音とは、空気等を伝わる波の1 種で、その大きさは圧力の変動(音圧)として観測されます。音圧の単位はパスカル(Pa)ですが、通常音の大きさを表すには音圧をレベル化した音圧レベルという値が使われます。音圧レベルの単位はデシベル(dB)です。
音を FFT アナライザ等の解析装置で解析する場合、センサにはマイクロホンや騒音計が使われます。この際、解析結果が正しい音圧レベルの値で表示されるように解析装置を校正します。
騒音計(サウンドレベルメータ)を使用して解析する場合、音響校正器があれば音響校正器を使用して騒音計と解析装置を校正します。音響校正器はある定まった音圧 (114dB や94dB など)を発生させる装置で、騒音計の先端のマイクロホンに差し込んで使用します。
今回は音響校正器を使用して騒音計と解析装置を校正する手順をご紹介します。
騒音計と解析装置の接続
騒音計に AC(交流)出力端子と、DC(直流)出力端子がある場合は、AC 出力端子の信号を解析装置に接続します。出力端子に出力する信号を騒音計本体の設定により AC か DC かに切り替えられる場合は、AC に切り替えます。
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図 1 騒音計と解析装置の接続例
当社騒音計 LA-3260/3560/3570 や LA-1410/1440/4440 では、出力端子に AC-Z という信号を出力することもできます。これは、騒音計で選択している周波数重み付け(A 特性 / C 特性 / Z 特性)には連動せずに、つねに出力端子からは Z 特性 (FLAT 特性)で重み付けられた信号を出力する機能です。騒音計には A 特性音圧レベルを表示しておきながら、解析装置では Z 特性 (FLAT 特性)の信号を解析したい場合などに使用できます。
騒音計と解析装置の校正手順
騒音計と解析装置の校正する手順は次の通りです。騒音計及び解析装置の操作方法の詳細は、それぞれの取扱説明書等を参照ください。また、音響校正器の操作についても、音響校正器の取扱説明書をご確認ください。
- 付属の試験成績書や本体の刻印で音響校正器の発生音圧レベル(校正値)を確認します。発生音圧レベルを大気圧補正が必要な場合は大気圧を測定し、気圧による補正をおこなった値を校正値とします。
- 騒音計に音響校正器使用時の補正値が定められている場合は、(1)の値に補正値を加えた値を校正値とします。当社騒音計の LA-3260/3560 の補正値は-0.1 dB、L-3570の補正値は+0.2 dB です。補正値が定められていない騒音計では補正は不要です。
- マイクロホンを差し込んでいない状態で音響校正器の電源を入れ動作を確認します。確認後は電源を切ります。
- 騒音計を設定します。
周波数重み付け特性は C もしくは Z(FLAT)に設定します。レベルレンジは通常、校正値がレベルレンジの範囲におさまるレンジのうち一番低いレベルレンジに設定します (校正値が 114 dB であれば、50 - 120 dB レンジなど)。レベルレンジにワイドレンジとノーマルレンジの 2 種類がある場合は測定の際に使用するのと同じ種類のレンジを選びます。 - 解析装置を設定します。
周波数レンジは実際に測定する際と同じレンジに設定します。ただし、周波数レンジが内部校正信号の周波数(通常は1 kHz)と同程度かそれ以下の場合は、その2 倍(2 kHz)以上のレンジに設定します。アナログフィルタは Z(FLAT)もしくは C に設定します。また、平均化時間は 20秒に設定します。 - 解析装置の単位校正設定で、単位名を“Pa”、EU タイプは“V/EU”、 0 dB 基準値は “2E- 5 ”(20 μPa)、オフセットは“0 dB”に設定します。0 dB 基準値が設定できない解析装置では、単位名は空白もしくは“spl”に設定します。
- 騒音計先端のマイクロホンを音響校正器にゆっくり差し込みます。このとき
マイクロホンは正確に奥まで挿入してください。校正器内部の圧力が安定するまで 30 秒以上待ちます。 - 音響校正器の電源を ON にします。
- 解析装置の電圧レンジを校正信号の大きさに合わせて調整します。通常、適切な電圧レンジは 1 Vrms です。
- 音響校正器の出力が安定してから解析装置のスタートボタンを押し、20 秒間の平均化をおこないます。なお、音響校正器は一定時間操作しないと自動停止するものがありますので、自動停止した場合は再度実行してください。
- サーチカーソルをオーバーオール(リアルタイムオクターブ分析器の場合は
オールパス)に合わせ、その値が校正値になるように単位校正を実行します。 - 再度解析装置のスタートボタンを押し、オーバーオール値(またはオールパス値)が校正値と同じ値になるか確認します。
- 解析装置の単位校正設定で EU 値(V/EU 値)を確認し、記録します。また、騒音計のレベルレンジから算出したEU 値(後述)とほぼ一致することを確認します。
- 音響校正器の電源を切り、騒音計を取り外します。
- 騒音計の設定を元に戻します。
- 解析装置の周波数レンジ、アナログフィルタ、平均化時間、電圧レンジなどを元の設定に戻します。
- 対象物から発生する音を実際に測定して、騒音計のレベルレンジをオーバーが発生しない一番小さなレンジを設定します。
- 測定時の騒音計レベルレンジ値(17)の上限値と、校正時のレベルレンジ値(4)の上限値の差を、解析装置の単位校正設定のオフセットに設定します。
