前回は、時間の変動成分から抽出する指標であるラフネスと変動強度を利用することで音色の差異を評価できる可能性を示しました。これら時間特性を考慮した指標は、音色のすべてを特定するものではありませんが、音色の一部を説明し得るものとして、音の大きさ(ラウドネス)や高さ(周波数特性)での差が小さい比較対象の聴感的な違いを示すことが可能です。
今回は、「粗さ」や「濁り感」といった聴感的な印象に対して、ラフネスを評価指標として用い、開発品における良否判定を行った事例を紹介します。
まず、自動車電装品のモータ音のNG品とOK品の音を確認してみましょう。
自動車電装品モータ音
聴感的な差は、量的な音の「大きさ」よりも、音の「粗さ」という質的な違いが大きいという印象を持たれたと思います。では、この2つの音の1/3オクターブ分析の結果を見てみましょう。
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図1 1/3オクターブ分析(青:NG、赤:OK)
図1にその比較を示します。高音域、特に10 kHz、12.5 kHzの帯域でNG品が10 dB弱高く、両者に差が生じています。図2に示すラウドネススペクトルの比較においても、高音域における差は顕著です。
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図2 ラウドネススペクトル(青:NG、赤:OK)
この高音域の成分が、音の全体印象に及ぼす影響を確認するため、グラフィックイコライザを用いて、8 kHz以上の音をカットした音と対比してみます。
自動車電装品モータ音
若干音質に違いが出ますが、独特な「粗さ」は残っており、この高音域の成分は「粗さ」
に寄与していないと考えられます。
次に、「粗さ」感の抽出のためにラフネスの解析を行った結果を図3 に示します。ラウドネ
ス、ラフネスなどの計算プロセスの詳細内容は、当社ホームページの技術レポート「音質
評価とは」9項“変動感とざらざら感”を参照していただくようお願い致します。
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図3 ラフネススペクトル(青:NG、赤:OK)
この結果から1 kHz ~ 4 kHzまでの各臨界帯域において(2 kHz、3.15 kHz帯域を除いて)NG品とOK品のラフネスの差が顕著であり、各臨界帯域における音の大きさを示すラウドネススペクトルでは差異化が困難であった聴感上の差を、ラフネスを算出することで可能になることが示されました。8 kHz以上の音は、「音の大きさ」としては差が明確でしたが、「音の粗さ」に寄与するものではなく、OK/ NG品の差もほとんどないことがわかります。
以上、回転系の機構をもつ機械から発生する音の特徴の一つとして「粗さ」や「濁り」の評価や良否判定にラフネスが有用であることを示しました。
次回は、今回の事例から、さらに対策に向けたプロセスにおいて有用な指標に関して説明したいと思います。
・本計測コラム内の各データは当社OS-2740音質評価パックを使用して取得したものです。
(2009年11月19日発行メールマガジンより抜粋)