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音の測定の基礎 - 第3回「音の『波』としての性質」(その2)

音の大きさ、レベル

前回から、音の『波』としての性質について解説をはじめました。音が縦波であること、また、空気中を音の伝搬のしかた、さらに、もっとも基本的な関係として、波長と音速、周波数の式を示しました。さて、今回は、物理的にも感覚的にも、音の扱いで一番身近にある音の大きさについて、説明します。

「音の大きさ」は、音の諸特性の中でも、もっともわかりやすい量であり感覚です。
また、音の三要素のひとつでもあります。その三要素は、「音の大きさ」、「音の高さ」、「音の音色」です。この中で、「音の高低」の物理的な尺度である周波数は、音を伝える空気の振動(音波の音圧変動)が 1 秒間に繰り返す回数です。これは前回も説明しました。

「音の音色」の定義は、多くの研究者が様々な意見を提案しています。以下は、音色は、音の識別と印象をもたらすものとした 2 つの方向からの定義です。

  • 音源が何であるか認知(識別)するための手掛かりとなる特性
  • 音を聞いた主体が音から受ける印象の諸側面(多次元的属性)の総称で感情的色
    彩をおびる。この音色的印象は種々の音色表現語で記述しうる。

出典:難波精一郎、音色の測定・評価法とその適用例(応用技術出版、1992)

「音の音色」は、定義からもやや難しい印象を受けます。音色については、複雑な感覚を扱うことになり、今後計測の分野においても進展の余地を残しています。またこの話題をまとめて扱うことにしたいと思います。さて、一番単純な「音の大きさ」にもどりましょう。

音は、静圧といわれる大気圧を中心にした空気の振動です。その大気圧は、標準状態で1013 hPa(ヘクトパスカル)、すなわち約 10 万パスカルという大きな数字です。音圧も同じく圧力の単位 [Pa ]パスカルを用います。平均的な人が聴こえる音の最も小さな音と、われわれの周囲で最大と思われる大きな音の音圧はそれぞれ、20μPa(マイクロパスカル)から 20 Pa と最小と最大の比は 106もあります。その大きさが、大気圧と比べて相当小さいことがわかります。また、最小・最大の幅がこれだけありますから、人が音の大きさの大小の感覚を音圧のまま取り扱うには大変不便です。

さらに、「感覚の大小は刺激の強さの対数に比例する」という Weber-Fechner という法則があることから、工学分野において、音圧は、対数尺度を用いて表すのが普通です。分母には、基準となる 20μ[Pa] を用い、測定された音圧を分子にし、それぞれ 2 乗した比の常用対数の 10 倍が音圧レベルで、単位は [dB] デシベルとなります。このようにある基準値に対する対数尺度を一般に“レベル”とよんでいます。

  • 音の測定の基礎 - 第3回「音の『波』としての性質」(その2)

(dB)

p0:基準となる音圧の実効値 20μ[Pa]=2×10-5(N/m2)
p :測定された音圧の実効値 [Pa]

このパスカルとデシベル、レベルのことは、弊社ホームページの「騒音計とは」の[2. 騒音とは]・[4. 騒音の計測単位]に詳しく記載があります。また、このページは、騒音計の説明だけでなく、音の基礎的なことから、騒音の法規に関する説明まで網羅的に記載されていますのでぜひご参照ください。

技術レポート 騒音計(サウンドレベルメータ)とは
[2. 騒音とは]
[4. 騒音の計測単位]

さて、ホームページの情報と重複してもあまり意味がありませんし、この記事は、技術資料ではなくコラムですから少し趣を変えて話を進めていきたいとと思います。

音の専門家は、いつも扱っているデシベルですが、これまで音への関わりが薄かった方や、これから音の問題に取り組もうとする方には、この対数尺度というものに慣れることが必要です。まず、相対的な音を、3dB ステップで小さくした音と 6dB ステップにした場合の音のサンプル(wave ファイル)をつけましたので、確認してみてください。

(上の各ボタンをクリックするとそれぞれのサンプル音を再生します)

聞いていただいた音は、ホワイトノイズといって、周波数により音の大きさに変化のない音です。音の種類によっても感覚は変わってきますが、基本的な信号であるホワイトノイズでは、3dBの差とはこんなものなのかという感覚がわかっていただければそれで結構です。3dBという数字は実は音のエンジニアには馴染みのある数字です。2つの同じ大きさの音源があるとき、トータルの音圧は 3dB増えます。この式についても、ここでは触れませんので、興味のあるかたは、再び「騒音計とは」の[12. デシベル(dB)についての計算]をご参照ください。

[12. デシベル(dB)についての計算]

2つ同じ音があると 3dB 増えるとすれば、4 つあれば 6dB、8 つあれば 9dB です。10 個同じ大きさの音源があれば、1つの音源のときより 10dB 増加することになります。逆に、10dB 騒音を減衰させるというのは、大変なことがわかります。

自動車騒音の加速騒音規制は、この 30 年間で大型トラックが 11dB、乗用車が 8dB、二輪車は 13dB、それぞれ段階的に強化されてきました。規制が強化され、自動車メーカ各社は、騒音対策に努めて規制をクリアしてきましたが、この推移は、10 台を1台にするほどの劇的な騒音低減が為されたということになります。第 1 回目のコラムにも、個別の騒音対策からバランストアプローチへという話を書きましたが、各部位の騒音がみな同じ程度になると、対策をしても効果が小さいということも上の例の逆を考えればわかります。即ち、10 個ほぼ同じレベル音源があって、そのうちの1つ2つ対策してもほとんど全体の騒音には影響しないということです。

(2009年6月18日発行メールマガジンより抜粋)