先回までの話しを復習のつもりで整理してみました。長松昭男先生著の「モード解析入門」(コロナ社発行)から引用してまとめたものです。
自由振動と固有モード
物の自由振動は、外力がない状態での必然的な結果として発生し、あくまでも物理的かつ力学的な理由によるものである。
エネルギーの面で考えると自由振動は外部から遮断された系内部だけのエネルギーの動きであり運動エネルギーとポテンシャルエネルギーの形を交互にとり、固有振動数はエネルギー保存の法則を満たしながら自由振動できる周波数である。
多自由度系や連続体が自由振動するときには、必ず固有モードと呼ばれるその系固有の形でしか振動できなく、固有振動の数は系の自由度と同数だけ存在すること、それぞれの固有モードはそれぞれ固有の振動数を有し、それ以外の振動数では自由振動が生じないこと、および各固有モードによる自由振動はモード減衰比という固有の減衰しやすさを有する。
「固有モード・固有振動数・モード減衰比」は自由振動だけでなく、強制振動、過渡応答、自励振動、サーボ解析などの動的な特性や挙動全体の性質を支配する3つの基本的現象でありモード特性(modal parameter)と総称される。
一方物体に振動を発生させ、その性質を決定するのは「質量・剛性・減衰」という3種類の物理特性で、振動と言う現象を表すモード特性と振動を決定する物質の本性すなわち物理特性とは3対3で対応し、共に動特性の両側面として相互変換が可能である。
3個のモード特性のうちで固有振動数とモード減衰比は系全体で共通であり、加振点や応答点が変わっても変化しない全体項である。これに対して固有モードは系内部の応答の分布状態を示し、振動点や応答点が変わると変化する局所項である。
モード特性の同定においては、周波数応答関数を系の全固有モードではなく、対象周波数範囲内に含まれる固有モードだけの1次結合で近似的に表示し、その際に省略した対象周波数範囲外の固有モードが与える影響を表現するために設けたのが慣性拘束(低次側の固有モードを近似した係数で、この逆数を乗余質量といい質量の次元をもつ)と乗余コンプライアンス(高次側の固有モードを近似した係数で、この逆数を乗余剛性といい剛性の次元を持つ)であり、これらは固有モードから導くことができる近似量であり本質的なものではないので派生量である。
またモード質量、モード剛性、モード減衰係数をモード特性として加えることもあるが、これらも3個のモード特性から決まる派生量である。
質量・剛性・減衰という物理特性は物理モデルを構成するのに対して、固有モード・固有振動数・モード減衰比というモード特性はモードモデルを構成することになる。
モード解析
さて、打撃試験や振動試験などで測定した周波数応答関数を元に系の動特性を同定することを実験同定という。実験同定ではモード特性を同定する方法と物理特性を同定する方法に分けられ、一般的に行われているのはモード特性の同定で、この実験から同定までの一連の過程を実験モード解析という。また実験同定は周波数スペクトル曲線や時刻履歴応答曲線に適合するようにモード特性を決定するので曲線適合ともいう。
有限要素法のような理論解析で用いるモード解析すなわち理論モード解析では、運動方程式で代表される数式モデルから、固有値解析によって得たモード特性で構成されるモードモデルを導き、さらにモードモデルを用いて周波数応答関数や時刻暦応答を求める。これに対して実験モード解析では、振動試験で得た周波数応答関数や時刻履歴応答を元にしてモードモデルを決定する。理論モード解析と実験モード解析は、同じモード解析と呼ばれているが、まったく逆の道筋をたどっていることを認識しておく必要がある。
固有振動数と固有モードは力のつりあいで見た場合は外力がない自由な状態ですべての自由度において内力がつりあいながら振動できる速さと形を意味し、またエネルギー面で見た場合も外界と遮断された状態で、初期に流入したエネルギーが系全体として保存されながら振動できる速さと形を意味し、数学的には運動方程式の右辺を0とする有為な(運動するという)解の意味である。
多自由度不減衰運動方程式では
[M]{x“}+[k]{x}={0} ・・・(1)
この解を
xi=Φiexp(jΩt) ・・・ (2)
と置きこれをベクトル表記して
{x}={Φ}exp(jΩt)
さらに xi"=-Ω^2exp(jΩt) より、これを( 1)式に代入すると
