリングを行うことにより、FFTの時間窓による誤差を減らし、1次の成分を回転速度に関係なく一定のスペクトルライン数に固定させることができます。
それでは、DS-3000シリーズのフィールドバランシングソフトDS-0227Aを使って具体的に回転体のバランシング計測をやってみたいと思います。
ここでは、簡単のために1面1条件1速度で行います。回転体とDS-3000計測システムとの接続は、図5のように行います。センサは、軸受け上に取り付けた接触式加速度PUと光学式回転検出器を基準位置センサとして使っています。
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図5 バランシング計測の接続例
図6が、条件設定の画面です。以下の計測条件で行います。
- 1面1条件 Ch1:加速度PU
- 最大分析次数 50次 位相分解能:約2.8°
- 分割数 16/360° 22.5°分割
- 試し重りの状態 取り外す
- 回転速度モード 1速度(ここでは、2400 r/min)
- 平均回数 32回
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図6 バランシングモードの条件設定
先に書いた手順通りに計測を行います。
- 初期の不釣合いを計測します。 ==> イニシャル試験(図7)
計測結果 回転速度 2400 r/min
加速度振幅 1.662 m/s2
位相 -74.7°
- 次に、角度0°の位置に質量2.1gの試し重りを取り付け、その時の状態の
振幅と位相を計測します。 ==> トライアル試験(図8)
計測結果 回転速度 2400 r/min
加速度振幅 1.46 m/s2
位相 -89.6°
図8 トライアル試験 - 上記の計測結果から、バランシング修正点の位置と修正重りを計算します。
結果:図9
試し重りを付けた点を角度0°として回転方向と逆回りに56.2°の点に7.7gの修正重りをつける。
ただし、56.2°は角度分割点ではないので、角度分割点に合うように以下の2つの点に修正重りをつける。
No.2(45°) に4.0 g
No.3(67.5°) に3.9 g
図9 バランシング修正点 - 試し重りを外して、修正重りを取り付け計測を行い、バランシングの 結果を確認します。 ==> 確認試験(図10)
ここでは、No.2に 約5 g、No.3に 約2 gとしました。
測定結果 回転速度 2400 r/min
加速度振幅 0.180 m/s2
位相 -108°
アンバランス量(加速度振幅)が、初期値1.66 m/s2から0.18 m/s2となり、約1/10ほど改善されたことが分かります。
図10 確認試験
最後にまとめです。
- 回転機械の設置時や保守時において、バランシング修正はとても重要な振動制御の方法です。
- アンバランスとは、ロータの回転中心と重心がずれた状態でそれにより遠心力が生じて異常振動が発生する現象で、その振動周波数は、回転1次成分の周波数となります。
- フィールドバランシングの手法は、最初にイニシャル試験を行い、その後に試し重りを付けトライアル試験を行い、それらの結果から修正点の位置と修正重りの値を算出します。そのあと、確認試験を行います。
- バランシング計測には、回転1次成分の振動波形の振幅と位相(基準点からの)を同時に精度良く求めることが必要になります。
- 回転1次成分の正弦波の振幅と位相を計測するためには、FFTアナライザを使い、基準位置信号をトリガー信号として「フーリエスペクトルの次数比分析」を行います。
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【参考】
牧 修一 著
「振動法による設備診断の実際」日本プラントメンテナンス協会(1985年)
城戸 健一 編著
「FFTアナライザ活用マニュアル」日本プラントメンテナンス協会(1984年)
(Hima)
(2018年3月22日発行メールマガジンより抜粋)