前回は、自動車電装部品のモータ音について良否判定を行った事例を紹介しました。回転系の機構をもつ機械から発生する音の特徴の一つとして「粗さ」や「濁り」の評価や良否判定に音評価指標のラフネスが有用であることがわかりました。
今回は、同じサンプルを用い、対策に向けたプロセスにおいて有用な指標として、変動音解析を適用した例を説明したいと思います。
前回示しました1/3オクターブバンド分析とラフネスのOK/NG品の比較を以下に再掲します。また、OK品とNG品の音も、前回と同じものが以下のボタンで再生できます。
-
図1 1/3オクターブ分析(青:NG、赤:OK) -
図2 ラフネススペクトル(青:NG、赤:OK)
この図に示すように、音圧レベルや音の大きさ(ラウドネス)では、差を明確に抽出できない場合でも、質的な評価量の1つであるラフネスを評価指標として用いることで、NG品のモータ音の音色の特徴である「粗さ感」を抽出できることがわかります。このようなケースでは、基準値を設けることでOK、NG判定を自動化することも可能と考えられます。また、ラフネスだけでなく音圧レベルなどの量的数値との組み合わせ指標で判別することも可能です。
前々回のコラムでは、ラフネスと変動強度について、下記のようにごく簡単に説明しました。
| ラフネス: | 聴感的に「粗い」と感じる人間の感覚を指標化(1秒間に70回程度の速さで変動する音に対して、「粗さ感」は最大になる) |
| 変動強度: | 聴感的に「変動している」と感じる人間の感覚を指標化(1秒間に4回程度変動する音に対して、「変動感」は最大になる) |
実際に聴感的に体感していただくために、以下のようなサンプルを作成しましたので、「変動感」と「粗さ感」を確かめてみてください。
-
図3 ラフネスと変動強度
(図中の各スピーカアイコンをクリックすると上部記載の周波数音が再生されます。)
先に示したラフネスは変動周波数70Hzを中心に、それより早く変動する音や遅く変動する音については、ラフネスの値は小さくなりますが、「粗さ感」は、かなり広い変動周波数の範囲で知覚されることが、図3の例で聴感的に確認できます。
以下に示す変動音解析のカラーマップは、横軸周波数、縦軸変動周波数で、音の変動の大きさを色で示したものです。周波数軸だけでなく変動周波数の軸で、変動の大きさが把握できるので、ラフネスより多くの情報を含み、より詳細な音の評価や、対策に繋がる情報の抽出に利用できます。
-
図4 変動音解析結果(左図:NG品、右図:OK品)
図4の例では、NG品において、縦軸に青色で広がって示された周波数帯域は、図2のラフネスの棒グラフで高く表示された帯域です。ラフネスでは4kHzの値が最も大きくなっていますが、変動音解析において最も変動が大きいのは1.6kHzと変動周波数が30Hzの枡(橙色)です。4kHzでは広い変動周波数範囲に渡り変動音が強いのに対し、1.6kHzは、変動周波数30Hzを中心によりせまい変動周波数範囲において変動が大きくなっています。
回転機械が発生する騒音は、一般に回転速度に依存する変動音が含まれており、今回のような異音を対象とした解析には、図4のような変動音解析により対策に有効な情報を得られると考えます。
●本計測コラム内の各データは当社OS-2740音質評価パック並びにOS-2750変動音解析パックを使用して取得したものです。
小野測器 - OS-2740 音質評価パック(販売終了)
小野測器 - OS-2750 変動音解析パック (販売終了)
(2009年12月17日発行メールマガジンより抜粋)