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工学単位( EU, Engineering Unit)と単位校正 - 第4回 加速度検出器の場合 その4 -

通常、FFTアナライザ等の解析装置に入力できる信号は電圧信号です。

加速度・速度・力・音圧などの物理量を測定する場合は、それらの物理量を電圧に変換する検出器(センサ)を使用します。例えば、加速度の大きさ(m/s2)に比例した電圧信号を出力する加速度検出器があれば、その比例係数(感度)を使って、測定した電圧値を加速度に換算して表示する事ができます。振動の大きさを測定する際は、その大きさを加速度(m/s2)の値で表現する場合もありますが、デシベル値(dB)という値で表現することもあります。

今回は、振動の大きさをデシベル値(dB)という値で表現するための設定方法をご紹介します。

加速度のデシベル表示

加速度値をデシベル値(L)で表現する際の一般的な計算式は次の通りです。

  • 加速度のデシベル表示_No.1

a : 加速度(m/s2)、a0 : 基準加速度(m/s2

JIS 1510 「振動レベル計」で定義された振動加速度レベルを求める際の基準加速度は、a0 = 1×10-5 (m/s2) が使われますが、他の規格等では別の基準加速度の値を使う場合もあります。

また、規格等に基準加速度の値が明記されている場合はよいのですが、しばしば「10 m/s2を120 dBとする」といった表現になっている場合もあります。この場合は、式(1)を変形した式(2)を使うと基準加速度a0を算出することができます。

  • 加速度のデシベル表示_No.2

(m/s2

たとえば、式(2)に、L = 120 dB、a = 10 m/s2を代入すると、a0 = 1×10-5 m/s2が求まります。

1 m/s2を0 dBとしたデシベル表示

当社FFTアナライザ等で解析し、パワースペクトル等をデシベル値で表示した場合、単位名(m/s2)にする以外特に設定しない場合は、1 m/s2を0 dBとしたデシベル値が表示されます。加速度検出器の感度が1.02 mV /(m/s2)であった場合のDS-0221 FFT解析ソフトウェア、DS-3000 リアルタイム音響振動解析ソフトウェアでの設定例を図1、図2に示します。

  • 図1 DS-0221で1 m/s2を0 dBに設定する場合(設定例)
    図1 DS-0221で1 m/s2を0 dBに設定する場合(設定例)
  • 図2 DS-3000で1 m/s2を0 dBに設定する場合(設定例)
    図2 DS-3000で1 m/s2を0 dBに設定する場合(設定例)

JIS C1510 「振動レベル計」における振動加速度レベル

JIS C1510 「振動レベル計」において、振動加速度レベルは「振動加速度の実効値を基準の振動加速度(10-5 m/s2)で除した値の常用対数の20倍」、と定められており、これは式(1)でa0 = 1×10-5 m/s2として計算したものに相当します。

DS-0221 FFT解析ソフトウェア等には、デシベル値表示する際の基準加速度を設定する機能がありませんので、加速度検出器の感度を基準加速度で補正した値を物理量(EU値)に設定します。加速度検出器の感度が1.02 mV /(m/s2)= 1.02×10-3 V /(m/s2)であった場合、これに基準加速度の1×10-5(m/s2)乗じた1.02×10-8を物理量(EU値)に設定します。単位名は空白にします。

DS-0221での設定例を図3に、実効値約10 m/s2(片振幅14 m/s2)の加速度信号を入力したときの時間軸波形とパワースペクトルの例を図4に示します。パワースペクトルは正しく120 dBを示していますが、時間軸波形のピーク値は1424598 と非常に大きな値を示しています。これは142万m/s2もの加速度が発生している事を示しているのではなくありません。この値に基準加速度の1×10-5(m/s2)をかけた1424598×10-5 = 約14.2 m/s2が実際に発生している加速度の値です。

  • 図3 DS-0221で1×10-5 (m/s2)を基準加速度に設定する場合(設定例)
    図3 DS-0221で1×10-5 (m/s2)を基準加速度に設定する場合(設定例)
  • 図4 DS-0221のパワースペクトルと時間軸波形(表示例)
    図4 DS-0221のパワースペクトルと時間軸波形(表示例)

DS-3000リアルタイム音響振動解析ソフトウェアでは、デシベル値表示する際の基準加速度を0 dB基準値として設定することができます。単位名をm/s2、EU値には加速度検出器の感度を設定し、0 dB基準値に基準加速度1 E-5 (1×10-5 m/s2)を設定します。なお、DS-3000ソフトウェアの旧バージョンには0 dB基準値が設定できないものがありますので、最新バージョンにバージョンアップしたうえでご使用ください。

