2.時間差と位相
前回でトリガとsin波の話がありましたので、これに関連する【位相】について取り上げます。
2つの信号があるとこの信号間の【時間遅れ】が注目されます。
この例としてロータリーエンコーダの波形を取り上げます。
ロータリーエンコーダは信号1と信号2は【位相差90度】の信号といわれる2つの【パルス信号】のほかに、信号Zまたは【Z信号】といわれる1回転1パルスの信号も出力されます。信号1は【A相】、信号2は【B相】とも言われています。
簡単な実験として電ドルにRP-405ZA-500P/R型ロータリーエンコーダを取り付け、一定回転させた状態からモーターの電源を切って減速していくときの信号の様子を次に示します。これは、前半はZ信号でトリガをかけトリガポジションを-512にして測定した波形ですが、最後は1回転しないで停止しますので信号1にトリガを変えて測定した波形をつないで表示しています。
RP-405ZA-500P/Rの信号1、2は1回転500パルスの信号と信号Zを出力します。
時計回り【CW:clockwise】のときのときの波形例を図1に示します。
信号1が立ち上がった後、少し時間が遅れて信号2が立ち上がっています。この時間遅れを信号1(または信号2)の1周期で考えると、およそ1/4周期の遅れがあります。回転体の軸の1回転を360度というように、電気信号でも1周期を360度と規定し、1周期のどの位置かを【電気角】で表します。よって1/4周期は90度となり、ロータリーエンコーダの信号1、2は「90度位相差の信号」と言われます。
位相は【タイミング】に注目した用語です。
図1
-
ロータリエンコーダーがCW方向に回転したときの波形
ロータリーエンコーダが反時計回り【CCW:counterclockwise】の時は、構造図のスリット円盤が逆回転になるので、図1の波形で考えると経過時間が右端から始まり左端が20msとなる波形になります。図2はCCWのときの波形です。
図2
-
ロータリエンコーダーがCCW方向に回転したときの波形
信号2に比べ信号1が先行する(信号1がハイレベルの状態で信号2が立ち上がる)とCWに回転していることがわかり、信号1に比べ信号2が先行するとCCWに回転していることがわかり、信号1、2の位相関係から回転方向が判別できます。
ロータリーエンコーダのパルス数を360P/R(Pulse/Revolution)のものを使用すると、軸が1度回ると1パルスが出力されますから、ある時点からのパルス数を数えると何度回転したかわかります。製造ラインのローラーにロータリーエンコーダをつけるとローラーの周長より1パルスは何mmに当たるかわかり、長さの測定ができます。そしてCWの時を+にカウントし、CCWの時を−にカウントすることで、正転逆転しても現在位置を知ることができます。これを応用したものとしてリニアゲージがあります。
ロータリーエンコーダの信号1(または信号2)は連続したパルス波形でこのような波形を【方形波】といいます。方形波は1周期に対するパルス幅の占有率を【デューティ比】として表わします。
デューティ比は占有率の代わりに、ハイレベルとローレベルの比をとり「デューティ比は1:1」のようによくいわれます。
軸の回転速度により1周期の時間は変わりますが、このデューティ比は変わりませんので方形波の性質を表す用語として使われます。
図3:デューティ比
横道にそれてしまいましたが、ではFFTアナライザーでこの位相差はどのように表示されるでしょうか。信号1と信号2の位相差を測定するには、周波数応答関数の位相表示を行います。そして【基本周波数】の位相差を読み取ります。図4はCWのときの信号1を基準にした信号2の位相差を表示しています。
図4:パワースペクトルと周波数応答関数(位相)
図4のパワースペクトルを見ると基本周波数600Hzとその整数倍の【高調波】(2倍、3倍、・・の周波数の成分)があります。
基本周波数は注目波形の1周期の時間Tの逆数です。第2高調波は基本周波数の2倍の周波数をいいます。sin波では基本周波数しかありませんが、方形波や、デューティ比が1:1でない方形波、【三角波】など波形によって高調波の振幅が変わります。
周波数応答関数の位相表示は「信号1の基本周波数600Hzのsin波に比べ、信号2の基本周波数600Hzのsin波は94度遅れている」と読み取ることができます。位相(Phase)データの全体を見ると複雑なデータになっています。パワースペクトルのピークでない部分は本来信号成分が無いということになります。その部分は機器の持つ微小ノイズなどで求められた位相差を表示していますので、無意味なデータのため無視するなど読み取りに注意が必要です。
位相表示の場合、周波数によって1周期の時間が違います。600Hzの位相差-90度と1200Hzの位相差-90度は同じ-90度でも600Hzでは時間差に直すと0.4ms(=1÷600×90÷360)、1200Hzでは0.2msと時間差でいうと違う値になることに注意しましょう。
(2007年1月26日発行メールマガジンより抜粋)