前回、Emission、Transmission、Immissionをetiプロセスと称し、音の問題は、そのほとんどが発生、伝搬、曝露(受聴)というプロセスの中で捉えられることをお話しました。今回から、このプロセスにそって、音の発生から説明をしていくことにします。
音の問題は、屋内、屋外、移動空間に関わらず、人が音を受聴する場において、その場に期待される音環境を阻害する騒音がある場合や、その場に相応しくない音環境となっている場合が考えられます。その対策に当たって、最初のプロセスは、その場にある音の素性を把握することです。それは、問題と考えられる音の出所を見極めるとともに、その場の音の背景となっている暗騒音を把握することも大事な作業です。音の出所、即ち音源を特定する作業は、暗騒音との関係など状況によっては大変困難なケースもあります。音源の位置を特定する技術については、またの機会で触れたいと思います。
今回は、音の発生のプロセスにおいて、音源から放射される音の基本的な表示量として、音響パワーについて説明します。
空気中を伝搬する音は、エネルギーの流れと考えることができ、このエネルギーを音響エネルギーといいます。この音響エネルギーを表す量として、ある面を単位時間に通過する音響エネルギーを考え、これを“音響パワー”P(W)と呼びます。音の強さを表す“音響インテンシティ”I(W/m2)は、いわば、単位断面積あたりのパワーといえます。
したがって、音響パワーは通過するエネルギーの面積(S)と音響インテンシティ(I)の積ですから下式で表せます。
................................................................(1)
ここで、音響インテンシティと、音圧、粒子速度の関係をみておきましょう。
(音圧)→(電圧)、(粒子速度)→(電流)の電気回路のアナロジーで対応させると、(電力)=(電圧)*(電流)ですから、音響インテンシティ(I)は;
.................................................................(2)
また、音波が平面波であれば、媒質の密度をρ(kg/m3)、媒質中の音速c(m/s)として;
.................................................................(3)
;となります。この(3)式は、以下のように考えると合点がいきます。
媒質中に単位面積の 1 本の管を想定し、その長さが1 秒間に音波が進行する距離
に等しいとすると、媒質の密度がρであれば管中の媒質の質量はρ•c となります。
その管の一端に圧力p が1 秒間作用して速度v を生じたとすると、運動量の変化
は力積に等しいからp=ρ•c •v となって(3)式が得られます。
さて、音響パワーにもどります。
本シリーズ第 3 回の「音の『波』としての性質」(2)音の大きさ、レベルで、音圧を
音圧レベルとしたときに、基準値で除して対数をとって10 倍するプロセスを『dB単位を用
いるレベル化』と説明しました。音響パワーレベルも同様に、基準値P0 に対するレベルと
して下式で表します。
音の測定の基礎 - 第3回「音の『波』としての性質」(その2)
................................................................(4)
基準値 P0 は、10-12 W ですが、これは、次の音圧レベルの基準値(5)と式(2)(3)から導いた下記(6)式から以下のように算出される値です。
.......................................................(5)
.................................................................(6)
ここで、空気(1 気圧、20℃)の音速c=343(m/s)、密度ρ=1.205(kg/m3)ですので;
これに単位面積をかけた値 P0 = 10-12(W)が、音響パワーレベルの基準値となります。
さて,音響パワーレベルは、音響パワーP と基準値P0 で定義できましたが、これを求める
ためには、どのような測定をすればいいでしょうか。また,冒頭に述べたような問題にお
いて、音響パワーレベルと室内の音圧レベルにどういう関係をおけばいいでしょうか。
これについは、次回説明いたします。
(2010年2月25日発行メールマガジンより抜粋)