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「波形とFFT-3」3. 時間差と位相(続き)

3.時間差と位相(続き)

位相差を応用した商品でトルク計があります。
この波形を見てみましょう。原理は次のところを参照ください

 

トルク検出器にはスイッチが付いていて、軸(トーションバー)の回転方向にあわせて付属モーターの回転方向を切り替えています。
付属モーターは内歯歯車(内径側に歯車がある)を回していますが、これは軸(トーションバー)が停止していても測定できるように工夫したものです。

図1 初期位相(ネジレが無い場合)

  • 図1 初期位相(ネジレが無い場合)

トルク検出器のスイッチをCWに設定し、負荷側の軸をロック(固定)したとします。この状態で駆動側の軸を右左に少しねじった時の信号出力EとFの波形を次に示します。波形の赤色が信号E(基準)、青色が信号Fです。
ねじる前(無負荷)の波形を見ると、初期位相差は約180度に調整されていることがわかります。

図2 CWにネジレた場合

  • 図2 CWにネジレた場合

トルクの大きさに比例してトーションバーが微小にねじられ、これが信号出力のEとFの位相差となって検出されます。初期位相差ではトルクの値を0にするため、その設定をゼロ調整といっています。
さて、トーションバーにかかったトルクの大きさは位相差の大きさとして検出されますが、右(CW)にねじられたときは位相差が大きくなりトルク計は極性+で表示します。左(CCW)にねじられた場合は位相差が小さくなりトルク計は極性−で表示します。トーションバーがねじられた方向を極性は表示しています。

信号E、Fは発電式で、内歯歯車と歯車A、Bの回転による磁束の変化により近似正弦波として出力されます。 内歯歯車と歯車A、B(トーションバー)が同じ方向で同じ回転をしていると、内歯歯車と歯車A、Bとの相対速度差がなくなります。それに伴い磁束の変化もなくなり、信号の大きさが微小、または発生できなく、【不感帯】(動作できない範囲)が生じます。よって内歯歯車は軸と逆の方向に回す必要があります。なお、スイッチをCWにすると軸と逆に回るようになっています。

検出器のスイッチをCCWにした場合、内歯歯車の回転方向が逆になります。
ロータリーエンコーダの時に説明しましたように、E、Fの波形はCWの波形の時は左から右に時間経過する波形ですが、CCWでは逆に右から左方向に時間経過する波形となり、初期位相差が変わります。よってトルク計ではCWの時のゼロ調整とCCWの時のゼロ調整をそれぞれ行うように説明しています。

図3 CCWにネジレた場合

  • 図3 CCWにネジレた場合

CCWの場合の極性は、負荷側の軸をロックして駆動側の軸をCCWにねじったときが+(位相差が大きくなる)、CWにねじったときが−の極性(位相差が小さくなる)として表示され、CWの時のトーションバーのねじれ方向と極性表示が変わりますので注意ください。
極性表示がわかりにくいですが、スイッチがCW、CCWいずれも

  • 負荷側がブレーキになる場合は極性は+
  • エンジンブレーキのように負荷側が駆動になる状態では極性は−

 (トーションバーの回転方向は同じでもねじられる方向が逆になる)
になります。トーションバーのねじれ方向をイメージして理解ください。
このようにトルク計の原理は位相差ですが実際の信号処理はもっと工夫し精度向上を図っています。

今までの位相差は基準とする信号がありましたが、sin波が1つの場合の位相差を考えてみましょう。
位相差はある【時点】を【基準】にとり、それを時間ゼロとし、そこからの差を位相差とします。基準とする時点とは、回転体では反射マークを貼り、それを検出した信号でトリガーをかけると反射マークの位置が基準点になります。基準となる信号が無い場合は、FFTアナライザーでは同じ周波数のcos波を仮想し、これを基準にとり位相差を表示します。
次は0Vでトリガをかけたsin波の位相差を示したものです。波形を細かく見る(【時間分解能】を高くとる)にはサンプリングを細かくとるほうがよいので、sin波は100Hzとし、周波数レンジは40kHz、サンプル長は8192に設定し、また見やすくするためにX軸を拡大しています。前半はsin波、後半はcos波を表示しています。測定では位相差はそれぞれ約-90度、約0度になっていることがわかります。100Hz以外の周波数はノイズ波形の分析になりますので100Hzの位相差に注目してください。

図4-1 Sin(Cos)波が1つの場合の位相差

  • 上:100Hzのsin波形 中:パワースペクトル 下:位相表示
    上:100Hzのsin波形
    中:パワースペクトル
    下:位相表示

図4-2 sin波形(X軸の拡大表示)

  • 100Hzの位相に注目 上:100Hzのsin波形 中:パワースペクトル 下:位相表示
    100Hzの位相に注目
    上:100Hzのsin波形
    中:パワースペクトル
    下:位相表示

図4-3 cos波形100Hzの位相に注目(X軸の拡大表示) 

  • 100Hzの位相に注目 上:100Hzのcos波形 中:パワースペクトル 下:位相表示
    100Hzの位相に注目
    上:100Hzのcos波形
    中:パワースペクトル
    下:位相表示

sin波を式で表わすと

  sin(2πft−Φ)  Φ:±位相差
     f=1/T   T:1周期の時間(s) f:周波数
    2πf=360/T

はもうご存知のとおりですね。
電気角は【ラディアン】単位と度(deg)単位があり、Φはラディアンと度(deg)が場合により使い分けされています。

位相が90度遅れている場合、
 sin(2πft−Φ) Φ=90度、2π/4ラディアン 

位相が90度進んでいる場合、
 sin(2πft+Φ) Φ=90度、2π/4ラディアン

位相の遅れは−、位相の進みは+で表わされます。
sin波が90度進むとcos波になり、逆にcos波が90度遅れればsin波になることはご存知の通りです。sin波もcos波も位相が90度ずれた関係と考えれば、どちらで考えてもよさそうですね。最初にFFTアナライザーのパワースペクトルはsin波の振幅と考えて・・といいましたが、ほんとはcos波と考える方が都合がよいのです。その理由は次回

 ポイント

  sin波は振幅A、周波数f、位相φであらわされる。
    Asin(2πft+φ)  φ=0  :遅れなし
              φ=+の値:進み 
              φ=−の値 :遅れ

(2007年2月22日発行メールマガジンより抜粋)