図6に、実効値約10 m/s2(片振幅14 m/s2)の加速度信号を入力したときの時間軸波形とパワースペクトルの例を示します。パワースペクトルの値は約120 dB、時間軸波形のピーク値は約14 m/s2とどちらも正しい値が表示されています。

  • 図5 DS-3000で1×10-5 m/s2を基準加速度に設定する場合(設定例)
    図5 DS-3000で1×10-5 m/s2を基準加速度に設定する場合(設定例)
  • 図6 DS-3000のパワースペクトルと時間軸波形(表示例)
    図6 DS-3000のパワースペクトルと時間軸波形(表示例)

1 Gを60 dBとしたデシベル表示

標準重力加速度の値を加速度の単位として用いる場合、1.0 G = 9.806 65 m/s2と規定します。GはSI単位には含まれず、日本の計量法では商取引などでの使用が認められていませんが、過去に測定したデータとの比較のためにGという単位を使用するケースもあります。

ここでは、1 G を60 dBとしてデシベル表示する際の設定例を紹介します。

式(2)に、L = 60 dB、a = 1 Gを代入すると、基準加速度の値はa0 = 1×10-3 Gに設定すればよいことがわかります

DS-0221 FFT解析ソフトウェア等には、デシベル値表示する際の基準加速度を設定する機能がありませんので、加速度検出器の感度を補正した値を物理量(EU値)に設定します。加速度検出器の感度が1.02 mV /(m/s2)= 10.0 mV / G = 10.0×10-3 V / Gであった場合、これに基準加速度の1×10-3 Gを乗じた1.0×10-5を物理量(EU値)に設定します。単位名は空白にします。設定例を図7に示します。

  • 図7 DS-0221で1 Gを60 dBに設定する場合(設定例)
    図7 DS-0221で1 Gを60 dBに設定する場合(設定例)

DS-3000 リアルタイム音響振動解析ソフトウェアには0 dB基準値を設定する機能がありますので、単位名をG、EU値には単位をGに換算した加速度検出器の感度0.01(10.0 mV / G)を、0 dB基準値には基準加速度の0.001(1×10-3 G)を設定します。設定例を図8に示します。

  • 図8 DS-3000で1 Gを60 dBに設定する場合(設定例)
    図8 DS-3000で1 Gを60 dBに設定する場合(設定例)

9.8 m/s2を60 dBとしたデシベル表示

前項の方法の場合、時間軸波形の単位がGになってしまいますが、0 dB基準値の機能を持ったソフトウェアであれば、時間軸波形の単位はm/s2のまま、9.8 m/s2(1 G)を60 dBとすることができます。標準重力加速度は正確には9.806 65 m/s2ですが、加速度検出器を使った測定の場合それほどの精度はありませんので9.8 m/s2としてしまっても問題ありません。
式(2)に、L = 60 dB、a = 9.8 m/s2を代入すると、基準加速度の値はa0 = 9.8×10-3 m/s2に設定すればよいことがわかります

DS-3000 リアルタイム音響振動解析ソフトウェアで設定する場合は、単位名をm/s2、EU値には加速度検出器の感度を、0 dB基準値には9.8 E-3 (9.8×10-3 m/s2)を設定します。設定例を図9に示します。

  • 図9 DS-3000で9.8 m/s2を60 dBに設定する場合(設定例)
    図9 DS-3000で9.8 m/s2を60 dBに設定する場合(設定例)

校正用の加振器を使用して校正する方法

加速度検出器用の感度校正器や校正用の加振器は、あらかじめ決められた大きさ(例えば10m/s2)で振動する加振器です。加速度検出器をこの加振器の上に乗せれば、出力される信号(校正信号)から校正をおこなうことができます。

たとえば、基準加速度a0 = 1.0×10-5 m/s2、加速度の実効値a = 10 m/s2 の場合、これらを式(1)に代入すると、校正値のデシベル値Lは120 dBになります。

各ソフトウェアの単位・校正機能において、物理量(EU値)以外の設定を前項までの手順で設定したうえで、信号校正(EU / S.P)機能において校正値のデシベル値L(120 dB)で校正します。校正の手順は、Y軸設定をLINではなくLOGに設定することを除けば、前回(計測コラム第149号)でご紹介したものと同じです。

まとめ

前回までは振動の大きさを加速度(m/s2)の値で表現するための解析装置の設定方法をご紹介しましたが、今回は、振動の大きさをデシベル値(dB)という値で表現するための設定方法をご紹介しました。
今回までは振動測定に関する単位・校正方法をご紹介してきましたが、次回からは音の測定における単位・校正の方法をご紹介していく予定です。
なお、デシベル値については下記の資料もご参照ください。

小野測器技術レポート「デシベルとは」

(2014年4月17日発行メールマガジンより抜粋)