前回の手順に従い、フィールドバランシングキットを使ったバランシング測定とその修正を、FFT アナライザーを使って実験してみました。今回はこのデータを使いフィールドバランスのベクトルの作図からバランス修正の手順について話しをすすめます。三角関数を使った計算方法も参考ください。
(1)実験システムの構成
実験の構成は図1のようになります。
図1
(2)運転条件
ロータの回転数は2480r/min、この時のアンバランスを修正することとします。ロータには、修正重りが取りつけられるように22.5度毎にねじが切ってあります。
実験のため、アンバランス用にロータの位置0度にねじを取りつけました。この様子を図2に示します。
図2
(3)測定条件
ロータの回転数2480r/minより、アンバランスの周波数f(回転1次の周波数)はf=2480÷60=41.3 (Hz)
FFTアナライザーの設定で、仮に周波数レンジを1kHz、サンプル数を2048点にするとサンプル周波数sf、周波数分解能⊿fは
sf=1000×2.56 (Hz)
⊿f=1000÷800=1.25 (Hz)
位相分解能⊿θは
⊿θ=360(度)÷(1回転のサンプル数)=360÷(1000×2.56÷41.3)≒6 (度)
バランス修正の精度を上げるためには位相分解能は5度以内を目安にとります。この目安からすると周波数レンジは2kHzになりますが、修正重りの取りつけ角度が22.5度毎なので1kHzレンジとしました。
(4)トリガ
基準信号はHT-5200型回転計を利用し、反射マークを検出したパルス出力をCF-3600型FFTアナライザーのch1に入力しました。
Ch1の波形を見ながらトリガレベルを調整し、ポジションは0とします。トリガをかけて取りこまれた加速度ピックアップの波形は図3のようになります。見やすくするためX軸を拡大して表示しています。
図3
フィールドバランシングソフトを使う場合は、基準信号は外部サンプル端子へ入力し、次数分析を行い、その回転1次成分に注目しますが、この実験ではch1の基準信号でトリガをかけch2の加速度波形のフーリエスペククトルから振幅、位相を測定することとします。なお、トリガをかけることは基準位置を決めるために必要な操作です。
(5)データの平均
今回の実験では加速度の波形がきれいですので、平均化しなくてもアンバランス測定には問題はありませんが、いろいろな要素の振動波形が混在してノイズがのった波形では測定にばらつきが発生します。このようなノイズ除去のため時間軸平均をおこないます。時間軸平均は、波形を重ね書きし、その平均をするような処理になります。回転に同期したアンバランスの信号は、トリガ機能で測定ごとに波形が重なりあいますが、ノイズ成分は回転に非同期なため重なることが無く、そのため平均すると除去されます。
平均回数は波形が安定することを目安に決めます。今回は50回に取りました。
時間軸平均した波形を図4に示します。図3と同様X軸を拡大して表示しています。
図4 時間軸の平均
(6)イニシャル試験
現状のアンバランスを測定します。2480r/minで運転し、時間軸平均したパワースペクトルと位相スペクトルを図5に示します。
図5
この測定から回転1次の周波数41.25Hzの加速度電圧1.666mV、位相差−91度が読み取れます。位相差はcos(2π×41.25Hz)の基準波形より91度遅れた波形を表します。特に極性と回転方向の関係が重要で、位相差が−極性の場合は、回転方向とは逆の方向にずれていること(遅れ)を、+の極性の場合は回転方向と同じ方向にずれていること(進み)を意味します。また、振幅表示は一般的には変位としますが、加速度ピックアップの感度から電圧を加速度に変換し、さらに2πfの自乗で除算すれば変位に換算ができること、修正重りは比例計算でできることから、ここでは変位への換算表示は省略します。
(7)試し重り
試し重り2gを軸の基準位置から90度の位置に取りつけました。(6)と同じ運転条件で測定した結果を図6に示します。
図6
この測定から回転1次の周波数41.25Hzの加速度電圧1.388mV、位相差−70度が読み取れます。
(8)ベクトル作図
測定データをまとめると表1になります。
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イニシャル試験 |
試し重り試験 F ̅+T ̅ |
||
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アンバランス量 |
1.666 (mV) |
1.388 (mV) |
試し重り2gを、ロータの位置90度に取り付け |
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位相差 |
-91(度) |
-71 (度) |
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X座標 |
-0.0278 |
0.453 |
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Y座標 |
