本文にスキップする

Select your region & language

Global

Region

音の測定の基礎 - 第2回「音の『波』としての性質」

(1)縦波、波長、周波数

前回は新しいシリーズの1回目として、音の定義から話を始めました。
繰り返しになりますが、音は、『音波またはそれによって引き起こされる聴覚的感覚』と定義され、属性として社会性、文化性、情報性の3つのカテゴリに分類されることを示しました。今回から、主に物理的な音を解説していきますが、まずは、波としての基本的な性質からはじめたいと思います。

音は、音波というように、波であることを、私たちは知っています。しかし、音の波は、水面の波のように目で見ることが出来ませんから、実感として掴みづらいものです。「音は、空気の振動による疎密波で縦波である。」といわれても、専門家でない人にとっては、すんなり理解しがたいものです。

少し横道に逸れますが、波としての音を説明する前に、身近にある波として「地震波」のことを簡単に触れておきたいと思います。
ご存知の方も多いと思いますが、地震波には、P波とS波があります。Pは、Primary wave(最初の波)のPで、Sは、Secondary wave(2 番目の波)のSの意味です。最近は、震源地近くの揺れの小さなP波の情報で、揺れの大きいS波の各地の到来時間を告げる緊急地震情報の提供がはじまっています。図1をご覧ください。

  • 図1 地震波 P 波と S 波
    図1 地震波 P 波と S 波

この図は、P波とS波の揺れの方向が違うことを示しています。P波は、地盤が波の進行方向と同じ方向に振動する縦波(疎密波)であり、S波は、垂直に振動する横波です。
P波は、地殻では約 6.5 km/s の速度で進み、地上で初期微動を起こします。真下から伝搬する場合は、縦揺れとして感じられます。一方のS波は、地殻では約 3.5 km/s の速度で進み、地上では大きな横揺れとして感じられます。その他に表面波とよばれるS波よりさらに遅れて到来する波もありますが、ここでは割愛します。

地震波のP波は、媒質(地盤)が波の進行方向と同じ方向に振動する縦波であり、音と同じ伝搬の仕方をする波といえます。音は、空気以外にも、固体や液体の中を伝わります。
骨伝導音は、固体を伝搬する音ですし、水の中でも音が聴こえることは、皆さんも経験が
あると思います。

図2は、音が音波として空気中を伝搬する様子を、模式的に示したものです。この図は、スピ
ーカから発生する音を例にして、空気の密度の疎密を表すために、極端な描き方をしています。

  • 図 2 スピーカから発せられる音波
    図 2 スピーカから発せられる音波

スピーカの振動板が前に出たときは、振動板に近接した空気の密度は高くなり、逆に振動
板が元の位置から後方に向かって動くときは、密度が薄くなります。この繰り返しで空気
の密度に疎密ができ、音が伝搬します。スピーカの振動板の動きがゆっくりになると、空
気の密度の疎密の間隔が広がり、逆に動きが早くなれば疎密の間隔は狭まります。

音波の発生には、スピーカの振動板の例のように「振動する物体に接した空気が振動し音波が発生する」場合と、「静止空気中に気流が噴出し、直接空気中に渦や乱れを起こして音波を発生する」場合があります。我々の周囲にある機械から発生する音は、前者の理由によるものがほとんどです。打撃、衝突、回転、摩擦、電磁力など、様々な駆動要因によって生じた振動が、空気に伝わって音を発生しているのです。また、後者の例は、爆発、音声、エンジン排気音などがあります。

音による空気の振動は、大気圧を中心に圧力変化を起こします。この微小な圧力変動分を音圧と呼びます。音圧の時間的、位置の変化を表した波形を図3に示します。大気圧を中心に、密度が高くなる部分は、波の山となり、密度が低くなる部分は谷になります。

  • 図 3 音圧の時間および位置の変化を表した波形
    図 3 音圧の時間および位置の変化を表した波形

軸を距離で表せば、この山と山の間隔が波長であり、また下の図のように時間軸で表せば、周期になります。即ち上図は、ある時間において空間的に音が伝搬している様子を表した波形であり、下図は、ある場所において、音が時間的に変化している様子を表した波形を示しています。

1 秒間の往復運動の数を周波数 f(Hz)とし、音の波長をλ(m)とすると、音速(音が 1 秒間に進む距離)c(m/s)との関係は、

  • (1)縦波、波長、周波数
    c:約340 m / s(温度20°C)

となります。この波長と周波数の関係は、騒音対策の現場や、設計のプロセスにおいて、音を扱う場合の基本中の基本です。この関係から、例えば吸音材料の位置や寸法、室の形状などを決定していくことになります。その具体例は、また、その内容を扱う機会に、説明させていただきます。

○ 参考文献

  • 「波動」Newton 2009 年 1 月

(2009年5月28日発行メールマガジンより抜粋)