{−Ω^2[M]+[k]}{Φ}={0} ・・・ (3 )
静止({x}=[0})以外に解を有する特別な条件は、1自由度では Ω=√k/mであるが、多自由度系では
{−Ω^2[M]+[k]}={0} ・・・ (4)
[M]、[k]は既知なので(4 )式よりΩを求が求ます。Ωは自由度の数だけ求まり、このΩを(3 )式に代入して{Φ}をΦiの比として求めることで解を得る。振幅{x}は絶対値として定まらなく、比として求まるが特定の振動の形(モード)をとり、しかもこの形はMとkで決まる固有の値であるから固有モードと呼ぶ。
N自由度系がN個の固有モードを有することを逆に見れば、N自由度系はこれらN個の固有モード以外では振動できないことになる。これは一見矛盾している。なぜなら実際の機械や構造物の振動は、自由振動も強制振動も千変万化であり、無限に変化できるからである。このことは次の3通りの理由によって説明ができる。第1に固有モードは振動の形を示しているだけであり、その大きさすなわち絶対量は、自由振動なら初期外乱の大きさ、強制振動なら加振力の大きさにしたがって無限に変わりうる。第2は、単一の固有モードで振動することはきわめてまれであり、ほとんどの振動では複数の固有モードが混ざり合って一つの現象を形成している。そしてその混ざり具合が、初期外乱や加振力にしたがって無限に変わりうる。第3に、実際の機械や構造物はすべて連続体であり、自由度が無限大である。このうち第2の事柄に注目しこれをモデル化によって対象物の自由度を決めて物理モデルを作成し、力のつりあいやエネルギー原理によって数学モデルに変換し得られた式を理論解析や数値計算によって解いて固有振動その固有モードを求め、加振力を与えて固有振動の混ざり具合を決め、それらを合成して応答を求める、というのが標準的なモード解析である。
実験モード解析にはいくつかの手法がある
多自由度系の応答関数は1自由度系の周波数応答関数の重ね合わせで表現できる。モード減衰比が小さい場合、その固有モードの周波数応答関数が卓越している。その共振近傍の周波数応答関数は1自由度系であるとみなして、その固有モードだけのモード特性を独立に決めることができる。このような方法を1自由度法 (single degree of freedom method)という。この方法の1つである周波数応答関数の大きさより求める場合は次の方法になる。
1自由度系の運動方程式は
mx"+cx'+kx=Fexp(jωt)
これより、コンプライアンスの周波数応答関数G(ω)は
G(ω)=X/F=1/k÷(1-β^2+2jζβ) ・・・ (6)
β=ω/Ω、Ω^2=k/m
これを参考にN自由度系の式にすると
G(ω)=Σ1/Kr÷(1-βr^2+2jζrβr) ・・・ (7)
Σはr=1~n の和を示す
(7)式に上述した慣性拘束C、乗余コンプライアンスDで補正すると次式になる。
G(ω)=Σ1/Kr÷(1-βr^2+2jζrβr)+C/ω^2+D
ここでは(7)式で考えを進める。
r次の固有モードのみ考えれば(6)式と同じなので、固有振動数Ωと固有減衰ζを求めれば(6)式を決定することができる。
(6)式の大きさは
|G|=1/k÷√{(1-β^2)^2+(2ζβ)^2} ・・・(8)
{ }は√の中を示す、
この(8)式が周波数応答関数のMAG(振幅比)になっているので共振周波数で最大|G|maxとなり、ζ≪1では
|G|max≒1/(2kζ) ・・・ (9)
また共振周波数ω0は ζ≪1では
ω0=Ω√(1-2ζ^2)≒Ω ・・・ (10) ()はルートの中を示す
よって自己コンプライアンス(加振点と応答点が同じ点)の周波数応答関数のMAGを測定し、r次の固有モードの共振峰の周波数ω0より
Ω≒ω0=2πf0 (f0=|G|maxの周波数) ・・・(11)
半値幅法により
ζ=⊿ω/2Ω ・・・(12)
⊿ωは|G|max/√2の周波数fbとfaとすると2πfbと2πfaの差
|G|maxは測定値から読み取ることができるので(9)式より
k=1/(2ζ|G|max) ・・・(13)
また Ω^2=k/m より
m=k/Ω^2 ・・・(14)
このように共振周波数ω0、モード質量m、モード剛性k、モード減衰比ζを決めることができる。同様にその他の次数の固有モードについても求め、それらの重ね合わせ(7)式より近似式が求まる。
(2005年1月20日発行メールマガジンより抜粋)