-1.670 |
-1.314 |
|
表より X、Y 座標におきかえると、
イニシャル試験(F ̅ )
X: 1.666cos(-91)=-0.0278
Y: 1.666sin(-91)=-1.670
試し重り試験(F ̅+T ̅ )
X: 1.338cos(-71)=0.453
Y: 1.338sin(-71)=-1.314
余談ですが、上記のX、Yの計算はフーリエスペクトルの実数、虚数と同じで、図7のように測定表示を実数、虚数にすると読み取ることができます。
図7
これよりベクトルとして作図をしたものを図8に示します。
図8
図8では位相差の極性そのままにして描きましたので、実際の回転方向と逆になっています。回転方向はロータの右側から見るか、左側から見るかで回転方向は逆になりますから、注意しましょう。
さて、図8のように作図をするとT、θはメジャーと分度器で測定できますが、次のように計算で求めることができます。
T ̅=(F ̅+T ̅ )-F ̅
より、それぞれX軸とY軸の成分に分けて計算するとは
X: 0.453−(-0.0278)=0.481
Y:(-1.314)−(-1.670)=0.356
試し重りと修正位置の角度θは、、、は平行四辺形なので、平行四辺形の内角の和は360度より
θ=(360−2β)÷2={360−2×(36.5+91)}÷2=52.5 (度)
修正重りの大きさWuは
Wu=(試し重りの重さ)×(の大きさ)÷(の大きさ)=2×1.670÷0.598=5.58 (g)
よって、試し重り2gを外し、修正重り5.58gを、修正重りをつけた位置から回転方向へ52度の位置、軸の角度位置では90+52=142度の位置へ取りつけることでアンバランスの修正を行うことができます。
ここで問題が発生しました。図2のように142度の位置には修正重りを取り付けることができません。取り付け位置は135度か157.5度になります。試しに135度の位置に5.58gをつけて測定しようとしたら、振動が大きくなり危険で運転できませんでした。アンバランス、試し重り、修正重りの位置関係を図9に示します。
図9 試し重りの位置と修正重りの位置(軸に記した角度)
(9)分力の計算
5.58g、142度を135度と157.5度に分力として計算してみましょう。
C ̅=A ̅+B ̅より
X: 5.58cos142=Bcos135+Ccos157.5
Y: 5.58sin142=Bcos135+Ccos157.5
この連立方程式を解いて
B=3.90 (g)
C=1.78 (g)
軸の位置で135度のところに3.9g、さらに157.5度のところに1.77gの修正重りをつけると、142度に5.58gをつけたことと同じになります。図9にこの重りの位置A、Bを書いていますので参照ください。
(10)確認試験
3.9gの重りがありませんでしたので代わりに3.5gの修正重りを135度の位置につけて、確認試験を行いました。そのデータを図10に示します。なお、回転数が2540で試験したので回転1次の周波数は42.5Hzになります。
図10
今回は手元に適切な重りが無く、修正重りを135度の1箇所にしかつけませんでしたが、振幅は0.571mV、位相差+149になり、振動の低減効果が確認できました。アンバランスの位置も移動しています。ファン等修正重りの取り付け位置が決まっている場合、このような方法で分力計算し、2個所に適切な修正重りをつけてバランス修正を行います。表2は以上の測定、計算した数値をまとめました。
表2
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イニシャル試験 |
試し重り試験 F ̅+T ̅ |
試し重り T ̅ |
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アンバランス量 |
1.666 (mV) |
1.388 (mV) |
0.598(mV) |
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位相差 |
−91度 |
−71 度 |
+36.5度 |
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X座標 |
−0.0278 |
+0.453 |
+0.481 |
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Y座標 |
−1.670 |
−1.314 |
+0.356 |
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重りの取り付け |
- |
試し重り2gを、ロータの90度位置に取り付ける。 |
修正重りを5.58gを142度に取り付けるか、代わりに3.9gを135度、1.77gを157.5度の2ヶ所に取り付ける。 |
DS-0227バランシングソフトでは図9のような図示を自動で行ってくれて便利になっています。
(2005年12月15日発行メールマガジンより抜粋)