これまで過去6回を通じて、残響時間についてその理論と計測について解説してきました。残響時間は、すでに述べてきたように室内の音場の特徴を表す最も基本的な量で、直接的に室の響きを示す場合に限らず、材料の吸音率(残響室法吸音率)や、音響透過損失(残響室 - 残響室法)などの材料の音響性能を算出する場合にも計測される重要な物理量です。室内の使用目的に合わせて適正な響きと静けさを実現するには、残響時間の設計と外部からの騒音の遮断が重要です。騒音の遮断には、遮音と吸音の技術が使われます。
そこで、今回から、残響時間をベースに計測される音の透過と吸音を扱っていきます。まず、残響室を用いて計測する音響透過損失の計算式の意味を理論的に押さえておきたいと思います。理論的に理解することで、室内の音へ影響する要素が何であるか、また影響の仕方がどの程度かが、現場で経験するときに感覚的に掴み易いということもあります。数式が少し出てきますが、大まかな流れだけでもご理解いただければ幸いです。理論の説明は次回以降です。
試験室での音響透過損失の計測は二つの方法があり、一つは[残響室-残響室]を組み合わせた試験施設、もう一つは[残響室-無響室]を組み合わせた試験施設で行います。前者の場合(図1)、音源室側から出力した音(ランダムノイズ)が、室内で拡散し、両者の隔壁に設置した試料にあらゆる方向から音が入射して、さらに試料から受音室側に透過し、透過した音が受音室側で拡散します。このときに、音源室、受音室の平均音圧レベルと、受音室の残響時間から音響透過損失を求めます。
[残響室-残響室]の測定方法は、“JIS A 1416 : 2000 「実験室における建築部材の空気音遮断性能の測定方法」(ISO 140-1:1997)”で規定されています。測定条件などの詳細は規格を参照してください。音響透過損失は、以下の式1で求めます。測定値は、先に説明したように以下に記述するL1、L2、Tです。
(dB)
ここで;
L1 :音源室における室内平均音圧レベル(dB)
L2 :受音室における室内平均音圧レベル(dB)
S :開放した試料面積に等しい広さの試料の面積(m2)
A :受音室の等価吸音面積(m2)
また、等価吸音面積Aは以下の式によって求めます。
(m2)
ここで;
V :受音室の容積(m3)
T :受音室の残響時間(s)
この式1の導出について、そのプロセスを次回説明していきます。
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図1 [残響室-残響室]における音響透過損失の測定
もう一方の[残響室-無響室]の組合せでの計測(図2)についても触れておきます。受音室側に音が透過するところまでは、2つの残響室での測定と同じです。受音側への透過音に対して、音響インテンシティ測定を行い、試料表面からの放射パワーを測定します。試料面積での音響パワーレベルを算出して、音源側の平均音圧レベルとから音響透過損失を求めます。また、[残響室-無響室]の測定方法は、“JIS A 1441-1:2007 「音響インテンシティ法による建築物及び建築部材の空気音遮断性能の測定方法 - 第1部:実験室における測定」で規定されています。
音響透過損失Rは以下の式で求めます。
R=Lp-Lw+10 logS - 6 (dB)
ここで;
Lp :音源側室内の空間平均音圧レベル(dB)
Lw :試料開口部から透過する音響パワーレベル(dB)
S :試料面積(m2)
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図2 [残響室-無響室]における音響透過損失の測定
日本工業標準調査会(JISC)ホームページではJIS規格番号に対応した詳細情報のPDFファイル閲覧が可能です。次のリンクのジャンプ先ページから「データベース検索」-「JIS検索」をクリックしてください(検索欄入力時年号は省略します)。
JIS A1416:2000「実験室における建築部材の空気音遮断性能の測定方法」(ISO 140-1:1997)
JIS A1441-1:2007「音響インテンシティ法による建築物及び建築部材の空気音遮断性能の測定方法 - 第1部:実験室における測定」
(2011年1月27日発行メールマガジンより抜粋)