測定時のレベルレンジが 20 - 90 dB、校正時のレベルレンジが 60 - 120 dB であればオフセットを 90 - 120 = -30 dB に設定します。
解析装置の単位校正設定にオフセットの機能がない場合はレベルレンジを変えた分、EU 値を補正します。測定時のレベルレンジが校正時より10 dB 低い場合はEU 値(V/EU 値)を3.1623 倍にします。20 dB 低い場合は10 倍に、30 dB 低い場合は31.623 倍、40 dB 低い場合は100 倍にします。
騒音計のレベルレンジからEU 値を算出する方法(0 dB 基準値を20 μPa に設定した場合)
上述の単位校正をおこなった際の EU 値は、騒音計の AC 出力の仕様から算出することができます。なお、AC 出力の出力電圧には器差がありますので、この方法で算出される EU 値は概算値です。
解析装置の単位校正設定の 0 dB 基準値を 20 μPa に設定した場合の EU 値(V/EU 値)、 EU 値(EU/V 値)の計算式と計算例を表 1 に示します。計算例はレベルレンジの上限値(フルスケール値)の音が入ったときに AC 出力に 0.707 Vrms が出力される騒音計の場合のものです。得られた EU 値(V/EU 値)の単位は V/Pa で 1 Pa あたり何 V が出力されるかを示します。EU 値(EU/V 値)の単位は Pa/V で 1V が何 Pa に相当するかを示します。
表 1 EU値の計算例 (0 dB 基準値を 20 μPa に設定した場合)
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レベルレンジ(上限値) |
フルスケール時 AC出力電圧 |
V/EU 値(V/Pa) |
EU/V 値(Pa/V) |
| レンジ値(dB) |
出力電圧(Vrms) |
出力電圧 / 10^((レンジ値−20)/20) × 2×10⁻⁵ |
10^((レンジ値−20)/20) × 2×10⁻⁵ / 出力電圧 |
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120 dB |
0.707 Vrms |
0.03535 |
28.29 |
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110 dB |
0.707 Vrms |
0.1118 |
8.946 |
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100 dB |
0.707 Vrms |
0.3535 |
2.829 |
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90 dB |
0.707 Vrms |
1.118 |
0.8946 |
騒音計のレベルレンジからEU 値を算出する方法(0 dB 基準値が設定できない場合)
上述の単位校正をおこなった際の EU 値は、騒音計の AC 出力の仕様から算出することができます。なお、AC 出力の出力電圧には器差がありますので、この方法で算出される EU 値は概算値です。
解析装置の単位校正設定で 0 dB 基準値が設定できない場合、もしくは、0 dB 基準値に 1 を設定した場合の EU 値(V/EU 値)、EU 値(EU/V 値)の計算式と計算例を表 2 に示します。計算例はレベルレンジの上限値(フルスケール値)の音が入ったときにAC出力に0.707 Vrmsが出力される騒音計の場合のものです。得られた EU 値(V/EU 値)の単位は 20 μPa あたり何 V が出力されるかを示します。EU 値(EU/V 値)はその逆数です。
表 2 EU値の計算例 (0 dB 基準値が設定できない場合)
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レベルレンジ(上限値) |
フルスケール時 AC出力電圧 |
V/EU 値(V/Pa) |
EU/V 値(Pa/V) |
| レンジ値(dB) |
出力電圧(Vrms) |
出力電圧 / 10^((レンジ値−20)/20) |
10^((レンジ値−20)/20) / 出力電圧 |
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120 dB |
0.707 Vrms |
7.070×10⁻⁷ |
1.414×10⁶ |
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110 dB |
0.707 Vrms |
2.236×10⁻⁶ |
4.473×10⁵ |
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100 dB |
0.707 Vrms |
7.070×10⁻⁶ |
1.414×10⁵ |
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90 dB |
0.707 Vrms |
2.236×10⁻⁵ |
4.473×10⁴ |
(2014年12月18日発行メールマガジンより抜粋)
まとめ
今回は、騒音計(サウンドレベルメータ)を FFT アナライザ等の解析装置に接続し解析する場合に、音響校正器を使用して単位校正をおこなう手順をご紹介しました。